ショート動画マーケティングとは?再生される動画作りと媒体選定を解説

ショート動画マーケティングとは?再生される動画作りと媒体選定を解説

年々消費量が増加し続け、広告市場においてもその存在感を強めているショート動画コンテンツ。AI技術による個別最適化や、短時間で視聴者の心をつかむ“フック”を意識したコンテンツ戦略の普及が、急成長を支えています。

本記事では、ショート動画を活用したマーケティングが注目される背景や、活用のポイント、企業事例を紹介していきます。動画の再生数を伸ばすコツについても解説しているので、動画制作にお悩みの方もぜひご覧ください。

この記事でわかること

  • ショート動画マーケティングが注目されている背景
  • ショート動画マーケティングを成功させるプラットフォーム選定と動画制作のコツ
  • ショート動画マーケティングの成功事例

 ショート動画を活用したInstagram運用戦略
 ショート動画を活用したInstagram運用戦略

ショート動画とは何か?

まずは、ショート動画の概要について、代表的なプラットフォームと共に見ていきましょう。

ショート動画の特徴

ショート動画とは、通常数秒から最大でも1分〜1分半程度の長さで構成される動画コンテンツです。スキマ時間にサクサクと視聴できるため、「タイパ」重視(※)の傾向が強まる昨今、注目が高まっています。

※タイムパフォーマンスの略称。自分にとって魅力的な情報を効率的に消費し、限られた時間内で最大の満足を得ようとする考え方

以下が代表的なプラットフォームです。

  • Instagramの「Instagramリール」
  • TikTok(通常投稿)
  • YouTubeの「YouTubeショート」

それぞれ長さの上限が異なりますが、クリエイター側の要望に応える形で、最近はどのプラットフォームも上限引き上げの動きが進んでいます。2022年にInstagramリールは最大90秒、TikTokは最大10分(TikTokで撮影する場合)に、2024年10月にはYouTubeショートも最大3分に引き上げられました。

ショート動画の定義もいずれ変化していきそうです。

なぜ今ショート動画マーケティングが注目されているのか?

主に3つの理由が考えられます。

  • 参加ハードルが低く、エンゲージメントが高まりやすい
  • Z世代を中心とした「タイパ」思考の高まり
  • TikTokによるショート動画市場の牽引

<参加ハードルが低く、エンゲージメントが高まりやすい

世界観の統一や見映えの美しさを重視する文化のあるInstagramフィードや、カットやテロップなど細かな編集が必要なYouTubeの長尺動画などとは異なり、ショート動画はラフさ、リアルさが重視される傾向があります。その尺の短さゆえに編集時間も抑えられるため、気軽に制作できるのが強みです。

また、ショート動画には、ユーザー自身がトレンドの動画を真似して撮影・投稿する「チャレンジ文化」があります。企業としては商品やサービスを絡めた企画を作りやすいだけでなく、UGCの活性化も期待できるということで期待のコンテンツなのです。

<Z世代を中心とした「タイパ」思考の高まり

インターネットやSNSの普及により、日常的に膨大な情報が流れ込む「情報過多」時代である現代は、「何に時間を使うか」の判断基準として効率性が重視されるように。ECサイトやSNSでは、効率的に自分好みの商品やコンテンツが手に入るパーソナライズ機能やレコメンド機能が浸透してきました。

若い世代は、そんな「待っていても欲しい情報が次々と手に入る」状況下で育ったため、無駄な時間を減らしたい・失敗や損をしたくないという思考がより強く、短時間で確実な結果(面白さ・発見・共感・感動etc.)を求める傾向があります。

「常にハイライト」「おいしい部分のつまみ食い」的な性質があるショート動画は、そうしたユーザー傾向とマッチしているのです。

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・Z世代マーケティングとは?新消費行動モデルEIEEBと事例で解説

<TikTokによるショート動画市場の牽引>

2017年より、日本でも若い世代を中心に使われるようになったTikTok。はじめこそ「ダンスやリップシンク動画を楽しむアプリ」という印象の強かったTikTokですが、徐々にさまざまなジャンルにおける“秒で楽しめるエンタメコンテンツ”という位置付けに。

それが昨今の「タイパ」思考に見事に合致し、2021年には「TikTok売れ」のキーワードが「2021年ヒット商品ランキング」(日経トレンディ・日経クロストレンド)でトップになるなど、購買行動に影響を与えるプラットフォームとして注目されるまでになりました。

この勢いを受け、他のプラットフォームにおいて、TikTokの「ショート動画」という投稿形式やコンテンツベースのアルゴリズム(※)を取り入れる動きが加速。結果、現状のようなショート動画の盛り上がりとなったのです。

