【開催報告】「第16回 SNS中の人交流会」を開催ーアットコスメに聞く「TikTokの接客体験とは?」ー
2025年8月28日(木)に企業のSNS担当者・通称「中の人」を対象に親交を深めるイベント「第16回 SNS中の人交流会」を開催しました。
「SNS中の人交流会」とは
「SNS中の人交流会」とは、企業のSNS運用担当者が運用に関する知識を学び、運用担当者同士で親交を深められるオフラインイベントです。
16回目の開催である今回は、株式会社 山善、dely株式会社、花王株式会社、株式会社ZENB JAPAN、株式会社TENGAなど様々な業界のSNS運用担当者が30名程参加しました。
| イベント名 | 第16回SNS中の人交流会@目黒|アットコスメに聞く「TikTokの接客体験とは?」 |
| 開催日時 | 2025年8月28日(木)18時~ |
| プログラム | ・オープニング ・【セッション】アットコスメに聞く「TikTokの接客体験とは?」 ・【参加型】グループディスカッション ・交流会 |
| 会場 | テテマーチ株式会社 7Fオフィス |
■セッション内容
アットコスメに聞く「TikTokの接客体験とは?」
・ゲスト

株式会社アイスタイルリテール
リテールカスタマーエクスペリエンス本部 本部長
大西清貴
新卒で広告代理店に入社しメディア営業・運用を経験後、ライフスタイルメディア「TRILL」で広告営2011年アイスタイル入社。10年間で約800ブランド様とお会いし、ブランド様の課題に合わせてデータを軸としたデジタル&リアルでのプロモーション及びCRMなどのトータルソリューションを提供。4年間セールス部門の責任者を経て、2021年にリテールカスタマーエクスペリエンス本部の本部長として、新たな接客・体験の構築を目指し@cosmeの持っているデータと最新のトレンドを掛け合わせた新しいリテールメディアの構築を推進している。
・ホスト

テテマーチ株式会社
エヴァンジェリスト
出口 潤
音楽エンタメ業界で広告営業として従事。その後、マーケティング支援会社にて営業、事業、マーケティング部門の責任者を歴任し、2022年8月にテテマーチへジョイン。社長室 室長、マーケティング部 部長を経て、2025年2月より現職。
株式会社アイスタイルグループのMission

まず株式会社アイスタイルグループのご紹介をしていただきました。
アイスタイルグループが独自のデータベースを基盤とする「マーケットデザインカンパニー」として、生活者視点でのマーケティング支援を行っていると説明しました。ビジョンには「生活者中心の体験創造」、ミッションには「ビューティの世界をアップデートしながら多くの人を幸せにする」ことを掲げているとのことです。
TikTokを始めた3つの理由
アットコスメがTikTokを始めた理由は以下の3点です。
- ユーザーとブランドの新しい出会いの創出
これが前提であり、マッチングの機会を増やす - アットコスメ美容部員の認知向上
アットコスメの店舗やサイトは認知度が高いものの、そこで働く美容部員の認知度は低いという現状があり、「品出しをしている人」「レジ担当の人」といった認識を払拭し、専門家としての存在感を高める。 - リテールビジネスの拡大
物販だけに留まらない収益構造を加速させる。
「自分たちの強み」を突き詰めたTikTokアカウントの成長戦略
現在フォロワー約12万人のTikTokアカウント「@cosme_ba」の戦略について説明しました。TikTokは若年層が多いプラットフォームですが、同アカウントは25歳から34歳のフォロワーが突出して多いのが特徴です。これは、若年層がトレンドやバズで購入するのに対し、20代後半からは肌の悩みが顕在化し、自己投資が増えることから、インフルエンサーとの差別化を図り、この層に刺さるコンテンツ作りを狙った結果であることが示されました。
これまでの成長曲線については、最初の1年間は試行錯誤の時期であり、フォロワー数も8,000人程度で、会社からは継続可否を問われるほど伸び悩みもありました。1年目は内製で、流行りのフォーマットを模倣していましたが、うまくいかなかったとのこと。
転機は2年目。「自分たちの強みは何なのか」を改めて考え直し、オリジナルのフォーマットの開発に着手しました。これにより、フォロワー数が爆発的に増加しました。
内製だけでは限界があったため、外注化を進め、内製ではチャレンジングなフォーマットを試す一方、外注では確立したフォーマットでの制作を依頼することで、効率的にコンテンツを量産できる体制を構築しました。現在では、演者を含めて5人(外注2人を加えて合計7人)のチームで運用しているとのことです。
大西様は、この経験から「アカウント運用をしていると、自分たちの強みを見失う時がある。数字に一喜一憂せず、本当にやりたいこと、自分たちの強みがどこにあるのかをきちんと考え、信じ抜くことが重要」だと強調しておりました。
オリジナルフォーマット成功の鍵:2つの視点

