Instagram運用の勝ちパターンを探る!3つの分析視点と改善のコツ
Date : 2023/12/11
今や一般ユーザーだけでなく、ビジネスシーンにおけるマーケティングツールとして欠かせない存在となったInstagram。中には、売上の大半をInstagram経由が占めているという企業も。
そんなInstagramですが、企業は運用にあたり、コンテンツの良し悪しの判断のためフォロワー数やエンゲージメント数などのデータを記録していることが多いでしょう。ただ、せっかく蓄積したデータを上手く活用できず、結局フォロワー数の増減に一喜一憂してしまっているご担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、テテマーチのSNSディレクターが現場で培ったノウハウを基に、アカウントの現状把握や分析・考察、改善案の検討方法など、アカウント運用における“勝ちパターン”を導き出すためのコツをお伝えします。
この記事でわかること
- Instagram運用における3つの分析視点「分類」「捨象」「比較」とは
- Instagramアカウントの目的・現状把握の指標
- Instagram運用を改善する「ユーザー」「競合」「自社」の3つの視点
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Instagram運用の全体像・効果測定の重要性
Instagram運用について理解を深めるため、まずはInstagramのビジネス可能性について見ていきます。
Instagramはビジネス貢献への成果実感が非常に高い
Instagramと言えば、写真や動画などビジュアル表現によるコミュニケーションを目的とするSNS。Instagram上で商品名や価格を表示させた上で、直接購入ページへシームレスに誘導できる「ショッピング連携機能」も兼ね備えており、ECとの親和性が高いSNSでもあります。
そんなInstagramについて、過去に当社でおこなった調査によると「Instagramが自社のビジネスに貢献している実感があるか」(0〜10段階回答)の問いに対し、事業会社の約7割、支援会社の約8割が成果を実感をしているという結果に。
<調査概要>
- 調査対象:Instagram分析ツールの「SINIS for Instagram」(※)をご利用中のInstagram担当者・テテマーチの一部のお客様
- 調査期間:2021年12月21日〜2022年1月27日
- 有効回答数:274社(支援会社59社・事業会社215社)
※「SINIS for Instagram」はInstagramアカウントのフォロワー数や投稿への反応数などのデータを閲覧、分析できるSaaSツール
さらに自由記述にて具体的な成果実感を聞くと「月間2,000万円ほどの売上のほぼすべてがInstagramきっかけで生まれている」「Instagram経由で流入するユーザーはオーガニック検索経由よりもCVRが高いことが分かった」「フォロワーへアンケートを実施すると『Instagramを見て購入したことがある』が7〜8割だった」との声も挙がっていました。
個々のケースで見ても、Instagramのビジネス貢献度の高さがうかがえます。
Instagramは「いいね」や保存などの各エンゲージメント率やフォロワー増加率、ホーム流入率など、得られる細かなデータを分析していくことで、さらにビジネスに貢献することが可能です。
しかし、同調査ではInstagramの運用上の課題のTOP2として「ノウハウや知識が不足している」「データの分析や考察ができていない」が挙がっており、“データの蓄積はできている一方で、分析・考察はノウハウ不足でできていない”という実態もありました。
ノウハウが無くデータの分析・考察ができない、しかしデータの分析・考察をしないとノウハウも溜まらない…という、この悪循環を断ち切るため、まずは「(今ある)データを考察する視点」を学び、ノウハウを蓄積していくことを目指しましょう。
ノウハウを蓄積する運用フローは、役割の定義・実行・検証・改善
ノウハウを蓄積していくにあたって、まずは今おこなっている運用フローを整理しましょう。
Instagramのアカウント運用は、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:測定・評価、Action:対策・改善)の4つをぐるぐると回し、ノウハウを蓄積していくのが基本です。
