そのアイディアでモメンタムは上がるのか?YOUTRUSTの事業活動の根底にあるたったひとつの価値基準
Date : 2025/03/27
「モメンタムの高さは、YOUTRUSTの一番の強みなんです」
日本のキャリアSNS「YOUTRUST」を運営する、株式会社YOUTRUST。マーケティング部部長の高橋綾香さんは、自社の特徴をこう表現します。
「YOUTRUST」は30万人以上のサービスユーザー数を誇りますが、会社は2022年に組織崩壊を起こし、多くのメンバーが職場を去りました。
その後、YOUTRUSTはコーポレートビジョンを「日本のモメンタム(勢いの強さ、進捗感)を上げる 偉大な会社を創る」に刷新。高いモメンタムを土台として、同社は大規模なイベントを次々と展開し、SNS上でも活発に活動しています。
それぞれの活動や、組織運営で大切していることは何なのか。弊社のエヴァンジェリストで、YOUTRUSTのコンテンツをこよなく愛する出口潤が話を伺いました。
目次
クオリティを妥協しない姿勢の裏にある想い
出口:
僕、YOUTRUSTのイベントが大好きなんですよ。今年(2025年)2月に開催された「GROWTH 祭 TOKYO 2025」も去年11月の「ユートラ文化祭」も、クオリティの高さに毎回驚かされています。
特に、「ユートラ文化祭」の屋台で出されていた豚汁が絶品で。これを食べるためだけに初日も2日目も行こうと思ったくらいです。
豚汁がまた飲みたくて、
— 出口 潤 (でぐじゅん) (@jundeguchi) November 16, 2024
明日も行くか悩み中です。#ユートラ文化祭#YOUTRUST https://t.co/h00RoVVCJF
高橋:
ありがとうございます(笑)。
出口:
YOUTRUSTは、かなり高頻度で大規模なイベントを開催していますよね。これらはすべてマーケティング部が企画しているのですか?

高橋:
マーケティング部とメディア事業部(旧広告事業部)でそれぞれ企画しています。
「ユートラ文化祭」は前者の企画で、ユーザー獲得やエンゲージメント向上を目的としていました。「GROWTH 祭 TOKYO 2025」は後者の企画で、企業様に協賛いただいて収益を出すためのイベントでした。
それぞれの企画を合わせると、月1回は何かしらのイベントを実施していることになります。
一部の大道具などの用意・制作は代理店さんに依頼していますが、それ以外はほぼすべて自社で内製化しています。
イベントに関するクリエイティブは、社内のクリエイティブディレクターを中心に決めています。昨年1月のキャリア祈願イベント「ユートラ神社2024」で使用した賽銭箱も、自分たちでレンタル会社を探しました(笑)。
出口:
何から何まで内製化しているのですね⋯⋯!その徹底した姿勢はどのような思想から生まれているんですか?
高橋:
前提として、弊社では「YOUTRUSTが世の中に広まれば日本が良くなる。そのために自分たちは働くんだ」という、会社・サービスを主語に置いて働くという意思が浸透しています。
YOUTRUSTがやりたいこと・作りたい世界に対して本気で向き合っている。このワンチーム感こそが、私たちの最大の強みなんですよね。
出口:
まさに、この記事のテーマでもある「モメンタムが高い組織」であると。
高橋:
それなのに、自社が開催するイベントや発信するコンテンツが多くの人から見て“イケてない”ものであれば、モメンタムが下がってしまいますよね。
だからこそ、「なんだかすごく楽しそう!」「行ってみたい!」「この記事すごく有益なコンテンツだな」と思える、クオリティの高い成果物をアウトプットする。この点は、マーケティングも含めて全社的に意識しています。
出口:
「そもそも良い商品を作らなければマーケティングをしても売れない」という発想ですね。思わず広げたくなる・伝えたくなることを大事にしていると。

