Instagram担当者の7割がまだ活用できていない「リポスト(再投稿) 機能」について、SNSディレクターに話を聞いた
Date : 2025/12/08
Instagramは2025年8月6日(米国時間)、他のアカウントの投稿を自分のフィードで再共有できる新機能「リポスト(再投稿)」を正式リリースしました。
しかし、企業のInstagram担当者の方の多くは、この機能の良い活用方法がわからず、戸惑っているようです。
本記事では、企業のInstagram担当者167名を対象にしたアンケート調査の結果を踏まえ、テテマーチ株式会社のSNSディレクターと「企業はリポスト機能をどう活用していくべきか?」というテーマについてディスカッションしていきます。
本記事の第1弾は、以下のリンクからお読みいただけます。
本記事に関連して、Podcastでもリポスト機能についてお話しています。
20分ほどで主要なポイントをおさえられるような内容になっているので、こちらもチェックしてみてください。
この記事の執筆者
清水優志(テテマーチ株式会社 / SNSマーケティングスペシャリスト)
2015年から企業のSNSマーケティングを支援し続けてきたテテマーチ株式会社で、SNSマーケティングに関する調査・研究を行なう「サキダチラボ」や、SNS分析ツールである「SINIS for Instagram」「SINIS for X」に参与する、SNSマーケティングのプロフェッショナル。これまで100社以上の企業のSNSアカウントをコンサルティングし、100,000アカウント以上のデータを分析してきた。ウェビナー登壇実績も多く、のべ動員数は5,000名以上。
神谷 飛雄馬(テテマーチ株式会社 / プランナー・コンテンツディレクター)
大手芸能事務所での、俳優・音楽アーティストのマネージャー職を経てテテマーチへ参画。 SNSプロモーションのプランニングに加え、Web CM等の動画企画・制作ディレクション、市場調査まで幅広く従事する。定性・定量調査に基づいた「ロジカルな設計」と、エンタメ業界で培った「人の心を動かすクリエイティブ」の両輪から、企業のマーケティング課題を解決へと導く。
アンケート調査の概要
- 調査名: Instagramのリポスト(再投稿)機能の活用実態に関するアンケート
- 調査期間: 2025/10/28 〜 2025/11/06
- 調査方法: ユーザー向けのメールでの告知 + Googleフォームでの回答回収
- 設問数: 約10問(回答目安時間3分)
- 調査規模: SNS分析ツール「SINIS」のユーザー 167名(すべて企業担当者)
目次
Instagram担当者の7割は、リポスト機能を理解できている自信がない
清水:
早速、アンケートデータを見ていきましょう。
まず「Instagramのリポスト機能について、どのくらい理解できていますか?」という質問に対して「理解できている」「とてもよく理解できている」と回答した方の割合は、全体の32%にとどまりました。逆に言えば、7割弱の方はリポスト機能の理解度について自信がない状態です。

神谷:
「『リポスト』や『再投稿』という機能名は知っているし、使ってみたいが、その利点や活用方法が明確にイメージできない」という方が多いのかな。
Xのリポストと比較すると拡散力は弱そうですが、では企業アカウントではどう活用するのが正解なのか?と問われると、自分の言葉で説明できる方はまだ少ない印象です。
清水:
神谷さんの視点でリポスト機能を説明するとしたら、どうなりますか?
神谷:
私は、リポストは「これまで無数のコミュニティを大事に育ててきたInstagramが、その個々のコミュニティをゆるやかに拡張することを目指した機能」だと捉えています。
Instagramは長らく「大切な人や大好きなこととあなたを近づける」というミッションを掲げ、ユーザー同士の親密なつながりの創出に尽力してきました。その結果、数え切れないほどのユーザーコミュニティが形成され、そこで交流が生まれています。
リポストは「フォロワーづたいに自然に情報が伝播していく」という独自の性質によって、これらのコミュニティを横断しながら滑らかに投稿が広がっていくような仕組みを実現しました。
今まで、このような仕組みは意外となかったんですよね。
Instagramの思想が色濃く反映された、いい機能だと感じています。
清水:
たしかに、これまでもストーリーズで他人の投稿を公開引用することはできましたが、そのような引用だと連鎖的な広がりは生まれづらかったと思います。
また、InstagramのDMや、Instagram以外のチャットツールで投稿がシェアされることもありますが、これは1対1の関係性のなかでのクローズドな共有に過ぎません。
そう考えると、リポストによって「コミュニティがゆるやかに拡張していく」ような新しい使われ方が生まれた、というお話は納得です。
神谷:
このように、Instagramの思想レベルから紐解いて機能について考えられると、自信をもって「理解できている」と言えるのかもしれません。
僕はクライアントさんに丁寧にご説明する必要がある立場なので深く考えていますが、なかなかその時間が取れないことに悩んでいる方も多いのだろうな、と感じています。
Instagram担当者の7割は、他人の投稿をリポストできていない
清水:
続いて、リポスト機能の活用状況に関する質問です。
「あなたのアカウントが他人のアカウントの投稿を”リポストする”機能をどのくらい活用できていますか?」という質問に対しては、なんと7割弱の方が「十分に活用できていない」「まったく活用できていない」と回答しています。

