【2023年10月施行】ステマ規制を学ぶ13の質問とプロモーションの対策
Date : 2023/11/08
本記事では、2023年10月1日から景品表示法違反となった「ステルスマーケティング」(通称:ステマ)についての概要や背景について解説します。
「ステマ規制について要点を抑えて理解したい」「ステマ規制が施行されたが、何が対象になるのかわからない」等のお悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- ステマ規制の社会背景と要点・規制対象・罰則
- ケース別ポイント
- インフルエンサー起用時のステマ規制の対象と注意点
- アンバサダー起用時のステマ規制の対象と注意点
- PR表記に関するステマ規制の対象と注意点
- 一般ユーザーの投稿に関するステマ規制の対象と注意点
ステマ規制とは?
広告であるにもかかわらず広告であることを隠す「ステルスマーケティング」は近年社会問題となっています。
ここではなぜステマは規制されることになったのか、そして規制対象や罰則はあるのか、その背景と概要について解説します。
背景:強い影響力を持つインフルエンサーとステマ問題
ステマ規制の背景としては、消費者がSNS上で膨大な量の情報を選別する際、信憑性の高い情報を選びにくくなってしまっていることが挙げられます。
SNSを使用した情報収集が増えているなかで、インフルエンサーの口コミを参考にする人が割合として多くなっています。株式会社gracemodeの調査によると、「インフルエンサーが紹介した化粧品を購入した回数は?」という質問に対しては、若年層の73%もの人が購入したことがあると回答し、インフルエンサーの影響力が伺えます。
しかしそのインフルエンサーマーケティングで、“報酬を渡す代わりにレビューを書いて投稿をしてもらう”といったやり方が横行しているのが現状です。消費者は、広告ではない一般消費者の感想であると誤認してしまい、その表示の内容をそのまま受けてしまう可能性があります。
このような誤認をなくし、消費者が商品を自主的かつ合理的に選ぶことができるよう施行されたのがステマ規制です。
概要:一般消費者の利益を保護するステマ規制
背景を踏まえ、2023年10月に施工されたステマ法規制の要点・対象・罰則について詳しく解説します。
《要点》
景品表示法では、商品・サービスの品質、内容、価格等について一般消費者が誤認及び誤認するおそれのある表示を規制しています。自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れがある「ステルスマーケティング」を規制することで、一般消費者の利益を保護することが本質的な目的です。
《規制対象》
- 事業者の表示(=広告)の中で一般消費者が広告であることの認識が困難なもの
- 商品・サービスを供給する事業者(広告主)
《罰則》
違反行為が認められた場合、事業者に対して措置命令が行われます。 措置命令については、その内容が公表されます。(課徴金はかかりません。)
消費者庁がまとめたガイドブックは下記より閲覧できます。 後述するQAと合わせてお読みください。
参考:景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック
《ガイドブック内の用語解説》
第三者の表示 消費者やインフルエンサーの投稿・口コミなど
事業者の表示 事業者からの広告・宣伝
顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について行う表示のことであり、一般消費者に対して、商品・サービスを知らせる表示全般のことで、つまり、広告のことになります。
〈事業者の表示と判断される例〉
- 事業者が自ら行う表示 ・事業者が第三者になりすまして行う表示
また、第三者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与した場合には事業者の表示と判断されます。 - 事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合
- 事業者が明示的に依頼・指示していない場合において、事業者の表示となるかは以下3つの判断項目を考慮する
①事業者と第三者のやり取り ②対価の内容・目的 ③事業者と第三者の関係性
ステマ規制に関する13の質問と回答
ここからは、ステマ規制に関してテテマーチに寄せられた13の質問をQA形式で本記事にまとめました。ステマ規制後のマーケティング・今後の対応の参考にしてみてください。
- ステマ規制に関する13の質問と回答
- インフルエンサー起用時のステマ規制の対象と注意点
- Q1:インバウンド対応で海外インフルエンサーを活用した場合もステマ規制の範疇になりますか?
