買回品 vs. 最寄品:SNSが購買行動に与える影響を商品の価格帯で比較分析|購買行動調査③
Date : 2025/02/25
Instagramの影響力は急速に拡大し、消費者の情報収集や購買行動に大きな変化をもたらしています。特にファッションやコスメ、食品など、日常的に使用する商品・サービスにおいては、多くの消費者がInstagramの情報を参考にしています。
一方で、いわゆる「買回品」と呼ばれるような高価格帯の商品・サービスに関しては、Instagramが購買行動にどのような影響を与えているのか、あまり明らかにされてきませんでした。
第1回・第2回では、Instagramが高価格商品の購買行動に与える影響の実態を明らかにしました。その調査結果との比較を目的に、Instagramの情報を参考にして10万円未満の低価格商品(最寄品)を購入したことがある消費者への調査も実施しました。
本記事では、Instagramが購買行動に与える影響を価格帯ごとに比較し、その違いを明らかにします。
目次
調査概要
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:一般消費者
- 性別:男女
- 年齢:15歳~59歳
- 地域:全国
- サンプル種別:過去5年以内にInstagramの情報を参考にして商品・サービスを購入したことがある方
- 調査期間:2024年5月17日〜2024年5月18日
- 有効回答数:831サンプル(高価格商品購入者:281、低価格商品購入者:550)
※調査結果を引用・転載される際は、「テテマーチ調べ」と出典を明記してください
※調査内容の一部または全部を改変して引用・転載することはお控えください
調査結果サマリー
Instagramの情報を参考にして高価格商品(10万円以上)を購入した回答者と、低価格商品(10万円未満)を購入した回答者を比較したところ、以下の特徴が見られました。
<【高価格 vs. 低価格】購買行動傾向>
- 高価格商品購入時、購買意欲を持ってからInstagramの情報に触れる
- 低価格商品購入時、「有名人・インフルエンサー」アカウントの閲覧率が高い
- 高価格商品購入時、「リールタブ」や「検索結果」の閲覧率が高い
- 高価格商品購入時、「実店舗に訪問」して購入することが多い
<【高価格 vs. 低価格】Instagram利用傾向>
- 低価格商品購入者、Instagramの利用頻度が低い
- 高価格商品購入者、Instagramでの検索後に「コメント・質問」をすることが多い
調査結果:購買行動傾向(高価格 vs. 低価格)
高価格商品購入時、購買意欲を持ってからInstagramの情報に触れる
はじめに、Instagramの情報を参考にして購入した商品・サービスは、購買行動におけるどのフェーズにInstagramで閲覧したのかを尋ねました。
本調査では、購買行動プロセスを【新しい商品・サービスを見つける / 知る】タイミング、【気になる商品・サービスの情報を集める】タイミング、【商品・サービスを購入するかどうかを検討する】タイミングという3つのフェーズに分けて分析しています。
その結果、高価格商品の購入者は、低価格商品と比べて、【気になる商品・サービスについて情報を集める】タイミングでInstagramの情報に触れる傾向が見られました。
また、高価格・低価格ともに、Instagramの情報に触れる割合が低い【商品・サービスを購入するかどうかを検討する】タイミングに注目すると、低価格商品の購入者が高価格商品の1.5倍となっています。
Q. Instagramの情報に触れたのはどのタイミングでしたか?最も近いものを選択してください。(高価格:n=281、低価格:n=550)

したがって、高価格商品の場合、すでに何らかの購買意欲を持ってからInstagramで情報収集するケースが比較的多いと示唆されます。例えば、ヴィンテージソファを購入する際、「北欧風の暮らしがしたい」「引越しを機に高級家具が欲しい」といったように、その商品・サービスが属するジャンルはある程度決まっている状態で、Instagramの情報に触れることが多いと考えられます。
これに対し、低価格商品の場合は、Instagramで偶然出会った商品を衝動買いに近い形で購入することも少なくないでしょう。例えば、すでにリップクリームをたくさん持っているにも関わらず、「たまたまInstagramで見た新色リップがかわいくて買ってしまった」といった具合に、比較検討に時間をかけず、意思決定が早い傾向にあります。
低価格商品購入時、「有名人・インフルエンサー」アカウントの閲覧率が高い
次に、商品購入時にInstagramで参考にしたアカウントについて尋ねました。
その結果、商品の価格帯に関わらず、「知り合いではない一般人」のアカウントが最も参考にされていることがわかりました。両者の差が顕著に見られたのは「有名人・インフルエンサー」のアカウントで、低価格商品購入時の方が、これらのアカウントを参考にする割合が8.5pt高い結果となりました。
Q. 購入時に参考にしたInstagramアカウントとして、あてはまるものをすべて選んでください。【複数回答可】(高価格:n=281、低価格:n=550)