神谷:
「そもそも使っていない」という方が思った以上に多いですね。
企業で活用するとなると、まずはリスクを見極めたうえで「リスクを補って余りあるメリットがありそうだから使ってみよう」という判断の仕方をするものなので。
リリースされて半年も経っていない今のタイミングだと、まだ様子見をしている方が半数近いのも仕方がないと思います。
清水:
企業担当者さんが足踏みしてしまう理由は、主に「リポストすることでユーザーを不快な気持ちにさせたり、企業に悪い印象を抱かせてしまうのではないか」という懸念です。
こういったリスクについて、神谷さんはどうお考えですか?
神谷:
もちろん、ユーザーとの直接的な交流が発生する機能なので、コミュニケーション上のリスクは0にはなりません。
ただ、そこは対人コミュニケーションと同じで、SNSで当たり前とされるような「礼儀や作法」ができていればリスクは下げられます。
また「リスクがあるからコミュニケーションは取らない」という選択肢は、できれば避けたいものです。
企業ごとにレギュレーションやガイドラインが定められていると思いますので、そこで許されている範囲で、できることから小さく始めてほしいです。
清水:
具体的には何から始めるのがよさそうでしょうか?
神谷:
一番おすすめなのは、やはりポジティブなUGC(一般生活者の口コミ投稿)のリポストです。
ポジティブなUGCを発信している時点で、企業やブランド、商品に対して好感を持ってくれているはずです。リポストのコメントを付ける際に余計なことを言わない限りは、リポストしてもトラブルに発展する可能性は低いといえます。
ただし、もちろん「リポストされることなんて想定していなかった」「リポストを取り消してほしい」という方もいるかもしれません。
それも想定し、事前の許可取りをはじめ、リポストおよびリポスト取り消しの業務マニュアルを準備しておけると安心です。
UGCはユーザー目線で自社の商品・サービスを褒めてくれているため、自社で発信するコンテンツと違い、よりユーザーに身近なコンテンツを公式から発信することができます
UGCのリポストについては、やらない理由がないくらいだと思います。
Xであれば、アカウントのプロフィールフィード内にリポストしたコンテンツが表示されるため、何をいつリポストするかはけっこう重要です。
でも、Instagramはプロフィールグリッド内にはリポスト投稿は表示されません。すべてプロフィール内のリポストタブに集約されるので、培ってきた世界観に干渉するリスクを最小限に抑えることができます。また、リポストのタイミングや頻度にそこまで気を使わなくても嬉しいポイントです。
Instagram担当者の7割は、自分の投稿をリポストしてもらえていない
清水:
次は、一般ユーザーに「リポストしてもらう」観点の活用です。
「あなたのアカウントの投稿を他人のアカウントに”リポストされる”機能をどのくらい活用できていますか?」という質問に対しては、こちらも7割近い方が「十分に活用できていない」「まったく活用できていない」と回答しています。

神谷:
Instagramユーザーたちがまだリポスト機能に気づいていなかったり、使いこなせていないんですよね。
ごく一部、”推し”や親密な友人などの投稿をリポストするユーザーもいますが、大多数のユーザーは一度もリポストしたことがないのではないでしょうか。
清水:
これに関しては、時間とともに機能が浸透していくのを待つしかなさそうです。
神谷:
余談ですが、例えばプロフィールグリッドのサムネイル画像のサイズが、急に1:1(正方形)から3:4(縦長)になったときには、ユーザーから驚くほどの反響がありましたよね。
あのような見た目にわかりやすい変更については、良くも悪くも議論になりやすく、機能変更の認知も急速に広まるものです。
一方で、リポスト機能のように見た目でわかりづらい機能追加については浸透までに時間がかかるのでしょう。
清水:
ちなみに、”リポストされる”というとXをイメージする方も多いと思うのですが、Instagramでも自社アカウントの投稿がリポストされることで拡散されていき、炎上につながるようなリスクもあります。
このような「炎上リスク」についてはどうお考えですか?
神谷:
Xでリポストされた投稿は、「おすすめ(For You)」のフィードで、自分がそのアカウントをフォローしているかどうかに関わらず”おすすめ”されますよね。
フォロワーの枠を超えて「その話題に関心のありそうな見知らぬ人の「おすすめ」へ拡散されるので、文脈を共有していない”外野”に届きやすいのです。
結果として、投稿を見るユーザーのなかには、自分と価値観が違う投稿を目にして反感を持ってしまう方もいるでしょう。
一方で、Instagramのリポスト投稿は、あくまでもリポスト投稿をしたアカウントをフォローしているアカウントにしか届きません。
そのアカウントをフォローしてくれているということは、そのアカウントと価値観が近いということなので、反感を持たれるリスクも低いですよね。
さらに、リポストされた投稿は「どんな投稿なのか」よりも先に「誰がリポストした投稿なのか」にまず注意が向くように、アニメーション付きのアイコンと一緒に表示されます。
自分がフォローしている人のリポストした投稿だとわかれば、投稿に対しての見方も好意的になるのではないでしょうか。これらを踏まえると、Instagramでのリポストは炎上リスクが比較的低いといえます。
Instagram担当者の7割は、リポスト活用の成果を実感できていない
清水:
ここまでは「機能を使っているかどうか」という話でしたが、ここからは「成果を実感しているかどうか」という話に移ります。
”リポストする”・”リポストされる”の両面について、「機能の効果をどのくらい実感していますか?」と質問したところ、いずれも7割強が「十分に実感できていない」「まったく実感できていない」と回答しました。