オリジナルフォーマットを成功させた鍵として、以下の2つの視点を挙げました。
- キャラクター設定:「美容に詳しいお姉さん」
・ブランドの美容部員や美容家、インフルエンサーなど、他のアカウントとの差別化を図るため、「見る理由」を明確に設定。
・アットコスメの美容部員は、ブランドに縛られず幅広い知識を持つことから、より身近で、困った時に相談できる「頼れるお姉さん」というキャラクターを設定。 - コンテンツの作り方:接客の延長としての「自分ごと化プロセス」
・店舗での1対1の接客のように、ユーザー一人ひとりに寄り添い「自分ごと化」してもらうことを重視。
・一般的な動画コンテンツは1対N(不特定多数)になりがちだが、「100人いたら50人、30人に刺さればいい」という感覚で運用。
・単に商品を紹介する「プロダクトアウト」ではなく、「悩み→原因追求→解決方法→商品提案」というカウンセリングのプロセスをコンテンツに盛り込むことで、商品がスムーズに受け入れられ、継続して視聴したくなる理由を作る。
このプロセスをコンテンツの冒頭10秒に反映させることで、ユーザーの引き込みとフル視聴率向上に繋がるとのことです。

成功事例に見る「息の長いコンテンツ」の秘訣

過去のベスト投稿事例を通じて、TikTok運用の新たな視点を提示していただきました。
これらの事例から見えてきたことは、以下の4点です。
- ユーザー代表としての「天の声」の存在:
視聴者に寄り添い、ユーザーの立場に立つことが重要。 - 素朴な疑問を解決するストーリー:
ユーザーが言語化できない悩みをリアリティをもって表現することで、自分ごと化を促進。 - 保存率の高さ:
「ためになった」という評価に繋がり、再視聴のきっかけとなる。 - 検索流入を意識:
化粧品のようにシーズン性が高く、検索ワードが毎年変わらない商材では、「息の長いコンテンツ」を作成し、求められる時に受け皿となるストック型のコンテンツとすることで、コンテンツの消費を防ぎ、長く見てもらえる環境を作ることができる。
TikTokの「本数重視」という一般的な常識に対し、「刺さるコンテンツ」の重要性、そして検索流入がコンバージョンに繋がりやすいという点で、TikTok運用の新たな視点ではないでしょうか。
自分たちのビジョン・ミッションを達成するためにどのようなKGI・KPIを設定を考えることが重要

アットコスメではKGI・KPI設計について、「ユーザーとブランドのエンゲージメントを作る」というミッションを土台に考えていると説明いただきました。
- KGI:
「ユーザーとブランドのマッチング」 - KSF:
「出会いの量」と「絆の質」。そして、マッチングの最大化に必要なのは「ユーザー軸」と「ブランド軸」の思考。 - ユーザー軸:
ユーザーの「知りたい」に答えるコンテンツを増やすことで、ユーザーの接点数とアクション数を向上させる。 - ブランド軸:
ブランドや商品の「思い」や開発背景、熱量を正しく理解し、コンテンツに反映させることで、ブランドの「伝えたい」に応える。

この考え方に基づき、ユーザーとブランドの「距離を縮める」という視点でKPIを設定しており、最上位のKPIには「保存数」を置いています。保存は、ユーザーにとって「ためになった」「もう一度見たい」という評価であり、ブランドにとっても「思いが伝わっている」ことを意味するため、最もマッチングに近い指標だと考えているとのことです。
その他のKPIとして、「フル視聴回数」(率ではなく回数で全体視聴数を評価)、「総再生回数」、そしてプラットフォーマーとして「紹介ブランド数」を挙げました。
TikTokの再生数やフォロワー数といった「目先の数字」に囚われるのではなく、自分たちのビジョン・ミッションを達成するためにどのようなKGI・KPIを設定すべきかを考えることが重要です。
「視聴者理解を深めるディスカッション会」で視聴者の本質的なニーズを深く理解する

