3社に1社は導入意欲あり!176社に聞いた「TikTok Shopの認知・導入意向調査」から見えるTikTok Shopの可能性
ショート動画プラットフォームとして若年層を中心に絶大な人気を誇るTikTok。その影響力は、エンターテイメントの枠を超え、情報収集や購買行動にまで及んでいます。
そんなTikTokのアプリ内で商品を購入できるEC機能「TikTok Shop」が、いよいよ日本に上陸するとのことで、大きな注目を集めています。2021年にインドネシアで始まったTikTok Shopは、2024年には世界での流通取引総額が5兆円を突破したとも言われています。
この新たな潮流に対し、日本国内の小売業および直販を行うメーカーの担当者はどのような期待を寄せ、どのような懸念を感じているのでしょうか。
本記事では、サキダチラボが実施した「TikTok Shopの認知・導入意向に関するアンケート調査」の結果をもとに、国内市場におけるTikTok Shopの可能性と、企業が今すべきことについて解説します。
目次
はじめに:TikTok Shopとは?
TikTok Shopとは、ショート動画やライブ配信を見ている最中に、気になった商品をアプリ内で直接購入できるEコマース機能です。「なんとなく見ていたら欲しくなった」という潜在的なニーズを掘り起こし、衝動的な購買へとシームレスに導きます。
そのため、新たな販売チャネルやマーケティング手法として大きな期待が寄せられています。しかし、まだ国内向けの公式情報が少なく、多くの企業は導入を検討するための情報収集を行っている段階と言えます。
調査概要
今回の調査は、日本国内におけるTikTokとライブコマースの活用状況、そして来るTikTok Shopに対する認知や導入意向を把握し、国内市場におけるTikTok Shopの可能性を探ることを目的に実施しました。
- 調査名:TikTok Shopの認知・導入意向に関するアンケート調査
- 調査目的:TikTok Shopの認知度・導入意向、ならびにTikTokとライブコマースの活用状況を把握し、国内市場におけるTikTok Shopの可能性を探るため
- 調査対象:テテマーチとつながりのあるお客様のうち、国内の「小売業(リテール)」および「消費者への直販を行うメーカー」の担当者
- 調査期間:2025年5月8日〜5月16日
- 調査方法:Microsoft Formsを用いたアンケート調査(テテマーチのメールマガジン経由での回答収集)
- 有効回答数:176社
今回、本アンケート調査にご協力いただいた回答者の属性は、以下の通りです。

調査結果サマリー
国内の小売業および直販を行うメーカーの担当者176名を対象とした本調査の結果、以下の実態が明らかになりました。

調査結果から見えたTikTok Shopへのリアルな声
TikTok Shopの認知度と導入意向
はじめに、TikTok Shopの日本展開が、企業担当者にどの程度認知されているのかを見ていきましょう。
調査結果によると、「知っている」と回答した企業は34.1%、「聞いたことがある程度」と回答した企業は26.1%でした。これらを合わせると、約6割(60.2%)の企業が日本でのサービス展開を何らかの形で認知していることが分かります。
しかし、「知らない」と回答した企業も39.8%存在しており、まだ広く浸透しているとは言えない状況です。

次に、TikTok Shopが日本で提供された場合の導入意向を尋ねたところ、「情報収集してから判断したい」という回答が52.8%と最も多く、過半数を占めました。このことから、多くの企業が具体的なサービス内容や市場の動向を見極めた上で、慎重に導入の是非を判断しようとしていることが伺えます。
一方で、「導入する」(10.2%)と「導入を検討したい」(23.3%)を合わせると33.5%となり、約3分の1の企業が導入に対して前向きな姿勢を示していることも明らかになりました。

「TikTok活用状況」と「TikTok Shop導入意向」の関係性
では、現在どのくらいの企業がマーケティング・コミュニケーション活動にTikTokを活用しているのでしょうか。
本調査によると、その割合は37.5%でした。