神谷:
そもそも活用できていない方が約半数いらっしゃるので、この結果は仕方がないですね。
また、活用できている方も「成果を実感できるほどのインパクトはまだない」という状況なんでしょうね。
清水:
まだ機能もリリースされたばかりですから、成果に跳ね返ってくるまでにはもう少し時間がかかりそうです。
今の段階で、ポジティブなUGCのリポスト以外に何かやるとしたら、どんなことが考えられるでしょうか?
神谷:
「リポストされることの意味」をチームメンバーなどとしっかりすり合わせておくことも重要ではないでしょうか。
Instagramアカウント運用の”基本のキ”は、「エンゲージメントやリーチが伸びた投稿を分析すること」です。
その「エンゲージメント」のなかにはリポストも含まれますが、では、リポストされる投稿とはどんな投稿なのか?リポストされることでどんなメリットが享受できるのか?を、自社アカウントの文脈で正しく言語化できているInstagram担当者さんはまだ多くない印象です。
「いいね」「保存」「コメント」は同じ「エンゲージメント」として括られますが、それぞれ意味合いはまったく異なりますよね。
同様に、リポストについても正しく意味付けをしていく必要があります。
リポスト活用の最大の課題は「他社アカウントの事例が見つけられていない」こと
清水:
おっしゃるとおり、まずは一般ユーザーの口コミ投稿(UGC)をリポストするところから始められるとよさそうです。
とはいえ、二の足を踏んでしまうポイントがありそうだなと思ったのが次のデータです。「リポスト機能を活用するうえでの問題・課題があれば教えてください」という質問に対して、77%の方が「リポスト機能を上手く活用する企業アカウントの事例が見つけられていない」と回答しました。

神谷:
参考にする事例が見つからないと、自分も自信をもって施策を推進できませんし、チームメンバーなどに「ぜひリポストすべきです!」とも伝えづらいですよね。
確かに、ここがボトルネックになってリポスト活用が進まないのかもしれません。
清水:
神谷さんは、リポスト活用の参考事例はどのように探していますか?
神谷:
リポスト活用の事例を探すなら、競合他社のアカウントをチェックするのが一番です。
競合やベンチマークと呼べるようなアカウントをひととおりチェックして、リポスト機能を利用しているアカウントが何をしているかを調査してみましょう。
仮に直接的な競合やベンチマーク先がリポスト機能を利用していなければ、少しずつ定義を広げて、リポストを利用しているアカウントが見つかるようにしてください。
一点、注意なんですが、リポストはPCのWebブラウザでは表示されないので、調査はスマートフォンで行なってください。
清水:
確かに、機能のリリースから数ヶ月が経過し、活用事例が出てきている時期だとも思うので、改めてこのタイミングで網羅的な調査をするのはよさそうです。
さいごに | リポスト機能のこれから
清水:
では、最後に、ここまでの議論を踏まえて、リポスト機能の企業活用について一言お願いいたします。
神谷:
現在は、リポスト関連のAPIが公開されていないこともあり、リポストを活用してもそれをデータで確認することが困難です。
そういった背景もあり、リポスト機能の企業活用は、リポストキャンペーンの企画・実行なども含めて、まだ発展途上という状態です。
ただリポスト機能は、Instagramが従来から持っている媒体としての特性や特長をより加速させてくれる、Instagramらしさの詰まった素晴らしい機能です。
なので、個人的には、これからもInstagramが媒体としてリポスト機能の活用促進に力を入れてくれるだろうと思いますし、その過程でAPIが公開されれば、より多くの企業がリポスト機能の活用に乗り出すようになるのではないかと考えています。
そのような未来に準備する意味でも、今のうちから、まずはポジティブなUGCのリポストや、競合他社のアカウントのチェックなど、できることから始めていただけるとよいですね。
本記事の第1弾は、以下のリンクからお読みいただけます。
本記事に関連して、Podcastでもリポスト機能についてお話しています。
20分ほどで主要なポイントをおさえられるような内容になっているので、こちらもチェックしてみてください。