高橋:
大手企業の場合、年末年始にテレビCMを展開していることがありますよね。あれは、実家に帰ったメンバーが「これが私の会社だ」と家族に説明できるようにという、インナーブランディングの観点も兼ねていると思うんです。
同様に、YOUTRUSTはシリーズCの資金調達を実施した昨年5月、日本経済新聞に大規模な広告を出しました。
メンバーからは「あの広告を見た家族から『あなたの会社、すごく頑張っているんだね』と連絡が来て、とても嬉しかった」というコメントがありました。
採用広報の観点だと、YOUTRUSTでは月初会など全社的な集まりで表彰されたメンバーのインタビューなどを、noteに掲載しています。
バリューの体現者が語る『ユートラストーリー』ワンチームだから挑戦できる、やりきれる| #007
メンバーのインタビューをnoteで発信しているけれど、なかなか拡散されないで終わるケースがあるじゃないですか。
出口:
書いて終わりになってしまうパターンですね。
高橋:
それを防ぐために、このコンテンツにはちょっとした仕掛けがあります。それは、受賞したメンバーがお世話になった人へのメッセージを入れること。これによって、メッセージを受けた人がSNSで拡散するという仕組みが生まれます。
このように、私たちは社内外の人々が拡散したくなる要素を入れ込むことを、とても大切にしているんです。
出口:
自己満足で終わらないように、アウトプットの質と拡散したくなる仕掛けを絶妙なバランスで保ちつつ、コンテンツを企画・展開しているのですね。
SNS活用が数字につながる。発信の鉄則は「誰も悲しませない」

出口:
YOUTRUSTの皆さんは、自社のサービスに誇りを持っているということが、今のお話でよくわかります。SNSを活用しているのも、サービスを世に広げるための当たり前の行動なのだと感じました。
Xで「#YOUTRUST」を付けて投稿したときの、反応の速さたるや…!
高橋:
YOUTRUSTという単語が投稿されたら、Slackで通知が来るようになっているんです。それを見て、いいね!や引用をおこなっています。
YOUTRUSTにとってのSNSは、仕事として取り組むべきものという認識です。実際、SNSでの拡散が事業の数字につながることも証明されています。例えば、SNSでの拡散によってMAU(1か月あたりのアクティブユーザー数)が伸びるというデータが出ているんです。
出口:
そうなんですか!?
高橋:
拡散された情報を見て、「最近YOUTRUSTを開いていなかったな」とアプリを開いてくれるユーザーは少なくありません。BtoCだけでなくBtoBでも、しっかり発信することで企業からの問い合わせにつながります。
募集情報を拡散することで応募が来て採用に至れば、ユーザーや企業も嬉しいし、良い循環が生まれます。
出口:
求人情報を掲載するだけにとどまらず、一歩踏み込んで企業やユーザーに貢献したいというコミットメントを強く感じます。
高橋:
メンバーそれぞれが、会社の目指すゴールや事業目標を自分ごと化しているから、成果にコミットできているんだと思います。
弊社はすべてのメンバー、チームが目標を達成したら事業成長ができるという当たり前のことを大切にしています。
この目標を達成できると考えています。そのため、「ユーザー獲得はマーケティング部の仕事」といったセクショナリズムを持っていません。ワンチームの精神で、自分や他のチームの達成を目指していくという姿勢があります。

ビジネスのつながりと信頼を積み重ねられるSNSを目指して
出口:
イベント施策からもSNS活用からも、YOUTRUSTが人に対して温かみのある取り組みをしていると強く感じます。
昨年12月には、SNSアプリ「YOUTRUST」内のコミュニティと交流できる「COMMUNITY TOUR」を開催していましたよね。これもすごく手間と時間、お金がかかっているなと思いました。
高橋:
「COMMUNITY TOUR」は新規ユーザー獲得のために取り組んだ施策でした。それと、アプリ内のコミュニティが活性化されれば、アクティブユーザーの増加にもつながります。
出口:
YOUTRUSTはコミュニティ運営にも力を入れているんですね。