運用フローについては、企画から台本作成、撮影、編集、投稿分析までの一連の流れを説明いただきました。特に、「企画責任はチームメンバー全員で担う」という点を強調し、誰か一人の責任にせず、チーム全体で企画に取り組む姿勢を共有しているとのことです。
さらに特徴的な取り組みとして、2ヶ月に1回程度の「視聴者理解を深めるディスカッション会」を開催していると紹介。これは、社内メンバーの知識レベルが向上することで、生活者との間に「当たり前のギャップ」が生じることを防ぎ、定量的な指標だけでは見えてこない視聴者の本質的なニーズを深く理解することを目的としています。
TikTok動画の多角的な活用事例

TikTokで制作した動画を、TikTok内だけに留めず、多角的に活用している事例を紹介いただきました。
- 店頭サイネージでの活用:
制作した動画を店舗のサイネージで放映。 - ECサイトでの活用:
アットコスメショッピングの商品ページにTikTok動画を埋め込む。これにより、ECサイトの直帰率が50%軽減されるという大きな効果があったと述べ、動画がユーザーのサイト滞在率向上に寄与していることを示しました。 - ポップアップイベントでの活用
イベント開催時には、即日撮影・即日投稿を行い(例えば水曜日の朝撮影→水曜日の夕方投稿)、短期間で広告を回すことで、週末の来場促進に繋げている。 これは、ストック型のコンテンツと、イベントのような瞬間的な情報の使い分けが重要であると示唆しました。
セッションまとめ:SNS運用で意識すべき4つのポイント

最後に、SNS運用で意識すべき4つのポイントをまとめました。
- 本当の意味で「生活者視点」で考える。
- 生活者の「ペイン(悩み)」を解決するものなのかを明確にする
- 「バズ」ではなく「継続的にユーザーが活用できる場」を意識する。
ストック型コンテンツや検索流入を重視。 - 自分たちの「ビジョン・ミッション」でKGI・KPIを設定する。
目先のフォロワー数や再生数に囚われず、事業に繋がる本質的な指標を考える。
特に自分たちの「ビジョン・ミッション」でKGI・KPIを設定できているかは改めて見直し見ると新たな気づきが得られるのではないでしょうか。
■グループディスカッション
「<自社の課題を深掘り!>自社やブランドのMission・ビジョンを踏まえて、自分たちのKPIを1つ変えるなら何を変えますか??」というディスカッションテーマで、グループワークを実施しました。
各テーブルの参加者同士、積極的に意見交換し盛り上がりました。
■懇親会
グループディスカッション終了後は、参加者同士が自由に交流できる懇親会を実施しました。


■参加者の声
以前ご参加経験のある方も多く、今回も大盛況でした。
「まさに今KPIを見直そうと思っていて大変ありがたかったです。」
「参加者のみなさんが熱量高く運用に向き合われていたので刺激になりました。」
「各企業様の課題を話せる時間があるととても参考になります。」
など、たくさんの熱い感想や次回への期待の声が寄せられました。
皆さまの期待に応えられるよう、これからもさらに楽しいイベントを企画していきます!
■総括
全体の話を通して、SNSの運用ではビジョン・ミッションに沿った指標設計や、時には数字を忘れ「生活者にとってどうなのか」という原点に立ち返って議論することの重要性を実感する回となりました。改めて現在の目標設計が「本当に会社がやりたいこと・なりたい姿」を測れるのかを振り返ってみてください。
またKGI、KSF、KPIといった指標設定は目的から設計することが重要です。
目標は短期・中期で分け、カスケードダウンのように設計するとより自社のミッション・ビジョンに沿ったものになるのではないでしょうか。

テテマーチの「SNSコンサルティング・運用支援」ではKPIの設計から、コンテンツの企画や分析、アカウントのフォロワーの属性やプロモーションなど、総合的にご支援いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。
■次回開催について
ご好評につき第17回の開催が決定しました。
| イベント名 | 第17回SNS中の人交流会@目黒|SNS炎上リスク対策 |
| 開催日時 | 2025年9月25日(木)18時~ |
| 参加費 | 無料 |
| 会場 | テテマーチ株式会社 東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル 7F フリースペース |
| お申込みフォーム | https://tetemarche.co.jp/seminar/250925 |
■イベントに関するお問い合わせ先
イベントについてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
〇担当:福島(ふくしま)
連絡先:info@tetemarche.co.jp