リアルとデジタルの両輪で信頼関係を構築する。SNSが購買行動に与える本当の影響とは?

リアルとデジタルの両輪で信頼関係を構築する。SNSが購買行動に与える本当の影響とは?

Date : 2021/12/21

スマートフォンの普及、SNSの台頭、動画配信サービス、LINEなどのコミュニケーションツールの発展を通して、私たちを取り巻くコミュニケーション環境は大きく変化しました。

そんな新時代のコミュニケーションのあり方を考えるべく、この度、弊社では「Social談」として二日間に渡る大規模なオンラインイベントを開催。さまざまな分野で活躍される有識者やクリエイターお呼びして談義する機会を設けました。

オープニングトークを含めて開催したのは全8セッション。それらの開催レポートを、スペシャルコンテンツとして順次配信して参ります。

さて、最初にお届けするセッションは「データから見る、SNSが購買意欲に与える本当の影響」。

企業がSNSマーケティングへ投資する予算が増加傾向にある中、それらのマーケティング活動が実際に購買に寄与しているのかという「実利貢献度」はこれまで明確に示されていませんでした。SNSが生活者にもたらす影響および、企業のマーケティング活動への実利貢献度を解明するために立ち上げた研究チームがテテマーチの「サキダチラボ」です。

今年、サキダチラボと株式会社スノーピークが実施した協業調査からわかったSNSの実利貢献について初公開。その内容を解説します。

【登壇者】

「オフィシャルアカウント」と「店舗アカウント」に役割を持たせて効果的に運用

松重:テテマーチの松重と申します。本日はよろしくお願いします。

長田:スノーピークの長田です。よろしくお願いします。

松重:早速なんですけれども、今日はスノーピークさんが考えるSNSとの向き合い方についてお話をお伺いできればと思っております。長田さん、まず会社のご紹介を簡単にいただいてもよろしいですか?

長田:ありがとうございます。スノーピークは、新潟県の燕三条発のアウトドアブランドです。主力事業としてはキャンプ用品の販売ですが、ただ単純に物を売るのではなく、野遊び(キャンプ)を中心とした自然指向のライフバリューの提案を行っています。ITの進化やSNSの急激な普及など文明が進化することによって、本来重要な「人間性」が失われているのではとスノーピークは考えています。

そこで、自然とのかかわりをもっと持ってもらい、人間らしさを回復してもらえたらと思っています。現在では、キャンプ用品だけでなく、アパレル(衣)やレストラン(食)など「衣食住働遊」というフィールドへと事業を拡げています。

松重:コロナ禍という厳しい状況の中でも、売上がとても伸びていらっしゃいますよね。どのような点に重きを置いて事業に取り組んでいらっしゃるのかお伺いしたいです。

長田:一番意識しているのは、お客様との繋がりでしょうか。緊急事態宣言などがあって外に出られない日々がありましたが、オンラインで行える取り組みを考えて実施していたのが数字として表れているのかなと思います。

松重:なるほど。特に、Instagramは今すごく注力されているコミュニケーションチャネルの一つだと伺っております。ブランドアカウントに注力される企業様はたくさんいらっしゃいますが、スノーピークさんではブランドのオフィシャルアカウント以外の店舗アカウントも活用してシナジーを生みだしていますよね。

長田:そうですね。我々はSNSをプロモーションの目的ではなくお客様とのつながりを作るために使っているんです。スノーピークはもともとオフラインのイベントに力を入れて展開しており、そういった繋がりを日常の中でもしっかりと築いていきたいなと。

そう考えたとき、オフィシャルアカウントだけではなく店舗のアカウントを活性化することでエンゲージメントを高めたいと考えています。

Instagramで店舗情報を調べる顧客のLTVは高くなる

松重:今回、この一年間ぐらいSNSが与えるビジネスへの実利貢献調査をスノーピークさんと共に行ってきました。僕たちもスノーピークさんも、SNSを通した売上貢献の調査に初めて向き合って、どうすればちゃんと成果が出せるのかと調査方法から模索しましたね。

長田:最初はいきなりデータを見て相関の有無を見つけようとしていましたが、莫大なデータからなかなかうまく見つけられず苦戦しました。

松重:初期は何の相関もないのかと血の気が引くような思いでしたが、諦めずに調査を続けることで見える結果がありました。具体的には、まずスノーピークさんから顧客のカスタマージャーニーをまとめてご提供いただきまして、顧客がどのような経路をたどって購入に至るのかと理解を深めました。

その上で、それぞれのカスタマージャーニーをInstagramで追うとしたらどの指標になるのかと仮説を立てて、相関を見つけていきましたね。約10ヶ月ほどの調査でしたが、調査を行ってみて感じたことはありましたか?