※・・・アカウントのフォロー有無にかかわらず、コンテンツの面白さ(エンゲージメントの高さ)を基準にリーチが伸びていくアルゴリズム

実際、ショート動画が購買行動に与える影響の強さは調査にも表れています。
総合エンタテインメント会社「スターミュージック・エンタテインメント」がおこなった調査では、消費者の69.4%が「ショート動画が自身の購買行動に影響を与えている」(※)と感じていることが明らかになりました。

※「とても影響を与えている」「影響を与えている」「やや影響を与えている」の合算

ショート動画マーケティングの特徴

視覚的・感覚的な訴求力

そもそも動画は、視覚と聴覚を同時に刺激するため記憶に残りやすいという特性があります。また、視聴者は動きや音楽、ナレーションを組み合わせた映像から膨大な情報を得るため、静止画やテキストだけでは伝わりきらない感情やメッセージ、世界観までを受け取ることができます。

こうした動画を使った企業の投稿や広告は、商品やブランドに対するユーザーの理解を促し、結果としてブランドと視聴者との強い結びつきを生むのです。

短時間で情報を伝えられる

長尺動画では物語性や詳細な説明が重視され、商品やサービスの背景を深く伝えることに向いていますが、その分視聴者にはある程度の時間確保・拘束を要します。

一方、ショート動画は視覚的・感覚的に訴求することで、商品やサービスの「最も重要なメッセージ」を数秒から数十秒で伝えることが可能。この簡潔さが、時間的余裕のない現代の消費者に響きやすいのです。

さらに、ショート動画のフォーマット自体が広告に適している点も見逃せません。例えば、ショート動画はその短尺性からメッセージの絞り込みを強制します。よって制作側は「何を伝えるべきか」を明確にし、冗長性を排除したクリエイティブを作る傾向があります。こうした構造的な特性が、ブランドの価値や商品の特徴を効率的に視聴者に届ける要因となっているのです。

また、ショート動画プラットフォームのアルゴリズムの多くは“短時間でのエンゲージメント”を促進する設計になっているため、コンテンツがユーザーの目に触れる機会が増加します。短時間で情報を伝える能力と拡散性を兼ね備えたショート動画は、広告のROI(投資対効果)を最大化できる形態と言えるでしょう。

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ショート動画のメリット・デメリット

ここからは、企業から見たショート動画のメリットとデメリットを解説します。

メリット

  • 制作の簡易性とコスト効率
  • クロスプラットフォームでの汎用性
  • 視聴完了率の高さ

やはりメリットとして大きいのが、長尺動画よりも簡単に作れること。InstagramリールやTikTokなどの場合、スマートフォン1台で制作できるケースも多く、企業にとって初期参入のハードルが低い点が魅力です。また、動画を1分程度に収めれば、TikTok、Instagramリール、YouTubeショートといった異なるプラットフォーム間での使い回しが可能。こうした効率の良さもショート動画のメリットです。

デメリット

  • より購買につなげるにはスキルや専門知識を要すること
  • 詳細な情報伝達には不向きであること

気軽に制作できる点がショート動画のメリットですが、より“売れる動画”を作るには編集テクニックやSNSマーケティングの知見が不可欠です。ユーザーにどう届けるか、どのプラットフォームで拡散させるかといった戦略も必要になってきます。

ショート動画マーケティングを成功させるには

ショート動画は、ユーザーとの初期接点をつくる手段として、さらには購買を促す手段として有効であることがわかりました。しかし、マーケティングにおいて最大限の効果を発揮するにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。

  • ターゲット・商材ジャンルに合ったプラットフォーム選定
  • “フック”を意識した動画を作ること
  • トレンドを活用すること

ターゲット・商材ジャンルに合ったプラットフォーム選定

弊社が電通マクロミルインサイト様とおこなった、10代~50代の合計2000人を対象とした共同調査では、プラットフォームごとにユーザーの特性が少しずつ異なること、“相性の良い商材ジャンル”が存在することが明らかになりました。

例えばInstagramの場合、全年代において男性よりも女性の利用率が高く
TikTokの場合、30代・40代においては女性よりも男性の方が利用率が高いという特性がみられます。

【Instagram】性年代別・SNS利用率(n=2000)
男性10代:83%
男性20代:80.5%
男性30代:71.5%
男性40代:55.5%
男性50代:57.5%
女性10代:95%
女性20代:93%
女性30代:87%
女性40代:78.5%
女性50代:69.5%
【TikTok】性年代別・SNS利用率(n=2000)
男性10代:66%
男性20代:48.5%
男性30代:43.5%
男性40代:33%
男性50代:26.5%
女性10代:76%
女性20代:57.5%
女性30代:34%
女性40代:24%
女性50代:26.5%