- Q2:新製品発表会におよびした美容ライターさんのInstagramでの投稿は、イベントへの招待という便益を提供しているため、記事は事業者の表示にはならないが、ライターさん個人のSNSは事業者の表示となるという認識であっていますか?
- Q3:インフルエンサーのエージェントへ依頼して、その中のインフルエンサーが自主的に商品紹介した場合、間接的な報酬の場合も規制対象になりますか?
- Q4:Instagramで人生が変わったライフハック5選、愛用コスメ集など、本当に愛用しているアイテムの中にPR商品を紛れさせるのはどのような扱いになりますか?
- アンバサダー起用時のステマ規制の対象と注意点
- 一般ユーザーの投稿に関するステマ規制の対象と注意点
- PR表記に関するステマ規制の対象と注意点
- インフルエンサー起用時のステマ規制の対象と注意点
- まとめ
インフルエンサー起用時のステマ規制の対象と注意点
Q1:インバウンド対応で海外インフルエンサーを活用した場合もステマ規制の範疇になりますか?
A:はい、海外インフルエンサーを活用した場合も規制の範疇に含まれます。
事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合は海外インフルエンサーであっても事業者の表示と判断されます。また、明示的な依頼、指示がなくても以下の3つの判断項目を考慮した上で客観的状況から事業者の表示となる場合があります。
〈事業者の表示となるか判断される3つの項目〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.10より
①事業者と第三者のやり取り
メール、口頭、送付状の内容
②対価の内容・目的
対価の内容(金銭、物品に限らず、その他経済上の利益も含まれます。)
主な提供理由(宣伝目的等)
③事業者と第三者の関係性 過去に対価を提供していたか、今後対価を提供する予定の有無
Q2:新製品発表会におよびした美容ライターさんのInstagramでの投稿は、イベントへの招待という便益を提供しているため、記事は事業者の表示にはならないが、ライターさん個人のSNSは事業者の表示となるという認識であっていますか?
A:【記事】規制対象外/【個人SNS】規制対象となるかは解釈次第
【記事】については、編集権が媒体事業者にあるため、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから事業者の表示とはなりません。
〈事業者の表示とはならない例〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.12より
正常な商慣習における取材活動に基づく記事の配信、書評の掲載、番組放送
Q3:インフルエンサーのエージェントへ依頼して、その中のインフルエンサーが自主的に商品紹介した場合、間接的な報酬の場合も規制対象になりますか?
A:はい、規制対象となります。
「自主的に商品の紹介をする」という行為自体ではなく投稿内容に、事業者側がどれだけ介入したかどうかが重要になると考えられます。そのため、こちらも上記の〈事業者の表示となるか判断される3つの項目〉の②に当てはまり、規制対象となります。
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.10より
Q4:Instagramで人生が変わったライフハック5選、愛用コスメ集など、本当に愛用しているアイテムの中にPR商品を紛れさせるのはどのような扱いになりますか?
A:PR商品であることが一般消費者から見て分かりやすい表示になっていれば、規制対象外です。
明瞭・不明瞭の判断は、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となります。
〈一般消費者が事業者の表示であることが明瞭で分かる例〉
「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といったSNS等で広く一般に利用されている文言による表示を行う場合 ※ただし、上記の文言を使用したとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあります。事業者自身のSNSアカウントを通じて表示を行う場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.14より
認識しにくい、文言・場所・大きさ・色で表示する場合は規制対象となるため注意が必要です。
〈一般消費者が事業者の表示であることが不明瞭で分からないとされる例〉
冒頭に「広告」と記載し、文中に「第三者の感想」と記載するなど、事業者の表示である旨が分かりにくい表示である場合一般消費者が事業者の表示であることを認識しにくい、文言・場所・大きさ・色で表示する場合(文章で表示する場合も含む。)
事業者の表示であることを大量のハッシュタグ(#)の中に表示する場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.13より
アンバサダー起用時のステマ規制の対象と注意点
Q5:公募でのアンバサダーマーケティングでもステマ規制の対象となりますか?