そして、このTikTokの活用状況が、TikTok Shopの導入意向にどう影響しているかを見ると、興味深い傾向が明らかになりました。
現在TikTokを活用している企業のうち、TikTok Shopを「導入する」または「導入を検討したい」と回答した企業の割合は45.5%でした。これに対し、TikTokを活用していない企業では、同回答の割合は26.4%にとどまりました。
この結果から、既にTikTokを活用し、その特性や効果を理解している企業ほど、TikTok Shopの導入をより積極的に検討していると言えます。

しかし、現在TikTokを活用している企業にも課題は少なくありません。最も多くの企業が課題として挙げたのは「TikTokに関する知見・ノウハウ不足」で、回答企業の60.6%を占めました。次いで、「効果検証が難しい、分析が不十分」(47.0%)、「コンテンツ制作のリソース(人手・時間)不足」(40.9%)といった運用面の課題が続きました。

「ライブコマース活用状況」と「TikTok Shop導入意向」の関係性
TikTok Shopの機能の一つとして注目されるのがライブコマースです。本調査によると、過去にライブコマースを実施したことがある企業は25.0%でした。(ライブコマースを実施したプラットフォームは問いません)

そして、ライブコマースの実施経験も、TikTok Shopの導入意向に影響を与えているようです。
ライブコマースを実施したことがある企業のうち、「導入する」または「導入を検討したい」と回答した企業の割合は40.9%でした。一方、ライブコマースを実施したことがない企業では、同回答の割合は31.1%でした。
また、特筆すべきは、ライブコマースを実施したことがある企業において、TikTok Shopを「導入するつもりはない」という否定的な回答がまったく見られなかったことです。
このことから、ライブコマースの実施経験を持つ企業は、TikTok Shopとの親和性を感じ、導入に前向きな姿勢を示していると考えられます。

ライブコマースを実施したことがある企業が抱える課題として、最も多かったのは「出演者(ライバー)の不足・育成」で48.0%でした。次いで、「集客できない、視聴者数が伸びない」(44.0%)、「準備や実施に時間・手間がかかる」(40.0%)といった配信体制の構築と実行面に関する課題が上位を占めました。

TikTok Shop導入に前向きな企業の特徴(商材カテゴリ・価格帯・ターゲット顧客別分析)
続いて、どのような商材を扱う企業がTikTok Shopの導入に前向きなのかを把握するため、回答企業の「TikTok Shop導入意向」をもとに「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」の3つのグループに分類して分析しました。
- ポジティブ:「導入する」または「導入を検討したい」と回答し、TikTok Shopの導入に積極的な企業
- ニュートラル:「情報収集してから判断したい」と回答し、現時点ではTikTok Shopの導入に慎重な姿勢を示す企業
- ネガティブ:「導入にはあまり前向きではない」または「導入するつもりはない」と回答し、TikTok Shopの導入に消極的な企業

この3つのグループに基づいて、回答企業が扱う商材の「カテゴリ」や「価格帯」、「ターゲット顧客」といった特徴ごとに、TikTok Shopの導入意向に違いがあるのかを見ていきます。
【商材カテゴリ別】

上のグラフにおいて、回答企業数が比較的多いカテゴリを見てみると、「ファッション・ファッション雑貨」と「コスメ・美容・ヘアケア」では、TikTok Shopの導入に積極的な「ポジティブ層」(「導入する」または「導入を検討したい」と回答した企業)の割合がそれぞれ4割を超えており、一定の関心の高さが伺えます。
一方で、「食品・飲料・酒類」と「日用品・雑貨」では、ポジティブ層の割合が低い傾向が見られました。
【価格帯別】

回答企業が扱う商材の価格帯は「1,000円から10,000円未満」がボリュームゾーンとなっており、この範囲内では価格帯が上がるにつれてTikTok Shopの導入に積極的な傾向が見られました。
また、1,000円未満の低価格帯では利益率などを考慮してか慎重な企業が多く、10万円以上の高価格帯でもTikTok Shopとの相性への懸念からか導入に消極的な企業が多いようです。
【ターゲット顧客別】