長田:データには説得力がありますが、直接結果と結びつけようとすると大変だと感じました。スノーピークでは日々店舗で来店理由などのアンケートを取っているのですが、そういった細かな取り組みを踏まえて分析しないと正しい答えは見えてこないのだなと。ただデータを見て分析するだけではあまり意味がないのだと知りました。

松重:そういった意味では、スノーピークさんが顧客のデータをきれいに整理されていたので、とても驚きました。

今回の調査を通してわかったことはさまざまありますが、今日は中でも大切なことを3つピックアップしてご紹介します。

まず一つ目は「Instagramで店舗情報を調べる顧客は、調べない顧客よりもLTVが高いこと」。Instagramで店舗を調べる顧客は調べない顧客よりも年間の購入金額が25%高く、購入頻度も26%高いという結果でした。

しかも、Instagramで店舗情報を調べる際には、ブランドのオフィシャルアカウントではなく店舗のアカウントを参照するケースが非常に多かったんです。スノーピークさんがしっかりと下地を作っていた店舗アカウントがすごく効果を発揮していました。こういった結果を見て長田さんはどのように感じられましたか?

長田:店舗のスタッフが頑張ってくれた成果が出ているなと思います。ブランドアカウントとというとしっかり撮影していたりちょっと堅めの投稿が一般的ですが、店舗のアカウントだからこそスタッフのナチュラルな投稿を数多くお届けできました。「こんなイベントに参加してきました!」のような、親しみやすい投稿が多かったので、ユーザーさんから見てもエンゲージメントの高いものになったのかなと思います。

松重:たしかにInstagramでブランドの世界観を統一するのは第一ステップとして僕たちもおすすめしています。ただ、それと同じくらい中の人の人間味や温かみを表現するのも大切。そういったことをオフィシャルアカウントから草分けした店舗アカウントで行えたことで、ユーザーさんとの距離も近くなり、すごく良い結果をもたらしていますよね。

Instagramアカウントの活性化によって店舗売上に影響が表れた

松重:続いて二つ目の調査結果です。「Instagramを効果的に運用する店舗では、売上の20%がSNS起因のものであること」。ここで大切なのは、Instagramのアカウントを持っているだけではなくアカウントを活性化させる状態が必要だということです。成果につながっている店舗のInstagramでは、投稿数やフォロワーとのコミュニケーション量が多く、同様にエンゲージメントも高い結果が得られているんです。

長田:うちの場合だと、アカウントの活性化がうまくいっている店舗では名物店長がいたり、スタッフが投稿内に登場することが多い傾向にありました。本来、キャンプグッズは商品が大きくて重いので、近隣店舗で購入したいニーズが多いんです。ですので、その近所のお店のアカウントで楽しい情報やためになる情報が発信されているのかどうかを見てくださるユーザーさんが増えているのかなと感じますね。

松重:この分析で面白かったのは、売上につながる要素はフォロワー数ではなく、フォロワーとの関係構築面にあったこと。しっかりコミュニケーションを取っているアカウントは特に売上にもつながっていることがわかりました。

もともと海外ではアパレルなどでカリスマ店員さんの影響でブランドの売上が伸びる例が多かったんですが、その流れが国内にもやってきているなと感じます。ただ一方で、スタッフさんの転職や異動などのリスクヘッジをしたいという声も多い。僕らもそういった観点で企業様からご相談をいただくことがありますが、その答えがスノーピークさんのような店舗ごとのチーム運用にあるのかなと感じました。

一人のスタッフというだけではなく、店舗にファンを付ける運用を目指すことで、再現性もありますし持続可能な運用にもなるのかなと思います。

UGCの量と質の把握によって顧客のニーズや流入を正しく知るきっかけに

松重:最後に三つ目の調査結果です。「UGCの発生によって、検索エンジン上の指名検索が増加してオーガニックの流入が増えること。さらに、効果的に創客するためにはUGCの内容も重要であること」。

スノーピークさんのInstagram上でのUGC投稿件数とECサイトのセッション数の相関を調査しましたが、明らかな相関関係がありました。祝日や土日などのセッション数が上ぶれる日を除いての調査結果ですが、相関係数0.61とかなり高い数値が出ました。

また、面白いことに「テント」にまつわるUGCが増えると「タープ」が売れるという関係性も見えました。長田さん、これはどういった状況なのでしょうか?

