デジタル施策に「リアルな手触り感」を与えるSNS×OOHの可能性 ~後編~

デジタル施策に「リアルな手触り感」を与えるSNS×OOHの可能性 ~後編~

前編では、昨今注目されているSNS✕OOH(屋外広告)の相乗効果について、広告・マーケティング情報を発信し続けるメディア「アドクロ」編集長・加藤誠也さんにお話を聞きました。

後編では、加藤さんとテテマーチのメンバーが興味をもったSNS✕OOHの事例を深掘りします。


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リアルとデジタルが見事に融合したOOH事例

大成芙実(ブランドグロース事業部 プロデューサー):
加藤さんは日々、さまざまなOOHを見つけてはSNSで発信していますよね。そのなかで、特に面白いと感じた事例を教えてください。

①逃げ上手の若君コンテンツ

加藤:
一つ目の事例は、2024年の夏アニメ『逃げ上手の若君』の広告です。6月9日、公式アカウントで発信された広告では主人公の北条時行が中央に掲載されています。しかし、実際に掲出されたOOHでは、時行の姿が見当たりません。

その後、公式から「渋谷駅の広告から #北条時行 が逃亡😰」という投稿が。そして、彼が渋谷のどこに逃げ込んだのかを当ててくださいというクイズが出題されました

大成:
リアルとデジタルを巧みに組み合わせた広告ですね。

②OfferBox(i-plug社)

加藤:

オファー型就活サイト「OfferBox」が掲出した広告です。「このくらいの目線が、自信に効く」というコピーが目に入ると思いますが、コピーより下の部分は真っ白です

文字を読むためには自然と顔が上がります。ネガティブになりがちな就活生に対して、上を向こうというメッセージをリアルで表現した広告です。

この広告は、企業の選考活動が解禁される6月1日に展開されました。この日は木曜日で、通常OOHは月曜日を起点に1週間のサイクルで広告が掲載されます。

ふくま(COO):
広告が掲載されたのは週の途中だと。当然、i-plug社は広告掲載していない月曜〜水曜日の分の枠も購入しているわけですよね。すごい決断だ……。

加藤:
おそらく、月曜日=5月末にこの広告を掲載してもさほど話題にはならなかったでしょう。確かなコンセプトを持って、数日分の広告掲載をしないという重い決断を下したからこそ、SNSでも大きな反響を呼んだのだと思います

③ぼっち・ざ・ろっく!

加藤:
次に紹介するのは、映画『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』の告知広告です。この広告のユニークな点は、山手線全駅に掲載されたクリエイティブがすべて異なるという点にあります

目黒駅なら「将来が暗く見える。だから『目黒』ってことですか…」
恵比寿駅なら「こんなおしゃれタウンに私がいてもいいのでしょうか…」

など、陰キャである主人公の後藤ひとり(通称・ぼっち)の目線から駅に関する感想が語られています。作品のファンの方だと思いますが、全41種のクリエイティブをすべて投稿して、多くの注目を集めていました。

ふくま:
ファンのコレクターマインドをうまく刺激した広告ですね。

アナログメディアが今注目されている4つの理由

ふくま:
非常に面白い事例ばかりでした。改めて今、屋外広告といったアナログメディアが注目されているのを理解しました。ここからは少し、広告制作側である僕たちなりに解釈している、アナログメディアのよさを話したいと思います。

アナログメディアの価値が増している理由として、コロナ禍の終焉などさまざまな意見があります。僕はもっとシンプルに、SNSの利用者が増えて投稿ハードルが下がったことが最大のポイントだと思うんです

実際、2020年から2024年にかけて、依然としてSNS利用者は増えています。SNSの普及が進んだことで起きたのは、デジタルコンテンツのコモディティ化です。SNSで何を発信しても、デジタルコンテンツという点で代わり映えはしないのではないかと考える人が、徐々に増えてきたわけです。

その一方で、屋外広告がSNSで拡散されるようになったのはなぜか。その要因として、僕は「発見感」「タイミング」「伝え方」「メディア連動表現」の4つがあると考えています。