※設問「以下のSNSサービスについて、あなたはどのくらいの頻度で利用(閲覧・投稿)しますか(SA)」(スクリーニング調査)において、「利用(閲覧・投稿)はしない」以外の回答をまとめた結果をグラフ化

また、商品・サービスに対するInstagramの影響力を商材ジャンル別で見たところ、認知段階では男女ともに「化粧品」「ファッション関連」「外食店舗」に対する影響力が強くなっていることが明らかに。

■商品・サービス認知に与えるInstagramの影響度(性年代別で利用率最多の10代データを表示)

【Instagram/認知】商材ジャンル別|10代への影響度
化粧品:男性28.9%、女性61.4%
飲料:男性19.3%、女性24.5%
食料品:男性17.2%、女性44.3%
日用品:男性16.9%、女性35.9%
ファッション関連:男性32.4%、女性61.6%
ゲーム/玩具:男性17.3%、女性21.4%
旅行商品:男性16.7%、女性27.1%
オンラインサービス:男性23.3%、女性37.3%
小売店舗:男性18.3%、女性34.6%
外食店舗:男性27.2%、女性42.9%
デジタルガジェット:男性15.5%、女性22.0%
設問「次の商品・サービスについて、あなたが知らなかった商品やサービスを知る・見つけることがある情報源はどれですか(MA)」(基数:各商品・サービス関与者)に対して、「Instagram」と回答した割合

一方、商品・サービスに対するTikTokの影響力を商材ジャンル別で見たところ、

女性において「化粧品」「ファッション関連」への影響力が強くなる傾向がInstagramと共通していました。しかし「ゲーム/玩具」への影響力は、TikTokの方がわずかに強いという結果に(※)。

また、TikTokはダンスやコント、ショートドラマ、ショートフィルムなど、エンタメ性の高さが重視されるプラットフォーム。ユニークな切り口でコンテンツを作りやすいという点で、「ゲーム/玩具」とも相性が良いのでしょう。

※・・・「認知」段階においてInstagramは21.4%・TikTokは26.9%(5.5ポイント差)

■商品・サービス認知に与えるTikTokの影響度(性年代別で利用率最多の10代データを表示)

【TikTok/認知】商材ジャンル別|10代への影響度
化粧品:男性20.7%、女性47.8%
飲料:男性14.7%、女性17.7%
食料品:男性17.2%、女性25.0%
日用品:男性17.2%、女性25.0%
ファッション関連:男性24.2%、女性43.7%
ゲーム/玩具:男性19.0%、女性26.9%
旅行商品:男性18.1%、女性24.8%
オンラインサービス:男性23.3%、女性37.3%
小売店舗:男性15.6%、女性24.9%
外食店舗:男性16.4%、女性29.6%
デジタルガジェット:男性16.2%、女性22.0%
設問「次の商品・サービスについて、あなたが知らなかった商品やサービスを知る・見つけることがある情報源はどれですか(MA)」(基数:各商品・サービス関与者)に対して、「TikTok」と回答した割合

それぞれの違いを理解した上で、自社に合ったプラットフォーム選定をすることが重要です。複数使用する場合でも、最も注力するプラットフォームを選定しておくことをおすすめします。

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“フック”を意識した動画を作ること

TikTokやInstagramリールは、動画をスワイプするだけで簡単にスキップできてしまうため、そのコンテンツが面白くないと判断されれば、すぐに離脱されてしまいます。

その判断に要する時間として言われているのが、わずか冒頭0.5秒~3秒。

したがって、冒頭の数秒間の部分に、視聴者の心を掴むフックを入れることが重要です。キャッチーな音楽や効果音、インパクトのあるビジュアル、ターゲットへの呼びかけといった、つい手を止めてしまうような仕掛けが効果的でしょう。

トレンドを活用すること

プラットフォーム上のトレンドを積極的に活用することで、リーチを最大化することが可能です。

前述した通り、ショート動画には、インフルエンサーなどが発端となったトレンドの動画を、一般ユーザーが真似して撮影・投稿する「チャレンジ文化」があります。こうしたチャレンジ企画や、チャレンジに使われている流行のハッシュタグに参加することで、自然とアルゴリズムに乗りやすくなり、より多くのユーザーにコンテンツを届けることができるのです。

