データ分析から見える意外なフォロワー像とは?SNS運用をビジネス成果に繋げるインサイト理解の秘訣
Date : 2025/03/21
SNS運用において、「フォロワー10万人達成!」のような数値目標を掲げている企業は多いことでしょう。しかし、実際にフォロワー数が増えたからといって、必ずしも期待通りの成果に結びつくとは限らず、課題を感じているケースも少なくありません。
SNSで成果を上げるには、 “数値には表れにくい” フォロワーの心の内側、つまり「インサイト(深層心理)」に向き合い、フォロワーが本当に必要としている情報を適切に届けることが大切です。
あなたは、自社のフォロワーについて、どれだけ深く理解できていますか?
本記事では、テテマーチが提供している「SNSフォロワー購買行動調査」のデータをもとに、SNSアカウントの真の価値を明らかにし、ビジネスに貢献するSNS運用の秘訣を解説します。
【この記事を読んで欲しい方】
- 「フォロワー10万人達成」など、フォロワー数を運用目標にしている方
- フォロワー数は多いものの、売上貢献などのビジネス成果を実感できていない方
- SNSの投資対効果の説明が難しく、社内で理解や評価を得られていない方
目次
調査概要
- 調査方法:SNSフォロワー購買行動調査(※1)
- サキダチラボが開発した、企業SNSアカウントのフォロワーを対象としたアンケート調査。フォロワーの属性や状態を明らかにし、SNSがユーザーの態度変容・行動変容にどのような影響を与えたのかを可視化できる。
- 調査アカウント:今回は、5社の公式Instagramアカウントをピックアップして調査結果を解説
- それぞれ業界の異なる5アカウント(飲食サービス、ヘアケア用品、寝具、商業施設、教育・学習支援)
- 調査内容:より解像度の高いフォロワー像を描き出すため、以下を中心に調査
- アカウントのフォロワーはどのような人たちなのか?(SNSの利用状況や商品の購入経験・頻度)
- 人々はなぜ、企業アカウントをフォローするのか?(フォローのきっかけや動機)
- フォロワーはどのような情報・体験を期待し、どのような投稿に興味を惹かれるのか?(興味関心)
- アカウントの投稿を閲覧した後、どのような行動をするのか?(態度変容・行動変容)

調査対象である5社の公式Instagramアカウントの特徴を分析した結果、上記のようなマトリクスに整理することができました。ただし、これはあくまで当該アカウントの位置付けを示すものであり、各業界・商材全体の特徴を網羅しているわけではありません。
※1:「SNSフォロワー購買行動調査」の詳細は、以下のページをご覧ください。
フォロワーの「数」以上に「インサイト」を重視!真の顧客理解がビジネス貢献に繋がる
今回の調査から、アカウントの業界や商材によって、フォロワーの属性やニーズが大きく異なることが明らかになりました。
次に紹介する調査結果をもとに、5つのアカウントにおけるフォロワー属性やインサイトの違い、ビジネス成果に繋がるSNS運用のポイントを具体的に解説していきます。
【飲食サービスアカウント】最新情報を受け取りたいというニーズが大きい

● フォロワー属性
既存顧客が中心で、ブランドや商品への愛着を持つフォロワーが多いです。また、購入頻度が高いほど、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を積極的に投稿する傾向も見られました。
● フォロワーのインサイト
フォローしている主な目的は、最新情報の入手。ブランドへの好意度が高いため、常に新しい情報に触れていたいと考えています。そのため、アカウントの閲覧頻度と実際の購入頻度には強い相関性がありました。
日々の投稿はもちろん、コメントやDMでのコミュニケーション、ストーリーズでのアンケート実施など、アクティブなフォロワーを増やす施策を図ることで、LTV(※2)の向上が期待でき、ビジネスの成長に繋がるでしょう。
また、商品の味や魅力を紹介するだけでなく、店内で過ごすことでどのような気分になれるのか、といった情緒的な価値を訴求することも重要であると示唆されました。
※2:LTV・・・Life Time Valueの略。「顧客生涯価値」と訳され、顧客が自社との取引開始から終了までに、もたらす利益の総額を指します。
【ヘアケア用品アカウント】既存顧客と新規顧客、両軸へのアプローチがカギ