初めの計画(P)でしっかりとInstagramの役割定義をしておくこと、狙うべき立ち位置をPで決定したらそれに応じた投稿テーマ・投稿比率で実行(D)すること、狙っていた立ち位置に対して成果はどうだったのかさまざまな視点で測定・評価(C)すること、達成できなかった要因を探り改善に繋げる(A)こと。
PDCAの4つをきちんと回していくには、常に前後のフローを意識した運用を徹底する必要があります。
こういった運用フローを基本とした上で、計画(P)に入る大前提としてアカウントの「戦略設計」も必要です。ここで言う戦略設計は、Instagramをどういった観点でビジネス活用するのか、Instagramの役割定義を考えることを意味します。
つまり、事業部の方向性・部門目標に基づいた運用の方向性(テーマ策定)、Instagramで達成したい最終的な目的、それに準じたKPI設計やターゲット設定などを初めに定義する、ということ。
以下は、そんな「戦略設計」を考える2つの方法です。
方法1:顧客の成長段階のどこにタッチしたいのかで決める
顧客による、認知から最終的に購買行動、共有、という体験の流れのうち、各SNSはどこまでタッチできるのかを示したもの。このファネルをベースに、顧客のどの段階にタッチしていきたいのかを考え、Instagramの役割定義を考える方法です。
<関連記事>
・SNSマーケティングとは|消費行動モデルPERCARS・事例・手法を解説
・SNS戦略策定5ステップ|ボトルネックをつきとめるSNS運用法を解説
方法2:アカウント成長段階から決める
投稿に対するユーザーのアクション状況などから、運用しているアカウントの成長段階を判断し、その段階に見合った「目的」を定めていく、という方法です。
一からアカウントを立ち上げる段階なのか、既にもう運用を開始し成長段階にあるのか、状況に応じて向かうべき場所は変わってきます。
例えば、立ち上げて間もない段階であればとにかくリーチを伸ばすこと、既にブランド理解が進んでいる段階であればUGCを伸ばすことを目的に考えてみましょう。
ちなみに、Instagramは「いいね数・保存数・コメント数のいずれも、投稿から24時間経過時点でのエンゲージメント数が通算エンゲージメント数に対して“70%〜80%程度”の数値を示す」ため(テテマーチのInstagram分析ツール「SINIS for Instagram」による独自調べ)、投稿して最短翌日には評価・改善をおこなうことができます。
よって、実行(D)に対する測定・評価(C)、対策・改善(A)の部分はあえて時間を設けることなく、デイリーのチェック、スピーディーな軌道修正をかけていくのが理想的です。
現状把握と勝ちパターンを探る3つの視点
運用フローの見直し・戦略設計が終わったら、次はより具体的なフローに入っていきます。
アカウントの健康状態を知る全容把握
ステップは大きく分けて「現状把握」「改善方針・施策設計」の2つ。ここではまず前者について紹介していきます。
①同業界・ベンチマークとする競合他社と比較し、自社アカウントの状況を整理
まずは、基準となる他者のいいね率や保存率、フォロワー増加率などを把握していく。
この時、単純に「いいね数」「フォロワー数」といった定量比較をしてしまうと、正しく状況の良し悪しが判断できないため増加率と合わせて確認する。
<関連記事>
・Instagramのフォロワー数やエンゲージメント率、業界ごとの基準とは?主要25業界・4,311アカウントから検証
②各指標の状態から、アカウントが現在位置する成長フェーズを把握し、狙うべき指標を設定
以下のような、細かな健康指標を用いて自社アカウントの健康状況・成長度合いをABCで判定していく。
分析ツールがある場合は、このように収集可能なデータを用いて各種指標を競合他社と比較することができますが(本記事の例ではSINISを活用)、ツールが無い場合は、見える情報から概算的なインゲージメント率を出していく流れとなります。
例:フォロワー数を分母に「いいね数」「コメント数」で概算の割合を算出、広告出稿の有無を調査(Facebook広告ライブラリ)
Instagramアカウントの現状・全体像を把握する方法はこちらをご覧ください。
各指標の関連性を把握し、注力ポイントを定める
各指標の見方・指標同士の関連についてもう少し詳しく見ていきましょう。