A:アンバサダーの投稿内容によっては規制対象になりません。
事業者が、インフルエンサー等の第三者に無償で商品又は役務を提供してSNS等への投稿を依頼するものの、インフルエンサー等の第三者が**自主的な意思に基づき表示(投稿)する場合は、事業者の表示とはなりません。 ーガイドブックp.11より
ただし、下記は規制対象となりますので注意が必要です。
〈事業者表示にあたる例〉
事業者が、インフルエンサー等の第三者に対し、無償で商品提供した上でSNS投稿を 依頼した結果、第三者が事業者の方針に沿った表示(投稿)内容を行った場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.10より
共通点:無償で商品を提供し投稿を依頼
相違点:自主的な意思に基づいた投稿をしているか、事業者の方針に沿った投稿をしているか
以上の相違点によって、規制対象となるのか判断されると考えられます。
Q6:「アンバサダー活動を満了した場合のみ製品をプレゼントする」「モニター価格で購入できる」などと明記している場合、アンバサダーの投稿には「PR」の記載が必須となりますか?
A:「PR」等、事業者と第三者の関係性を明瞭に表示する必要がある。
こちらも上記の〈事業者の表示となるか判断される3つの項目〉の②・③に当てはまるため、規制対象となります。
〈事業者表示にあたる例〉
事業者が、インフルエンサー等の第三者に対し、経済上の利益があると言外から感じさせたり、言動から推認させたりして、第三者がその事業者の商品について表示(投稿)を行った場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.10より
また、事業者表示に該当する場合は「アンバサダー活動を満了した場合のみ製品をプレゼントする」「モニター価格で購入できる」などと経済上の利益があると明記しているしていないにかかわらず、PRは発生します。そのため、仮に明記されていなかったとしても、内々に経済的価値のある対価が払われる場合、ステマとして判断される恐れがあります。
Q7:商品の提供=タイアップ投稿ラベルとアンバサダー様にお伝えしていますが、この認識は合っていますか?
A:ご認識の通りです。
一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかなものは、告示の規制対象外となります。
〈一般消費者が事業者の表示であることが明瞭で分かる例〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.14より
「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といったSNS等で広く一般に利用されている文言による表示を行う場合 ※ただし、上記の文言を使用したとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあります。
一般ユーザーの投稿に関するステマ規制の対象と注意点
Q8:ギフティングやモニターキャンペーンでプレゼントした方の投稿を自社アカウントでストーリーシェアする際、「プレゼントさせていただきました」などの表記が必要ですか?
A:ユーザーの投稿を自社アカウントで紹介する行為は、特に記載は不要です。
一般消費者にとって事業者の表示であることが明らかなものは、規制対象外となります。
〈一般消費者が事業者の表示であることが明瞭で分かる例〉
事業者自身のウェブサイトにおける表示(特定の商品又は役務を期間限定で特集するページも含む。)を行う場合事業者自身のSNSアカウントを通じて表示を行う場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.14より
Q9:医薬部外品の歯磨き粉でモニターキャンペーンを実施予定です。SNSで当選者に感想を投稿していただきたいのですが、医薬部外品であればモニターキャンペーンということが分かれば投稿可能ですか?
A:一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかであれば投稿可能です。
モニター投稿期間や投稿回数などの事業方針に沿った投稿をする場合は事業者の表示と判断されるためわかりやすい表示が求められます。
〈事業者の表示と判断される例〉
事業者が、インフルエンサー等の第三者に対し、無償で商品提供した上でSNS投稿を依頼した結果、第三者が事業者の方針に沿った表示(投稿)内容を行った場合
事業者が、インフルエンサー等の第三者に対し、経済上の利益があると言外から感じさせたり、言動から推認させたりして、第三者がその事業者の商品について表示(投稿)を行った場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.10より
また、モニターキャンペーンではなく、SNS上での投稿キャンペーンであれば、投稿内容は第三者の自由意思に基づくものなので、事業者表示とはならないと考えられます。
〈事業者の表示とはならない例〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.11より
・第三者が、自主的な意思に基づきSNS等に表示(投稿)をする場合
・第三者が、SNS上のキャンペーンや懸賞に応募するために自主的な意思に基づき表示(投稿)を行う場合
・事業者が、試供品等の配布を行った結果、受け取った第三者が自主的な意思に基づき表示(投稿)を行う場合
PR表記に関するステマ規制の対象と注意点
Q10:Instagramの位置情報部分を「PR」と表示させることは運用方法としては問題ないですか?