● フォロワー属性
ブランド好意度の高い既存顧客が多く、商品を購入することを前提にアカウントをフォローし、情報を得ています。
● フォロワーのインサイト
新商品や限定商品などの最新情報、そして香りによってどのような気分になれるかといった情緒的な価値を求めているフォロワーが多いことが分かりました。これは、先の飲食サービスのアカウントと共通する傾向であり、アクティブなフォロワーを増やす取り組みがビジネス貢献に繋がると考えられます。
また、ヘアケア用品のような美容製品の分野においては、サステナビリティ活動など企業の取り組みを発信することで、ブランドへの好意度や顧客ロイヤルティの向上、リピート購入に繋がる可能性も見られました。
注目すべきは、未購入者が広告やキャンペーンをきっかけにアカウントをフォローし、その後の定期的な接触によって購入に至るケースが見られたことです。既存顧客との関係性を強化するとともに、新規顧客の獲得施策にも力を入れることが重要であると言えるでしょう。
【寝具アカウント】体験をイメージさせる独自コンテンツの発信で購入の後押しを

● フォロワー属性
フォロワーの多くが商品購入前の情報収集を目的とした見込み顧客。すでに購入経験があるフォロワーも、商品を購入する前にアカウントをフォローしている傾向が見られました。
また、購入経験があるフォロワーほどアカウントへのアクション(いいねなど)が多く、エンゲージメントが高いからといって新規購入に繋がっているとは限らないことも示唆されました。
● フォロワーのインサイト
買回り品である寝具の場合、ある程度「寝具が欲しい」と購入意欲のある層がInstagramで情報収集していると推測されます。そのため、広告施策は比較的効果が高く、インフルエンサーとのタイアップ投稿や広告をきっかけとして商品に興味を持ち、詳細な情報収集のためにアカウントをフォローする、という流れが見られました。
そんなフォロワーたちは、購入前の不安を解消するために投稿を見ています。公式サイトだけでは得られない、自身のライフスタイルやライフステージに合った商品の活用シーン、購入後の生活を具体的にイメージできるような独自コンテンツが効果的です。その際、UGCを積極的に活用するのも有効な手段となるでしょう。
【教育・学習支援アカウント】コンテンツごとに入会者・未入会者のターゲット設定が必要

● フォロワー属性
フォロワーの多くはすでに入会しており、入会後にフォローする傾向が見られます。一方、未入会者では、Instagramの発見タブなどからコンテンツを知り、お役立ち情報としてフォローするケースが多く、必ずしも入会を検討しているフォロワーばかりではないことが分かりました。
● フォロワーのインサイト
教材だけではカバーしきれない教育に関するお役立ち情報は、フォロワー全体から評価されているものの、入会者と未入会者では期待するコンテンツに違いが見られました。例えば、入会者にはサービスのより良い活用法、未入会者には教室の雰囲気や先生の人柄が伝わる投稿が効果的でした。したがって、コンテンツごとにターゲットや目的を明確にすることが大切だと言えるでしょう。
ただし、教育サービスの料金体系は月額固定制が一般的であるため、既存会員の利用頻度を上げるのは難しいという側面があります。そのため、本来は未入会者にリーチできる投稿を強化することが望ましく、フォロワー理解の重要性を改めて感じた調査となりました。
【商業施設アカウント】イベント情報と購買意欲を刺激する情報発信を