各指標を横断して見ることで、判定が「C」で悪い状態となった部分について、改善すべき部分を絞り込んでいきます。
前掲した以下の指標では、フォロワー増加率・プロフィールアクセス率がCで悪い状態です。
一方、他の指標を見ると以下のことがわかります。
- リーチ率は悪くない
- フォロワーを見る限り概ねターゲットにきちんと届いている
- いいね率も悪くない
この場合、いいね率が悪くないという点でコンテンツも概ね良好と判断できます。
すなわち、改善すべきはコンテンツの内容ではなく、プロフィールアクセスさせる仕掛けやアカウントトップに並べるコンテンツ、フォローしたくなるプロフィール作り。これらが課題であり、注力すべきポイントであることがわかります。
Instagram投稿(コンテンツ)の分析は分類・捨象・比較の3つの視点・4象限で整理
自社アカウントの現状把握が完了したら、いよいよ投稿の分析です。
分析する事象は非常に多くありますが、今回は、分析の中でも因数の大きい「コンテンツ部分」をピックアップします。
分析は「分析・捨象・比較」の3つの視点と、4象限(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の概念で視覚的に整理していくやり方が、“勝ちパターン”を見つけやすくおすすめです。
ここでの4象限は、縦軸:上下が伸びしろの有無、横軸:エンゲージメントの良し悪しとして、それぞれ以下のように定義づけられます。
- 第1象限エリア(右上)「若手スター」:エンゲージメントが良く伸びしろもある=強みとして強化すべきコンテンツ
- 第2象限エリア(左上)「有望ルーキー」:エンゲージメントは悪いが伸びしろがある=「若手スター」に成長させるため、優先的に改善すべきコンテンツ
- 第3象限エリア(左下)「負け犬ルーザー」:エンゲージメントが悪く伸びしろも無い=改善の後回し、あるいは捨てても良いコンテンツ
- 第4象限エリア(右下)「大御所ベテラン」:エンゲージメントは良いが伸びしろが無い=切り口を変えるなどして、継続的に良い反応を得られるよう改善すべきコンテンツ
以下、分析の具体的な方法をステップごとに紹介していきます。
STEP1.分類|コンテンツの種別を整理して傾向を見る
・・・自身が発信しているコンテンツ(投稿)を、テーマごとに細かく分類していく。
例:暮らしのメディアアカウントを運用している場合
投稿を、料理系、ライフハック系、育児系、洗濯系、引っ越し系、掃除系…に分類
テーマごとに分類していくと、例えば「この日の投稿はこの料理系コンテンツだから一気に伸びた」「この日の投稿はライフハック系コンテンツだから反応が良かった」といったように、ざっくりとした傾向が出てきます。
傾向が分かったら、一旦それらの投稿テーマは「良いコンテンツ」として4象限の右側(若手スター・大御所ベテラン)に設置しておきます。
STEP2.捨象|比較対象となる特徴のみを残して傾向を見る
・・・テーマごとのいいね数の数で、テーマの良し悪しを判断していく。この時、個々の要因(どんなクリエイティブだったか、キャプションだったか、ハッシュタグだったかなど)は一旦度外視し、「いいね数」という特徴のみを残し判断していく、というのがポイント。
例:暮らしのメディアアカウントを運用している場合
料理系はいいね数平均1000、ライフハック系は平均800、掃除系が平均300だったため、掃除系はアカウントを伸ばす上で効果的でないテーマ”と判断。
また別の方法として、自身が発信しているコンテンツ(投稿)を大枠のグループに分類してから、テーマを判断するやり方もあります。
例:コンテンツ(投稿)の対象となる性別で分類・捨象
女性向けの投稿が伸びていたが、男女関係無く対象とした投稿は相対的にあまり伸びてないため、後者は“良くないテーマ”として判断。この時も、性別以外の情報は一旦捨てることで、純粋な性別の傾向のみを把握できる。
捨象することで“良くないテーマ”が見つかったら、そのテーマに該当するコンテンツを「良くないコンテンツ」として先ほどの4象限の下側(負け犬ルーザー)に設置しておきます。
STEP3.比較|定量比較による差から傾向を見る
・・・さらにさまざまな角度から投稿テーマを比較し、現れた傾向の要因を探っていく。
比べる視点は数多くありますが、ここでは以下の3つを取り上げます。
①推移比較 A – Z