A:事業者の表示が不明瞭であると解釈される可能性があります。
一般消費者からすると、あえて位置情報部分に表示していることが、「PR」であることを隠しているとみなされることもあるため、明瞭な表示が求められます。 また、多くのハッシュタグの中に「#広告」「#PR」と入れるものもステマと判断されかねません。
〈一般消費者が事業者の表示であることが不明瞭で分からないとされる例〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.13より
・事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
・一般消費者が事業者の表示であることを認識しにくい、文言・場所・大きさ・色で表示する場合(文章で表示する場合も含む。)
・事業者の表示であることを大量のハッシュタグ(#)の中に表示する場合
Q11:ハッシュタグにPRとついていても最後まで記事を読まないとPRとわからない投稿方法は、規制の対象になりますか?
A:一般消費者が事業者の表示であることがわからないものは規制対象となる場合があります。
明瞭・不明瞭の判断は、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となります。
〈一般消費者が事業者の表示であることが不明瞭で分からないとされる例〉
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.13より
・一般消費者が事業者の表示であることを認識しにくい、文言・場所・大きさ・色で表示する場合(文章で表示する場合も含む。)
・事業者の表示であることを大量のハッシュタグ(#)の中に表示する場合
Q12:タイアップ投稿タグをつけていれば #PR はつけなくても良いという認識でしたが、 #PR は必須で必要ですか?
A:事業者の表示であることが明瞭であれば、#PRは必須ではありません。
あくまで一般消費者が商品を自主的かつ合理的に選べることが目的となります。
Facebook・Instagram・TikTok各プラットフォームにブランドコンテンツポリシーについて詳細が記載されておりますので、こちらも参考にしてみてください。
〈Facebook〉ブランドコンテンツの利用事例
〈Instagram〉ブランドコンテンツポリシーについて
〈TikTok〉ブランドコンテンツポリシー
Q13:インフルエンサーの投稿に「A社様からご紹介いただきました!」「A社様オススメありがとうございます!」などと含めるだけでは、ステマ規制の対象になりますか?
A:「A社から提供をいただきました!」等のように文章による表示を行う場合は、規制対象外となります。
ただし、上記の文言を使用したとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあるため一般消費者からみてわかりやすい表示が求められます。
〈一般消費者が事業者の表示であることが明瞭で分かる例〉
「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といったSNS等で広く一般に利用されている文言による表示を行う場合 ※ただし、上記の文言を使用したとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあります。「A社から提供を受けて投稿している。」等のように文章による表示を行う場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.14より
〈一般消費者が事業者の表示であることが不明瞭で分からないとされる例〉
事業者の表示であることが全く記載されていない場合一般消費者が事業者の表示であることを認識しにくい、文言・場所・大きさ・色で表示する場合(文章で表示する場合も含む。)
事業者の表示であることを大量のハッシュタグ(#)の中に表示する場合
ー景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブックp.13より
まとめ
本記事では、10月から景品表示法違反となったステマについての規制背景・概要についてご紹介しました。また、皆さんからいただいた質問や具体的な事例を通じて理解を深めていただけましたでしょうか。
時代とともに消費行動・心理も変容しています。現代では消費者の誤認を防ぎ、事業者の表示であることを明瞭に示すことが求められます。今までと同じ手法でマーケティングを行った場合、規制対象となる場合があるので注意が必要です。 適正なマーケティングを展開するためにも、本記事の内容を参考にしてみてください。
本記事に関連する資料も無料で配布しております。ご興味ある方はぜひ下記よりダウンロードください。
ステマ規制から考えるSNSマーケの変化
本資料では、ステマ規制について概要・対策・事例をわかりやすく整理し、
どのような対応が必要になるのかをお伝えします。
プロモーション施策を考える際にぜひお役立てください。