SNSマーケティングを過小評価しないために 〜まだ見ぬ成果を説明するための “Scientific” 〜【サキダチラボ対談 後編】
Date : 2025/03/19
テテマーチでは、自社で開発・提供するSaaSツール「SINIS for Instagram」「SINIS for X」を通じて取得した、SNSアカウント80,000件以上の膨大なインサイトデータを保有しています。
これらのデータの独自性や価値、ビジネス活用について、テテマーチのメンバー2名が対談しました。
2部構成の後半にあたる本記事では、このデータをどのように分析し、活用しているのか?について話しています。
話し手
三上 貴由
SaaS事業本部を管掌する執行役員。SINIS事業の方針を決め、チーム全体の陣頭指揮を執っている。
清水 優志
サキダチラボ(未来創造本部)所属のデータアナリスト。SINISが保有するデータの分析業務を担当。社内外のプロジェクトメンバーと連携し、SNSの最新動向やアルゴリズムを研究している。
目次
初公開!テテマーチのデータ分析環境について
【三上】
前編では主に「テテマーチが保有するデータはどのようなものか」にフォーカスしましたが、後編では「そのデータをどのように分析しているのか」からお話を始めましょうか。
【清水】
まず、SINISで取得したデータはMySQLというデータベースに格納されます。
サキダチラボでは、Google Big Queryというサービスを使うことで、そのデータをよりセキュアに分析しやすい状態にして活用しています。
Google Big Query上のデータをSQLというデータベース言語で抽出したら、Google Colabolatoryという実行環境上でPythonを用いて前処理・探索・可視化といったいわゆる “分析” を行なっていきます。
Google Colabolatoryでは機械学習のモデル構築などもできるので、膨大なデータから何か特徴や傾向を見出したり、グループに分けたりするときには、機械学習用のライブラリを呼び出すこともあります。
過去にはk-meansという手法で投稿を分類したり、SHAPという手法で「リーチ数に対して、いいね数や保存数、コメント数などが与える影響度合い」を可視化したこともあります。

データ分析は “数学” ではなく “国語” ?!
こういった分析をするうえで最も重要なのは、Instagram上のコンテンツをユーザーがどのように閲覧し、エンゲージメントし、利用しているかについての実践的な知識です。
テテマーチの場合、支援事業を通じてInstagramユーザーの行動やインサイトを深く理解しているため、データ分析をするときにもそのナレッジを応用しています。これもテテマーチにおけるデータ分析の競合優位性のひとつだと考えています。
【三上】
ただデータを持っているだけでは不十分で、そのデータの背景にどんなユーザーの行動や意図があるのかまで洞察できないということでしょうか。
【清水】
おっしゃるとおりです。データそれ自体はただの事実ですが、その解釈次第でデータの持つ意味は多様に変化するんですね。
データ分析というと “数値や記号を扱う数学的な仕事” というイメージを抱かれがちですが、実は “膨大なデータの山から意味のある情報を取り出し、ビジネスで活用できるかたちに翻訳する、極めて国語的な仕事” なんです。
我々だけで分析・考察するのにも限界があるので、現場のメンバーに意見を聞いたり、フィードバックをもらったりしています。

また、支援事業のクライアント様と共同で調査をさせていただくケースもあります。
過去にはSnowpeak様との共同プロジェクト*で、Instagram上のUGCのビジネスインパクトや、店舗アカウントによる顧客の購買行動の変化を調査した事例もありますね。
*「SnowpeakのInstagram活用」をテーマにウェビナーを開催
【三上】
SINISが保有するデータを使えば「SNS上でどのようなコンテンツが人気か」はわかる一方で、その先の「どんなコンテンツが実際のビジネスにどのような影響を与えているのか」まではわかりませんよね。
そのデータ的な弱点を補うためにも、クライアント様との共同調査は非常に重要だと考えています。
SNSで最も難しいのは「現状分析」
【清水】
ここからは、SINISのデータを活用して開発したサービスについてもお話ししましょうか。
【三上】
そうですね。
前編でもお話したように、SNSにおける意思決定の “基準” づくりは需要が大きく、そのニーズに応えるためのサービスを2つ開発しました。
1つ目は「MONOSASHI」です。
このツールでは、SINIS for Instagramにご登録いただいている60,000以上のアカウントのデータを “統計データ” というかたちでご提供しています。
前編でご紹介した「業界トレンドデータ」は決まったデータの見方しかできないサービスなのですが、「MONOSASHI」はかなり自由に各業界の細かいデータを分析できます。
特に、幅広い業界のSNSマーケティングをご支援されている大手代理店様などにご活用いただいています。
2つ目は「ヘルスチェック」*です。
このサービスは、簡単に言えばInstagramアカウントの健康診断です。リーチ数やいいね数、保存率など、10の評価指標にもとづき、アカウントの健康状態をA〜Cで評価します。
この診断の裏付けとなっているのがSINISのデータです。60,000以上のアカウントから診断対象のアカウントに近しい特徴を持ったアカウントを抽出し、類似するアカウント群と比較して診断を行なうので、精度が非常に高いのです。