高橋:
転職・転職意欲のない人にとって「YOUTRUST」を、どう活用していくのかを教えて欲しいというご相談をいただくことがあります。は、どう使っていいかわからない存在という側面があります。コミュニティに入ることで、同じ趣味や同業種・同職種の横のつながりを広げるという目的で活用してほしいなと考えています。
出口:
今すぐ転職したいとは考えていなくても、一般的なSNSとして当たり前に使う状態を作りたいのですね。
高橋:
はい。
YOUTRUSTを普段利用するSNSのひとつとして活用して、ビジネス上のつながりを蓄積させていく。そしてきたる日、転職意欲が生まれたときにオファーが届いて良いご縁につながる。そんなプラットフォームになってほしいなと思っているんです。
転職だけではなく、新しい仕事の依頼や協業のオファーなどの事例も生まれています。
特に20代の人々は、かつてのFacebookのようなビジネスSNSがまだ定着していません。そんな20代のビジネスパーソンがYOUTRUSTに登録して、つながりや信頼をためていく場所として、寄り添っていきたいと考えています。
出口:
僕たちのような40代以上の人間は、名刺交換したときに「Facebookでフレンド申請してもいいですか?」と聞くのが当たり前でした。YOUTRUSTがそのポジションを得られれば、間違いなく偉大な会社になりますね。
若きリーダー候補が「モメンタム局」で組織を盛り上げる

出口:
イベントやSNS、サービス展開などさまざまな事例を聞いてきましたが、いずれもモメンタムの高さが良い成果を生んでいると思います。モメンタムを高める・保ち続けることは非常に難易度が高いと思うんですが、社内でどのような取り組みをしていますか?
高橋:
特徴的な取り組みのひとつが、組織内に「モメンタム局」というチームを作っていることです。
約1年前に立ち上げられたモメンタム局は代表の岩崎直属で、全部署から次期リーダー候補となる若手が抜擢されます。メンバーは通常業務との兼務で、会社のモメンタムを上げるアウトプットを議論・実践していきます。
チームは半年の入れ替え制で、経営層が認めた若手だけが所属できるため、このチームに入ることをモチベーションにしているメンバーも多いです。
出口:
面白いチームですね。具体的にどんな取り組みをしているんですか?
高橋:
オールハンズミーティングなどメンバー全員を対象とした会議体で、どのようなコンテンツがあればみんなのモメンタムが上がるのかを話し合います。
例えば、ユニットごとのランキング・表彰でひと工夫加えたアイディアを考えます。過去にはオールスター感謝祭風の動画を制作する、ギネス記録のモチーフを活用する、競馬のようにレース風景でチームの進捗を実況するなど、さまざまなアイディアが生まれました。最後のアイディアは、競馬好きなメンバーが考えたものです(笑)。
出口:
どのアイディアも非常に面白いですし、それを許容できるカルチャーも素敵ですね。

高橋:
そのアイディアでモメンタムが上がるかどうかが、もっとも大切な基準だと思います。成績優秀なチームを表彰するとき、ただ順位を発表するのではなくちょっとした仕掛けを施すことで、メンバーのモメンタムは上がるじゃないですか。
これから社員数が増えていけば、全社的なイベントで初めて顔合わせする人も増えてくるでしょう。そんなとき、メンバーの帰属意識を高めるにはどうすればいいのかを、もっと深く考えていく必要があります。
モメンタム局にいるメンバーは、岩崎から直接この会社の方向性について話を聞けます。メンバーたちが任期を終えて各部門のリーダーになったとき、その言葉を周囲のメンバーに伝えていくことで、YOUTRUSTの信念やビジョンが伝わっていきます。
モメンタム局は、これからのYOUTRUSTの成長にとって、とても重要なポジションだと思います。
モメンタムを高めることが組織の成長につながる
出口:
高橋さんのお話を聞いていて、「モメンタムを上げる」がYOUTRUSTの活動の核心をついた言葉であることを改めて理解できました。経営層からメンバーまで、この言葉が浸透してひとつのベクトルに向かって突き進んでいるのが、YOUTRUSTという会社なんですね。
高橋:
モメンタムが高い状態であることは、YOUTRUSTの一番の強みだと思っています。
営業力を上げたり、いいプロダクトを作ったりすることももちろん大事ですが、それと同じくらい重要なことが、「組織のモメンタムが高い状態を保つ」ことだと思うんですよね。
出口:
モメンタムを高めることで、事業が継続的に成長して結果的に強い会社を作れる。これは企業・社会に対するとても大事なメッセージだと思います。
高橋:
仕事である以上、大変なこともたくさんあります。それにしっかり向き合いつつも、モメンタムを下げず、ワンチームで成果を出していくための取り組みを今後も続けていくつもりです。