● フォロワー属性
実際に施設を訪れたことのある方が中心で、なかでも来館頻度の高いフォロワーが多いことが分かりました。このことから、フォロワーの多くは施設にアクセスしやすい場所に居住していると推測されます。
● フォロワーのインサイト
主なフォロー動機は「施設を訪問して興味を持ったから」であり、施設での満足度の高い体験がフォロワー増加に影響していると考えられます。
投稿内容としては、施設内のイベント情報や新店舗・新商品などの最新情報に対するニーズが高いことが分かりました。また、各店舗の商品情報を定期的に発信することで、まだ訪れたことのない店舗への興味喚起といった効果も期待できます。
特筆すべきは、投稿閲覧後に来館意欲が高まるフォロワーが多いという点です。これは、投稿内容がフォロワーのニーズに合致し、魅力的な情報を提供できていることを意味します。したがって、アカウント運用は来館頻度や買回り店舗数の向上に貢献していると言えるでしょう。
ビジネス成長に貢献するアカウント運用のポイント
業界・商材の異なる5社のアカウントを紹介しましたが、アカウントごとにフォロワー属性やインサイトが大きく異なることが明確になりました。これらの調査結果を踏まえ、アカウント運用において意識したいポイントをご紹介します。
1. フォロワーの顧客属性の把握なしに、アカウント運用は始まらない
フォロワーは既存顧客なのか、見込み顧客なのか、それぞれの割合はどれくらいなのか。これらの情報を把握することで、初めてフォロワーのニーズやインサイトを理解するための基礎が築けます。
2. “数値では測れない”アカウントの価値を探っていく
フォロワー数が増えても、彼らがアクティブな状態でなければ意味がありません。また、投稿が閲覧されても、フォロワーの意識や行動の変化に影響を与えていなければ、ビジネス成果に繋がっているとは言えません。日々の運用においても、投稿へのコメントに返信したり、ユーザーの投稿をメンション付きで公式アカウントで紹介するなど、フォロワーとのコミュニケーションを大事にすることで、継続的にアクティブな状態を目指しましょう。
なお、SNS上のエンゲージメント数も、あくまで指標の一つです。実際にフォロワーの声に耳を傾けなければ分からないことも多く、その重要性を改めて実感できる調査となりました。数値データだけに捉われず、顧客のインサイトに真摯に向き合う企業こそが、SNS活用で大きな成果を上げられるでしょう。
3. 認知拡大 or LTV向上。どちらに注力すべきかを明確にする
従来、SNSは認知度向上やブランディングに効果的とされてきましたが、業界や商材によっては、顧客ロイヤルティを高めるためのCRM(※3)としても有効であることが分かりました。
もし認知拡大を目的とするならば、現在のフォロワー内に占める見込み顧客の割合が適切であるかを見直す必要があるかもしれません。一方、LTV向上を目的とするならば、顧客との関係値を強化するためのコミュニケーション施策など、既存顧客にフォーカスした運用方針への転換も視野に入れるべきでしょう。自社の商材特性を踏まえ、どちらの目的に注力すべきか、そしてSNSをどのように活用していくのが効果的か、改めて検討し直してみてはいかがでしょうか。
SNS運用で真に求められるのは、フォロワーの「インサイト」、つまり心の奥底にある欲求や感情を正しく理解することです。インサイトを理解し、彼らが本当に必要としている情報をきちんと届けることで、数値には表れにくい、ビジネス貢献度の高いSNS活用が実現できるでしょう。
※3:CRM・・・Customer Relationship Managementの略。「顧客関係管理」と訳され、顧客との関係を向上させるためのアプローチのことを指します。
フォロワーの価値を最大化!4つのステップで成果を出すSNS運用
これまでご紹介した通り、SNSが本来のビジネス目的に繋げられていない場合、戦略設計を見直す前にフォロワーのインサイトを理解することが重要です。
● ステップ1:フォロワー理解
アンケート調査などを通して、フォロワー属性やアカウントとの関係性、フォロワーの態度変容や行動変容を明確にします。
● ステップ2:戦略設計
運用コンセプトやKGI / KPIの再設定、ターゲットの再定義などを行い、戦略を練ります。
● ステップ3:コンテンツ制作
設定したターゲットに響くコンテンツを企画・制作します。
● ステップ4:データ分析・改善
分析ツールを活用しながら、PDCAサイクルを回せる体制を構築し、継続的な改善を行います。
ビジネス成果に繋がるアカウント運用の第一歩は、インサイト理解から
ビジネス成果に繋がるアカウント運用を実現するためには、フォロワー属性とインサイトの把握が必要不可欠です。フォロワーのインサイトに焦点を当て、彼らが本当に求めている情報を届けることで、フォロワーだけでなく企業にとっても大きなメリットをもたらすことでしょう。
テテマーチでは、SNSアカウントのフォロワーを対象とした調査サービス「SNSフォロワー購買行動調査」を提供しています。この調査により、フォロワーの属性や状態を明らかにし、SNSがユーザーの態度変容・行動変容にどのような影響を与えたのかを可視化することが可能です。これらの定量的なデータと、創業以来700社以上のSNS運用支援で培ったノウハウを掛け合わせ、実践的なSNS活用を支援しています。