【開催報告】「第14回 SNS中の人交流会」を開催ーnoteに聞く「広告に依存しないファンの増やし方」ー
2025年6月26日(木)に企業のSNS担当者・通称「中の人」を対象に親交を深めるイベント「第14回 SNS中の人交流会」を開催しました。
「SNS中の人交流会」とは
「SNS中の人交流会」とは、企業のSNS運用担当者が運用に関する知識を学び、運用担当者同士で親交を深められるオフラインイベントです。
14回目の開催である今回は、SBI FXトレード株式会社、株式会社サンゲツ、株式会社大創産業、株式会社TVer、株式会社富士薬品、株式会社吉野家、株式会社リクルートなど様々な業界のSNS運用担当者が40名程参加しました。
・イベント名 :第14回SNS中の人交流会@目黒|noteに聞く「広告に依存しないファンの増やし方」
・開催日時 :2025年6月26日(木)18時~
・プログラム :オープニング
トークセッション
【参加型】グループディスカッション
交流会
・会場 :テテマーチ株式会社 7Fオフィス
■セッション内容
noteに聞く「広告に依存しないファンの増やし方」
・ゲスト

note株式会社
ディレクター
武田 麻衣 氏
note株式会社ディレクター。クリエイティブプロダクションでディレクター、転職プラットフォームでコンテンツ企画を経て現職。note公式インスタグラムの立ち上げやクリエイター向けのコンテンツ企画を行う。趣味は恋リア視聴とフィルムカメラ。
・ホスト

テテマーチ株式会社
エヴァンジェリスト
出口 潤
音楽エンタメ業界で広告営業として従事。その後、マーケティング支援会社にて営業、事業、マーケティング部門の責任者を歴任し、2022年8月にテテマーチへジョイン。社長室 室長、マーケティング部 部長を経て、2025年2月より現職。