低価格商品の購買判断では、「誰が紹介しているか」や「誰から買うか」が比較的重視される一方で、高価格商品においては、「企業・ブランドの公式アカウント」が発信する正確かつ詳細な情報が参考にされているとうかがえます。
高価格商品購入時、「リールタブ」や「検索結果」の閲覧率が高い
続いて、商品購入時に参考にした情報は、Instagramのどの画面で閲覧したのかを尋ねました。
高価格商品の購入者は、低価格商品と比べると、「リールタブ」や「検索結果」と回答した割合が高い結果となりました。
Q. 購入時に参考にした情報は、Instagramのどの画面で見ましたか。あてはまるものをすべて選んでください。【複数回答可】(高価格:n=281、低価格:n=550)

つまり、高価格商品購入時の方が、静止画よりも情報量の多い動画コンテンツ(リール投稿)から参考情報を得たり、能動的に検索して情報を集める傾向があると言えます。
一般的に、商品の価格が高いほど、購入前に時間をかけて慎重に検討されると考えられますが、Instagramにおいても同様の傾向が見られました。
高価格商品購入時、「実店舗に訪問」して購入することが多い
最後に、商品の購入経路について尋ねました。
その結果、高価格商品の購入者は、低価格商品と比べて、実店舗に訪問して購入したという回答割合が高く、その差は11.6ptでした。
Q. Instagramの情報を参考にして購入した商品・サービスはどのような経路で購入しましたか。あてはまるものをすべて選んでください。【複数回答可】(高価格:n=281、低価格:n=550)

以上の結果を踏まえると、高価格帯の商品・サービスを購入する際は、Instagramの情報に触れる前からある程度購買意欲を持っており、情報を収集する過程で、Instagram上の「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」や「企業・ブランドの公式アカウント」の投稿を参考にしていると考えられます。その後、実店舗に訪問して実物に触れたり、店舗スタッフからの説明を受けて、比較検討や購買決定をする、という流れが推察できます。
調査結果:Instagram利用傾向(高価格 vs. 低価格)
低価格商品購入者、Instagramの利用頻度が低い
ここからは、「高価格商品」と「低価格商品」の購入者における、Instagram利用傾向の違いを見ていきます。
まず、普段のInstagram利用頻度を尋ねたところ、高価格商品の購入者は、低価格商品と比べて、利用頻度が低い結果となりました。
Q. あなたは普段、Instagramをどのくらいの頻度で利用しますか。(高価格:n=267、低価格:n=517)

この結果は、両者のInstagramを利用する目的や方法に違いがあることを示唆しています。
高価格商品購入者は、能動的に情報を検索・収集したり、商品購入時にもInstagramを活用する傾向がある一方で、日常的な利用は少ないと考えられます。
これに対して、低価格商品購入者は、より娯楽やエンターテインメントとしてInstagramを利用している可能性が高いと言えるでしょう。
高価格商品購入者、Instagramでの検索後に「コメント・質問」をすることが多い
次に、Instagramで何らかの検索経験がある回答者に対して、検索後の行動について尋ねました。
その結果、高価格商品購入者の方が、投稿に対してコメントや質問をする傾向が見られ、その差は5.2ptでした。一方で、検索後に商品やサービスを実際に購入したと回答したのは、低価格商品購入者の方が高い割合を示し、その差は6.9ptでした。
Q. Instagramでの検索後、あなたが行なったことのある行動をすべて選んでください。【複数回答可】(高価格:n=246、低価格:n=470)

Instagramは商品の価格帯に関わらず、有効なマーケティングツールですが、それぞれ最適なアプローチは異なると言えるでしょう。
- 高価格商品
- コンテンツには、商品・サービスの詳細情報(機能、素材、使い方、アフターサービスなど)を充実させて、生活に取り入れた後の体験を想像させる
- コメントや質問に対応できる体制を整える
- ライブ配信やストーリーズの質問箱などで、顧客とのコミュニケーションを図る
- 低価格商品
- コンテンツには、商品・サービスに関する魅力的なクリエイティブ(写真や動画)を取り入れる
- 価格やキャンペーン情報など、購買意欲を刺激する要素を盛り込む
- 公式ホームページやECサイトへのリンクを設置し、購入導線をスムーズにする
まとめ

サキダチラボ 所長
上市 愛(かみいち めぐ)
今回の調査では、Instagramが購買行動に与える影響を価格帯ごとに比較し、その違いを明らかにしました。
高価格商品の場合、消費者はすでに何らかの購買意欲を持っていることが多く、より具体的に知りたい情報をInstagramで調べるという傾向が見られました。そのため、不安や疑問を解消できるようなコンテンツを発信するとともに、コメントや質問には真摯に対応することが重要です。
一方で、低価格商品の場合、消費者は比較検討にあまり時間をかけず、購買決定までが早い傾向が見られました。そのため、商品の機能的価値を訴求するだけでなく、「今すぐ欲しい」と思わせるような情緒的価値(限定感・幸福感・ワクワク感など)を伝えるコンテンツが効果的です。
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