*Instagramアカウントの健康診断「ヘルスチェック」〜業界最大規模5万件のビッグデータを活用〜
https://tetemarche.co.jp/download/healthcheck
【清水】
いずれのサービスも「今のアカウント運用が上手くいっているのかどうかがわからない」という課題を解決していますよね。
現状分析ができなければ、改善策も考えようがない。しかし、SNSマーケティングは実態や成果を掴みづらく、現状分析が非常に難しいという特性があります。
SINISのデータを使って特に価値を発揮できるのは、その「現状分析」の部分なのかもしれません。
SNSの成果を “売上へのインパクト” だけで過小評価しない
【三上】
最後になりますが、今後の展望についても触れておきましょう。
先ほども申し上げたように、SINISの保有するデータだけでは “SNSのビジネスインパクト” までを証明することはできません。そこで、クライアント様との共同調査が必要になります。
今後は、このような共同調査の機会をもっと増やしていけるとよさそうです。
【清水】
これまでの共同調査の結果、「戦略的なSNSマーケティングによって売上は増える」ことはある程度は示せました。
ただ、その裏返しなのですが、「売上への影響のみでSNSマーケティングを評価するのは、SNSマーケティングの過小評価につながるリスクがある」という学びも得られたんです。
確かに、SNSは売上を伸ばすのに有効なチャネルです。でも、それだけじゃない。いわゆる直接効果はSNSマーケティングの成果のごく一部で、本当に重要なのはそれ以外の “目に見えない” 間接効果のほうなんですね。
今後の共同調査では、そのような「SNSを過小評価しない」というスタンスを大事にして、より本質的なSNSマーケティングの分析を行なっていきたいと考えています。

【三上】
確かに、議論を矮小化しないためにも非常に重要な考え方ですね。
SNSマーケティングの成果を説明するための “Scientific”
【三上】
SINIS事業部としても、 “SNSのビジネスインパクト” を可視化するために、外部ツールとの連携の可能性も模索しています。
あくまでも一例ですが、たとえばGoogle Analytics上のアクセス・購買に関するデータをSINIS上でも閲覧できたり、統合的に分析できるようになれば、SNSがWebマーケティングにどう貢献しているのかがもっとわかりやすくなると思います。
いずれにしても、「SNSを過小評価しない」ことを前提とはしつつ、SNS担当者が適切に評価される状態、つまり、「SNSマーケティングの成果が説明できる」状態を実現していきたいですね。
【清水】
それはすごく大事なことだと思います。
SNSの担当者さんとお話する機会も多いですが、皆さん共通するお悩みは「SNSマーケティングの成果を上手く説明できない」ことだと感じます。
前編でテテマーチのテーマである「Creative × Scientific」にも触れましたが、今回の対談を通じて、「Creative」とは新しい発想で生活者に喜んでもらい成果を出すこと、「Scientific」とはその成果やロジックを証明し再現性を高めること、だと気づかされました。
本記事を読んでいただき、もし「より本質的なSNSマーケティングに取り組んでいきたい」「テテマーチの『Creative × Scientific』に共感する」「テテマーチの共同調査プロジェクトに興味がある」というSNSマーケティング担当者様がいらっしゃれば、ぜひテテマーチにご相談ください。
また、「SINIS for Instagram」「SINIS for X」は、いずれも無料から使えるツールです。アカウントのデータはご登録後から蓄積され始めますので、まずはご登録いただくことをおすすめします。
今後もテテマーチでは、サキダチラボを中心とした「Scientific」な取り組みについて、積極的に発信していきます。