noteが目指す「シェア文化」の醸成
武田氏:noteは、クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿して、ユーザーがそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォームです。先日ユーザー数が1,000万人を突破しました。noteの大きな特徴は、手軽にコンテンツを更新できる点にあります。
X(旧Twitter)は2014年のサービス開始当初から運用しておりフォロワーが一番多いです。その他は、Facebook、YouTube、TikTokも運用しており、Instagramは2023年開設と、SNSの中では後発です。
出口:本日はそのInstagramについてお伺いしていきたいと思います。
武田氏:note公式Instagramは、昨日(2025年6月25日)時点でフォロワー数は8,754人になりました。おもに私一人で運用しており、広告やプレゼントキャンペーンでフォロワー獲得したことは一度もありません。エンゲージメント率や保存率は比較的高く、今年に入ってからの数値では、投稿1つあたり7%以上のエンゲージメント率、2%以上の保存率です。また、プロフィールアクセスからのフォロワー転換率は約20%です。
出口:とても高い数値ですね。では、どのような目的でInstagramを運用されていますか?
武田氏:認知拡大と好意醸成に加えて、noteを使ってくれているクリエイターさんが、自分のnoteや読んだnoteを自分のInstagramアカウントでシェアしてくれるカルチャーを作りたいと思っています。Xではその文化ができてきましたが、Instagramではまだ一部に留まっていると感じています。
試行錯誤の末に見つけた「本当に求められるコンテンツ」
出口:具体的にはどのようなことをされましたか?
武田氏:序盤はInstagramらしい、映えを意識した投稿をしていましたが、保存が増えてもフォローに繋がらないという課題に直面しました。そこで、「Instagramでどうやってnoteをシェアするのか」を説明するというシンプルなリール動画を出したところ、数百人しかフォロワーがいない中、100件程保存されました。そこでやっと「今フォローしてくださっている方はこういうことが知りたかったんだ」と気づきました。
その気づきから、クリエイターさんの記事を紹介する際に、エッセイを紙の本にする方法や、執筆に役立つツールの紹介など、noteの周辺にある「創作活動に関するtips」をクリエイターさんの言葉を借りて出していきました。すると、徐々にフォローに繋がる感覚があり、noteの世界観や創作をサポートする姿勢をしっかり出していくことが重要だとわかりました。
出口:フォロワーさんが本当に求めていることがわかってきたんですね。
フォロワー増加のための、Instagramの“外”へのアプローチ
武田氏:お役立ち情報は保存率が高いのですが、Instagramの中で文章術のジャンル自体が非常にニッチであるため、おすすめにはなかなか載りませんでした。そこで、「外から気づいてもらうしかない」という結論に至りました。
出口:クリエイターにとって有益なことは出せているけど、Instagramのアルゴリズム上、気づいてもらえないという状況ですね。
武田氏:そこからとにかく「外」にアプローチを始めました。具体的には、会社のイベントスペースにポップを置いたり、note公式の記事からInstagramやXへの導線をつくったりしました。
また、Instagram上では「一緒にnoteを書こう」というInstagramライブを実施しました。ひたすらnoteを書いているだけのInstagramライブですが、Xで告知するとフォロワーが増えるようになりました。Instagramライブはフォローしていないと気づけないものなので、フォローしておく動機になったのだと思います。
出口:面白いライブですね!たしかにフォローしておくことは重要な動機になり得ますね。
武田氏:さらにInstagram上では、「Adobe Express」や「Canva」に、noteの公式イラスト集が無料で使えるようになったという告知を出す予定があったので、その際にInstagramの共同投稿もお願いしました。
またフォロワー増加には、Threads活用も効果的だと気づきました。Instagramの投稿をそのままタイトルをつけてThreadsに投稿しただけでも伸びることがあり、Threadsで伸びると、Instagram上のタイムラインにフォロ-外のThreadsアカウントも表示されるようになるため、Instagramのフォローに繋がることがあります。
出口:なるほど、非常に幅広いアプローチをされているんですね。
社内を巻き込む「個人のnote発信」の力
武田氏:この中にも、ひとりSNS担当者の方がたくさんいるかと思います。私がひとりSNS担当者として特にやってよかったことの一つ目は、「投稿の型を作ること」です。デザイン面では「Canva」でデザイナーさんに型を作ってもらい、文字や画像を流し込むだけにしています。月次や週次のお決まりの投稿を決めておくこともおすすめです。
二つ目は、社内に仲間を作ることです。実際note社内でもInstagramよりX派の人が多かったですが、Instagramの運用に興味を持ってもらうために、私自身が個人のnoteでInstagram運用についての振り返りを書きました。外に発信することで、社内の人が興味を持ってくれるようになりました。「Instagram頑張ってるね」「ちょっとシェア手伝おうかな」という空気になりましたね。
出口:外に発信して第三者の共感を得ると、それが間接的に社内の人に伝わるんですね。
武田氏:まさにその通りです。また、社内には週1回、フォロワー数やインプレッション数などをモニタリングしているものを報告しています。
PDCAサイクルの回し方と投稿作成の裏側
出口:投稿の中身はどのようにしてつくられているんですか?
武田氏:企画段階では、ChatGPTと相談しながら考えることが多いです。一人では行き詰ってしまい、社内にInstagramに詳しい人も少ないので、ChatGPTに壁打ち相手になってもらっています。
投稿作成は、先ほどお話した投稿の型を活用しています。また、noteは無形商材のため「モノ」がないので、note公式グッズに助けられています。グッズをおしゃれに撮影した素材をストックしておき、投稿やストーリーズで活用しています。
また、社内の情報収集も大事にしていて、社内の人が作成した記事をXでシェアしてほしいという依頼があった場合、「この投稿はInstagramにも出したら閲覧数が伸びそう」というものをなるべく流用するようにしています。
分析に関しては、エンゲージメント率、保存率、プロフィールアクセス率を基本的な指標として見ています。目的がnoteをInstagramでもっとシェアしてもらうことなので、「#note更新」を設定し、投稿数も見ています。

出口:このPDCAの回し方は非常にシンプルで分かりやすいですね。
武田氏:ChatGPTと相談する際も、分析結果を踏まえてプロンプトの書き方を試行錯誤しています。ChatGPTは私が入力した内容を記憶して進化してくれるので、前提を入力しなくてもある程度返してくれるようになりました。
noteのグロースモデルと「カフェの店長」というサービス人格
武田氏:note公式のSNSアカウントや事業面に貫かれている考え方として、「noteのグロースモデル」があります。PVだけ伸びてもダメ、売上だけ伸びてもダメというプラットフォームなので、このグロースモデルの矢印がどこも途切れないように、全てが循環するように考えることが徹底されています。SNSはシェアや認知の部分で貢献したいと考えています。