また、自社商品やサービスを絡めたオリジナルのハッシュタグチャレンジを企画することでUGCを促進し、拡散効果を高めることもできます。ただしトレンドを取り入れる際は、自社ブランドとの親和性を考慮することも念頭に置いておきましょう。

成功事例

ここからは、企業のショート動画活用事例を紹介していきます。

Zomato(ゾマト)

  • 「食事」に関連したユーモラスなショート動画
  • エンタメ性の高いコンテンツ作りが新規顧客拡大のみならず既存顧客との関係維持にも寄与

2008年に創業されたインド発のフードデリバリーサービス、Zomato(ゾマト)。2021年に上場を果たすなど、著しい成長を遂げていますが、その成功の背景にはTikTokやInstagramリールなどの、ショート動画プラットフォームの積極的な活用があります。

調査分析を通して、自社のターゲットユーザー層の多くがZ世代で構成されていることを把握したZomatoは、エンターテインメント性を重視したコンテンツ作りに注力し始めました。

コンテンツはいずれも「食事」をテーマとしながらも、ネットミームを取り入れた親しみやすいコンテンツから、ジョークを織り交ぜたユーモラスなコンテンツ、インフルエンサーとのコラボコンテンツ、見応えのあるショートドラマまで多岐に渡ります。

良い意味で“企業アカウントらしくない”コンテンツは順調にリーチを伸ばし、結果、ブランド認知を広げるだけでなく、ブランドリテンションとしても効果を生み出しました

ニトリ

  • インフルエンサーによるTikTokショート動画
  • 静止画のみでは魅力が伝わりづらい商品を、インフルエンサー独自の視点で紹介
  • 若年層の来店数が施策実施前比で2倍に上昇
@luna___room___

春から新生活のみんな、寝具はもう決めた? 寝具って入居初日に絶対必要だから、ラクに受け取れてすぐに使えるマットレスが便利! ニトリのシングルマットレス(ZERO EM)チェックしてみてね🙆‍♀️ #一人暮らし #ニトリ #新生活 #pr

♬ U MAKE ME GO – Who’s That Girl?

日本全国にチェーン展開する大手家具/インテリア商品小売業、ニトリ株式会社。新生活に向けた買い揃え需要が高まる3月に合わせ、インフルエンサーを活用したショート動画マーケティングを実施しました。

その内容は、持ち帰りできる「シングルマットレス(ZEROEM)」、勉強や仕事に使える机「デスクプレフェセット」、冷蔵庫やキッチンなど磁石がつく場所で役立つ「マグネットスパイスラック」など、静止画のみでは良さが伝わりにくい商品を中心に、インフルエンサーに使用してもらい、そのリアルな使用感や活用ポイントを動画で紹介してもらうというもの。

特に、静止画のみでは商品の特長を伝えきれないのがマットレスです。

その点、インフルエンサーの動画では、圧縮パッケージのマットレスを開封し、空気が入り膨らんでいく様子、ポケットコイルのフィット感から、ゴミの分別方法までもを公開。身近なインフルエンサーというフィルターを通じて自分ごと化できるように仕上げられています。

リアル感や“ゆるさ”が好まれるプラットフォームであるTikTokを上手く活用した、ショート動画マーケティングの成功事例だと言えるでしょう。

なお、動画広告の配信期間中における、ニトリ店舗での購入者アンケートによると、若年層の来店数が「TikTok」によって、実施前比で2倍に上昇したとのことです。

トイザらス

  • ターゲット層に合致したプラットフォーム選び
  • ただの商品紹介にとどまらない、ループ再生を誘うショート動画

国内最大級の品揃えを誇るおもちゃメーカー・トイザらス。子どもとその親世代がターゲット層である同社は、「YouTube Kids」を使う子どもから、親世代、さらには孫を持つシニア世代まで、幅広いユーザーを誇るYouTubeでのコンテンツ発信に注力してきました。

YouTubeショートにも積極的で、中でも再生数が多かったのが2024年2月6日に配信された、おもちゃを使ったマジック動画。

わかりやすい「商品紹介動画」であるというだけでなく、マジックの手際の良さについ見入ってしまう、中毒性の高い動画になっています。この動画は、結果として視聴者のループ再生を誘い、約2.2億回もの再生回数を記録しました。

まとめ

本記事では、ショート動画マーケティングの概要からその背景、成功に向けたポイント、企業事例までを紹介しました。

今後、さらに収益化が進んでいくことが予想されるショート動画。ショート動画広告の市場規模は、2024年末までに990億ドル以上の収益を上げると予想されています。

本記事で解説したポイントを参考に、ぜひショート動画マーケティングを自社に取り入れてみてください。

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