回答企業の多くがターゲットとする20〜40代女性のうち、特に「20〜34歳女性」をターゲットとする企業では、TikTok Shopの導入に前向きなポジティブ層が多い傾向にあります。これは、TikTokの主要ユーザー層との親和性を考慮した結果とも考えられます。
企業がTikTok Shop導入時に重視する点・期待・懸念
それでは、企業が実際にTikTok Shopの導入を検討する際、どのような点を重視するのでしょうか。
調査の結果、最も多かった回答は「導入・運用にかかる費用(初期費用、販売手数料など)」で、77.3%を占めました。次いで、「ユーザー体験(購入までの流れ、商品の見せ方)」(57.4%)、「管理・分析機能(商品・顧客管理、売上分析など)」(56.8%)、「カート・決済機能(利用できる決済手段)」(42.0%)と続きました。
このように、多くの企業が導入コストを第一に考えながらも、サービスの基本的な機能やその使いやすさを導入の判断基準にしていることが伺えます。

また、本調査にご協力いただいた企業担当者からは、TikTok Shopに対して以下のような期待と懸念の声が寄せられました。

期待の声の中でも特に多かったのが、「新しい販路」としての可能性です。TikTok Shopでは、主に以下4つの経路で商品を販売することができます。
- 自社による販売(企業アカウントの運用)
- 1. 企業アカウントのショート動画
- 2. 企業アカウントのライブ配信
- クリエイターによる販売(アフィリエイトプログラム)
- 3. クリエイターアカウントのショート動画
- 4. クリエイターアカウントのライブ配信
なかでも、クリエイターが商品を紹介するアフィリエイトプログラムは、従来のSNSプラットフォームにはない新しい仕組みのため、企業からの期待が高まっています。ただし、アフィリエイトプログラムは一般的に、多くのフォロワーを抱えるトップクリエイターではなく、比較的小規模なマイクロクリエイターが中心となる傾向にあります。
そのため、ブランド価値を維持・向上させるためには、アフィリエイトだけに頼らず、影響力の大きいクリエイターとのタイアップなど、他の施策とバランス良く組み合わせることが成功の鍵となるでしょう。
一方で、TikTok Shopは国内向けの詳しい情報がまだ少なく、企業の期待と実際の仕様との間にギャップが生じているようです。例えば、多くの企業が「越境EC(海外ユーザーへの販売)」に期待を寄せていますが、今のところ国内でのショップ展開に限定される見込みとなっています。
まとめ:国内市場におけるTikTok Shopの可能性と、企業が今すべきこと
今回の調査より、既にTikTokとライブコマースを活用している企業ほど、TikTok Shopの導入意向が高いことが明らかになりました。
これは、そうした企業がTikTokの集客力やエンゲージメントの高さ、ライブコマースの販売力を実感しており、TikTok Shopのポテンシャルをより具体的に評価できているためだと考えられます。

しかし、TikTok Shopが日本市場でその可能性を最大限に発揮するには、多くの企業が直面しているTikTok活用における「知見・ノウハウ不足」や、ライブコマース実施における「出演者(ライバー)の不足・育成」といった課題の解決が不可欠です。
そのため、今後TikTok Shopの導入を検討する企業は、第一にTikTokとライブコマースそのものへの理解を深め、自社での活用方法や必要なノウハウ、体制を検討することが重要です。
まずは、TikTokでのコンテンツ発信や広告運用をスモールスタートで試しながら、自社ブランドや商品との相性を見極めましょう。プラットフォームの特性を理解し、どのような訴求がユーザーの心に響くか手応えを感じられたら、次のステップとしてショップへの送客やライブコマースへ展開していくのが効果的です。
TikTok Shopは、日本のEC市場に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。この変化の波をビジネスチャンスへとつなげるためには、自社が保有するSNSやECデータを活用し、いかに早く有効な活用方法を見つけ出せるかが、成功の鍵となるでしょう。
本調査の詳細レポートは、以下からダウンロードいただけます。マーケティング戦略を考えるヒントとしてぜひお役立てください。