出口:クリエイターが集まればコンテンツが増え、コンテンツが増えれば読者が増える、そしてマネタイズしている人はコンテンツが売れ、それがまたクリエイターを集める、という循環ですね。これはSNSに限らず、事業としてのグロースモデルが前提にあり、SNSがどこに一番貢献できるかを明確にしているということですよね。
武田氏:その通りです。さらに、それぞれのタッチポイントでどういうコミュニケーションをするのかというところも決めています。それを「noteのサービスの人格」として決めていて、イラストとともにどんな振る舞いをするのか例が挙げられています。例えば、noteさんは「カフェの店長」と定義されていて、お客さんがコーヒーをこぼした時に一緒に拭いてくれて、明るい話をして気を紛らわせてくれる、というくらい具体的に設定しています。
出口:すごく具体的ですね。それが全てのタッチポイントで、社員全員がnoteさんという人格を意識してやっているということですね。
武田氏:また、noteというプラットフォーム自体は「街」であると設定しており、多様な創作活動に溢れる街だということをイラストで表現したりもしています。社員それぞれのタッチポイントで、このようなイメージを崩さないように気をつけようという意識をもっています。
出口:絵で世界観を作るのは、ビジュアルをイメージできてコミュニケーションが取りやすいですね。

noteとInstagramの組み合わせが「おすすめな3つの理由」
武田氏:私がInstagramの運用を担当するようになって、個人的にnoteとInstagramを一緒に使うことが良いと思った3つの理由をお話しします。
1.検索が見込める
noteはSEO対策に力を入れているので、検索からの流入に強い状態です。noteの記事をポートフォリオにしませんかという記事も、ポートフォリオの作り方などで検索され、8割以上が検索で来ています。これらの記事の最後に「Instagramでもこういう投稿を出してます」とつけると、フォローしに来てくれることがあります。Googleで情報検索した時にnoteの記事がヒットすることがよくあります。
2.投稿が流れていかない
SNS担当者は、せっかく作った投稿が一瞬で流れていってしまう虚しさを感じることがあると思います。その投稿を詳しく語る記事や裏側をまとめた記事をnoteに一つ作っておくと、Instagramの投稿が流れても、ストーリーズで「こういう記事もありますよ」とリンクを出せるので便利です。また、よく聞かれることをまとめてハイライトにピン留めしておいたり、好評だったInstagram投稿をまとめ直すことで、コンテンツの再活用にもなります。そうすると、そこからまた検索されInstagramに流入するという循環が生まれます。
3.画像やファイルを配布できる
Instagramでは画像を直接保存できませんが、noteはチェックリストやExcelファイルなどのデジタルコンテンツを配布するための置き場所としても活用できます。人気のYouTuberさんや教育関係者向けのインフルエンサーさんなどが、チェックリストやExcelファイルを配布するためにnoteを使って、Instagramからnoteへ流入させている事例もあります。note公式Instagramでは、カレンダーなどを配布しています。
まとめ:広告に依存しないnote公式Instagram運用の秘訣
武田氏:note公式Instagramの活用目的は認知拡大と好意醸成に加えて、「シェアするカルチャーを広めること」でした。そのため、公式Instagramのアカウントだけで売上やPVといった指標に貢献しようとしすぎないことが一つの大きなポイントです。
投稿ネタの考え方としては、noteのコンシェルジュ役として「どういうものがあると良いか」を意識して考えています。SNS担当者は、クリエイターと直接言葉を交わせる立場です。顧客の声を社内に届けると非常に喜んでもらえて、開発に活かされることもあります。また、たとえば「収益化の機能をプロモーションするチームにとって、こういう投稿があると便利ではないか」というふうに意識してコンテンツを作ると、社内の関係性も良好になります。
出口:SNSで得た声を社内にフィードバックすることで、普段ユーザーと接していない社内の方々にとってはありがたい情報になりますよね。
武田氏:note社のカルチャーとして「クリエイター視点で考えよう」というバリューがあり、クリエイターの声を元に機能カイゼンしていく、という考え方があります。クリエイターは「お客さん」というよりも「仲間」のような感覚なので、生の声はすごく大事にしています。
出口:SNS担当者としては、「こういう声をもらっています」という情報を、社内でどれだけ価値として理解してもらえるかが重要ですよね。社外に発信することで社内の人が認知してくれる、という話にも繋がりますね。
武田氏:また、投稿ネタは、Instagramの投稿をうまくまとめてnote記事にするという形であれば、改めてnote用のコンテンツを用意しなくても大丈夫です。Google検索からInstagramに来てくれることはあまりないと思うので、noteに同じ内容を置いておくだけでもすごく資産になります。
出口:まさにInstagramの中だけで頑張るのではなく、Instagram外で頑張ってフォロワーを獲得してくるということですね。noteにコンテンツをおいておくことでSEO対策にもなりInstagramのアカウントの認知にも繋がりますね。
武田氏:それでバズっているクリエイターさんも実際にいます。もしnoteを書くよりXをやる方が得意な方がいらっしゃったら、noteを「文章」だと思わずに「1段落1ポスト」だと思って考えると、すごく書きやすいのではないでしょうか。スレッド形式のつもりで、まずはXでポストし、それをAIを活用してnoteの記事にすることも良いですし、そのままnoteに段落で分けるだけでもそれっぽくなります。
出口:それはハードルがだいぶ変わりますね。
武田氏:企業としてまず使い始めるのであれば、まとめるような使い方が良いと思います。noteは過去に公開した記事でも、価値が落ちづらいのも強みです。InstagramやXでは数ヶ月前の投稿がもう一度バズることはあまりありませんが、noteはコンテンツが何度も使えるので、世の中のトレンドにあわせてもう一度記事をSNSでシェアする、といったことができます。
■グループディスカッション
「社内に関心をもってもらうにはSNS担当としてなにができるか?」
というディスカッションテーマで、グループワークを実施しました。
各テーブルの参加者同士、積極的に意見交換し盛り上がりました。
■懇親会
グループディスカッション終了後は、参加者同士が自由に交流できる懇親会を実施しました。