長田:アウトドアやキャンプに興味のある方ならイメージが沸きやすいと思うのですが、キャンプをするときのレイアウトに興味関心が集まっている結果なのかなと感じました。テントってあくまでキャンプでいう「寝室」の役割なんですね。僕たちが日頃、家で生活するときって寝室もさながらリビングやキッチンの質がとても重要です。

それと同じで、ベッドルームを求めてテントを調べるときって、次に考えるのはリビングやキッチンであり、キャンプでいうとそれは「タープ」に当たる。その結果として、テントとタープというキーワードに相関関係があるのかなと思います。

松重:こういうのってブランドさんと一緒に調査するからこそ納得感のある解が得られますよね。僕らだけで調査していたらきっと迷宮入りでした(笑)。

また、もう一つデータとして「ごはん」にまつわるUGCが増えると「調理器具」の関連ページにアクセスが集まる。これは想起しやすい結果かなと思いましたが、長田さんはいかがでしょうか。

長田:これも結果だけでアウトドアのストーリーが読める結果だなと感じました。特に面白いのは「コーヒー」「焚き火」「ホットサンド」などのUGC。焚き火を見ながらコーヒーを飲んで、朝食にはホットサンドを食べる……みたいなストーリーがUGCから見えますよね。

こういったキーワードでUGCを投稿するユーザーさんが理想のアウトドアシーンを思い描いて調理器具を見にECサイトを訪れる流れがあるのだなと思いますし、それらがデータからも見えるのが面白いと感じました。

松重:スノーピークさんの展開するブランドは決して安くはない商品展開をされているので、お客様もリッチでありアーバンアウトドアを理想としていらっしゃる傾向にある。結果として、アウトドア体験をより良いものにしたいとモチベーションが働いているのかもしれませんね。

今回の調査では、売上ではなくアクセスまでの言及でしたが、Instagramの運用によって顧客の興味関心を知ることができるのはとても有意義な体験でした。

まとめると、以前からSNSマーケティングの文脈でよく語られているUGCの重要性は今回の結果からもわかるものでしたが、特に量と質はそれぞれ重要な指標だという気づきが得られました。

マーケティングのためのInstagramではなく、顧客のためのInstagram

松重:スノーピークさんでは店舗アカウントやUGC創出によってコロナ禍においても右肩上がりでの成長を続けています。ただ、Instagramのみの影響ではなく、あくまでも日々の店舗での接客やこれまで開催してきたオフラインイベント、メルマガ活動などがあってこその結果。

それを踏まえて、最後にリアルとデジタルでのエンゲージメント活動がどのように相乗効果を生み出すのか。その点について、スノーピークさんの考え方もお伺いできればと思います。

長田:正直ベースの話をすると、弊社ではマーケティングを基本的にやっていないですし、そういった部署も無いんです。今回の調査ではマーケティングが成功しているような結果として見えていますが、もともとはコロナ禍で外出できないお客様と我々の絆をどのようにキープするのか考えて行った行動がもたらしたもの。

お客様に自宅でも楽しんでもらう機会をなにか作りたいと考えて、Instagramやその他YouTubeなどのツールを選んだに過ぎないのです。もともとはオフラインで開催していたイベントをオンラインにコンバートしたイメージですね。

ですので、基本的にはリアルでもデジタルでも変わらず、お客様目線に立って楽しめるような、ライフバリューを向上できる取り組みを考えています。

松重:たしかに、UGCの創出が大切だといっても、Instagramだけで完結できる取り組みは決して多くありません。スノーピークさんはもともと「雪峰祭」や「スノーピークウェイ」といったリアルイベントやお客様と一緒にキャンプに行く機会などを設けて、しっかりと関係構築を行っていますよね。

そういった体験を常に作り続けることによって、UGCが発生し、お客様との距離が近くなり、成果につながっているのだと実感する機会になりました。

……さて、あっという間ですが、そろそろお時間ですので今回はここまでで終わりたいと思います。長田さん、今日はありがとうございました。

長田:こちらこそありがとうございました。

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