・・・推移の波から、前後の増減を比べ理由を考察していく。
例:⚫︎月〜⚫︎月までのリーチを確認。リーチが下がっている時期がある場合、前後で投稿テーマの変更などがあったか?など理由を考察
②2点比較 A A´
・・・時期条件をそろえて指標を比べ、増減の理由を探っていく。
例:去年と今年の投稿のリーチを比較。差が生じている場合、投稿テーマが異なるのか?投稿数が異なったのか?など理由を考察
③2極比較 A Z
・・・その他一切の条件を無視し、反応に最も差がある2点を比べ理由を探っていく。
例:直近1年で最もリーチが伸びた投稿と、最も伸びなかった投稿を比較。
投稿テーマが異なるのか?その時期のトレンドにマッチしていたのか?その時期に別の外部要因があったのか?など理由を考察
こうした比較により、例えば「ライフハック系や料理系は去年も今年も伸びている」「ライフハック系は、どんな内容でも大抵⚫︎ぐらいのリーチは超えていく」といった傾向が見えてくるでしょう。
これらはコンテンツの持続性、つまりいつまでも使えるテーマなのか・一時期しか使えないテーマなのか、といった視点で見ることができます。
<判明した傾向から、テーマを以下の判断で4象限の上下(伸びしろの有無)に振り分け>
・去年も今年も伸びているテーマ/どんな内容でも一定のリーチは超えていくテーマ
→保存性が高く、いつまでも刺さり続けるテーマ(伸びしろ有)
・去年は伸びていたが今年は伸びていないテーマ/初めの3投稿は伸びたがその後伸びなかったテーマ
→保存性が低く、一時期しか刺さらないテーマ(伸びしろ無)
STEP3の比較を経てもなお「負け犬ルーザー」に位置しているテーマは、最終的に“捨てる”という判断も考えられるでしょう。
ユーザー・競合・自社の3つの視点から改善方針を策定
コンテンツ分析によってダメな部分が明らかになったところで、次にコンテンツの改善です。改善は、ユーザー・競合・自社(3C)の視点でおこなっていきます。
まずは、「競合」の視点です。
改善方法①:同じ業界の優良コンテンツを見て傾向を掴む
自分たちの狙いたいハッシュタグを検索し、上位をとっているコンテンツをチェック。自社アカウントと同カテゴリの投稿内容を比較し、傾向を掴んでいきます。
例:暮らしのメディアアカウントを運用している場合「#ライフハック」を検索
改善方法②:ベンチマークしているアカウントの投稿からアイデアをもらう
ベンチマークしているアカウントの成長状況を確認。そのアカウントの中で伸びている投稿から、“勝ちコンテンツ”のアイデアをもらいます。
さらに以下のような形で、優良他社アカウントの中でも高水準のコンテンツと低水準のコンテンツを比較。勝てる傾向を掴んでいき、自社に取り入れていきます。
例:暮らしのメディアアカウントを運用している場合
高水準の傾向は「視線が分散しないクリエイティブ」「手書きの優しいフォント」「刺激色ではなく、淡いトンマナ(白系)」
競合視点からの改善策がわかったところで、最後に「ユーザー」「自社」視点から、改善策を吟味していきます。具体的には以下のような視点です。
自社のターゲットと競合のターゲットが同じかどうか?
・・・競合の優良事例の中でも、自社のユーザーニーズから外れているものは除外する
自社アセットでその改善策は実行可能なのか?
・・・クリエイティブの改善や投稿数の増加など、今の社内体制・外部との連携で実行できるか確認する
以上のように、自社でできて・ターゲットにマッチして・競合がやっている(3Cの視点全てクリア)というコンテンツ改善策は即実行していきましょう。
まとめ
本記事では、Instagramの分析・考察方法、分析結果をコンテンツに活かし改善していく運用ノウハウをお伝えしました。
Instagramは、APIが公開されている関係上取得できるデータが豊富なため、企業にとっては顧客との接点を持つためのツールであるだけでなく、顧客理解に最適なツールでもあります。自社のInstagramマーケティングの効果を最大化するためにも、本記事の内容をぜひ参考にしてみてください。
またテテマーチは、2015年の創業以来700社以上のSNS運用支援で培った企画力が武器です。データと企画力を活かしたアカウント運用支援をすることで、知見のない状態でのやみくもなトライをストップし、成果に着実に繋げていきます。
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