■参加者の声
以前ご参加経験のある方も多く、今回も大盛況でした。
「参加者のみなさんが熱量高く運用に向き合われていたので刺激になりました。」
「他社の課題やナレッジをもっとゆっくり聞いてみたいです。」
「今回をきっかけに色んな企業とコラボ企画などやってみたいです。」
など、たくさんの熱い感想や次回への期待の声が寄せられました。
皆さまの期待に応えられるよう、これからもさらに楽しいイベントを企画していきます!
■総括
今回のテーマは、「○○らしさの追及」「社内に関心を持ってもらう」「自分事化してもらう」という点が重要でした。SNSを活用できているかどうかで、認知から検討、購入、そして再購入という行動モデルのフェーズにおいて、日常的な接触に大きな差があります。SNS未活用だと接触機会が限定されますが、活用すると様々なフェーズからカバーできます。

ま弊社で出しているSNS時代の消費行動モデル「PERCARS(パーカーズ)」でも同様のことが言えます。「PERCARS(パーカーズ)」とは最適な情報に触れ、ブランドと出会い、共感を深め、購買行動に至り、さらに参加・共有することで、また誰かが最適な情報に触れるという一連の流れです。そこでもSNSはすべてのフェーズにおいて影響力があります。

また、今日のnoteさんの話であったようにInstagramとnoteを組み合わせるなど、SNSと何かを掛け合わせることで、より統合的なマーケティングが実現でき、新たな可能性が生まれます。SNS担当者はSNSだけに視野が狭くなりがちですが、そこを広げて考えることが大事です。SNS×動画、SNS×Web、SNS×オフライン等、SNSを起点として様々な部署やチャネルとの掛け合わせを意識することで、よりSNSの価値が発揮できるのかと思います。
そのためにも、SNS担当者が自社のアカウントを深く理解し、KPIや戦略を立てる必要があります。テテマーチでは、上記で挙げたポイントを把握するためにフォロワー購買行動調査などを通じて、フォロワー属性やSNSの役割を明確化し、アカウントの全体戦略の支援も行っています。
全体戦略にあたり、最終的なゴール(KGI)を設定し、それを達成するためのポイント(KSF)、そして日々の具体的な目標(KPI)を「カスケード式」に設計していくことが重要です。テテマーチでは、こうしたSNS戦略のコンサルティングやフォロワー調査など、運用に関する様々な支援を提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。
■次回開催について
ご好評につき第15回の開催が決定しました。
- イベント名 :第15回SNS中の人交流会@目黒|TikTok Shopの展望と中の人の役割
- 開催日時 :2025年7月24日(木)18時~
- 参加費 :無料
- 会場 :テテマーチ株式会社 東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル 7F フリースペース
- お申込みフォーム:https://tetemarche.co.jp/seminar/250724
■イベントに関するお問い合わせ先
イベントについてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
〇担当:福島(ふくしま)
連絡先:info@tetemarche.co.jp