①発見感

ふくま:
人間は、自分が最初に発見して他の人は知らないであろうことを、伝えたくなる生き物です

例えば、2020年にカルピスウォーター、カルピスソーダの夏季限定パッケージが発売されました。非常にかわいらしいイラストが印象的ですが、実は飲料を飲み干すとボトルが透明になり、登場人物同士が会話している様子が見えてくるんです。

このパッケージを考案した方は天才だと思います。実際、商品を飲んだ多くの人がその発見に驚き、次々とSNSで投稿していました。

参考:高校生の放課後をもっと面白くする「放課後『カルピス』」プロジェクト
「カルピスウォーター」・「カルピスソーダ」夏季限定デザインパッケージ登場!
豪華アーティスト・クリエーター陣が青春ソングをあつめた「放課後プレイリスト」Spotifyで公開

スマホでいつでも閲覧できるデジタルコンテンツと違い、アナログコンテンツは実際にその場所に行ったり購入したりしないと見られません。デジタルでも不可能ではありませんが、アナログのほうが、「自分だけが見つけた!」という感情を生みやすいと思います。

②タイミング

ふくま:
タイミングを説明するうえで紹介したいのは、サントリー社「伊右衛門 特茶」の電車内広告です。窓横に貼られた広告には「次の関数を組み合わせることによって、特茶の特徴を読み解け。」という文字とともに複雑な数式が掲載されています。

電車広告は、その場に留まらざるを得ないというタイミングであり、一人に対してリーチできる時間が長い媒体です。電車に乗ると、一定時間は同じ場所に拘束されて暇になってしまいがち。こうした問題を目にすると、解いてみようと思う人は多いと思います。

③伝え方

ふくま:
社会学者のマーシャル・マクルーハンは、「メディアメッセージである」という言葉を遺しています。

同じ愛の告白であっても、直接伝える、電話で伝える、LINEで伝えるなど、どの手段=メディアを用いるかで相手に伝わる本気度は変わりますよね。

それと同じで、アナログメディアという媒体を用いることで、デジタルコンテンツとは違う意味を持たせられると僕は思っているんです。

例えば、みずほリサーチ&テクノロジーズ社は「電車の中で座るための戦略とアクションプラン」という資料を、山手線の電車広告に掲出しました。(参考:みずほリサーチ&テクノロジーズによる「電車の中で座るための戦略とアクションプラン」
この資料はWeb上でも公開されています。(参考:ご乗車中の皆さま電車の中で座るための戦略とアクションプラン

この企画の面白い点は、クライアントへの企画書のようなプレゼン資料を実際に作成しているということにあります。電車広告も、資料をそのまま掲載しているんです。

加藤:
山手線全駅分の「どうやって座席に座るか」が丁寧にまとめられているんですよね。その圧倒的な作り込み度合いに、「ここまでやるか……!」と驚かされました(笑)。

ふくま:
この資料がWebページに実際に存在し、企画書としてまとめられているビジュアルを広告にするのと、そうではなくただ座る戦略が記載されているだけの広告とでは、面白さが大きく変わると思うんですよね。

④メディア連動表現

ふくま:
最後の「メディア連動表現」ですが、アナログメディアは媒体そのものを表現の一環として利用できるという面白さがあります

吉田沙保里さんを起用したエナジードリンク「HYPER ZONe」の広告も、非常にユニークだと思います。

100円分キャッシュバックキャンペーンとして展開された広告は、吉田さんが100円を地面に投げ込む様子が表現されています。そして、日本の真裏とされるブラジルに、100円玉が貫通して届いたという広告が掲出されました。

この事例のように、メディアそのものを広告表現として使用できることが、屋外広告の強みだと思います。

まとめ

2024年前半に注目されたOOHの事例と、屋外広告が改めて活用されている背景についてご紹介しました。それぞれの強みを理解したうえでチャネルを横断して施策を行うことで、より多くの消費者へ効果的にリーチすることを期待できるでしょう。

加藤さん、ありがとうございました!

テテマーチでは、SNS×OOH(マルチチャネルプロモーション)の戦略設計から実施、効果検証までご支援を行っております。お気軽にご相談ください。


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