【開催報告】「第12回 SNS中の人交流会」を開催ーヤッホーブルーイングに聞く、SNSのアカウント設計・投稿企画の考え方ー

Date : 2025/05/09

2025年4月24日(木)に企業のSNS担当者・通称「中の人」を対象に親交を深めるイベント「第12回 SNS中の人交流会」を開催しました。

■「SNS中の人交流会」とは

「SNS中の人交流会」とは、企業のSNS運用担当者が運用に関する知識を学び、運用担当者同士で親交を深められるオフラインイベントです。
12回目の開催である今回は、株式会社伊藤園、株式会社J-WAVE、株式会社TSI、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社、note株式会社など様々な業界のSNS運用担当者が40名程参加しました。

〇開催概要
・イベント名  :第12回SNS中の人交流会@目黒|ヤッホーブルーイングに聞くSNSのアカウント設計・投稿企画の考え方
・開催日時   :2025年4月24日(木)18時~
・プログラム  :オープニング
         トークセッション
         【参加型】グループディスカッション
         交流会
・会場     :テテマーチ株式会社 7Fオフィス

■セッション内容

『ヤッホーブルーイングに聞く SNSのアカウント設計・投稿企画の考え方』

・ゲスト

株式会社ヤッホーブルーイング
よなよな編集部(SNS・オウンドメディア運用)
松原 豪希

広告制作会社でwebディレクターを経験後、2022年にヤッホーブルーイング入社。SNS・オウンドメディア(よなよなの里)を運用する「よなよな編集部」所属。

・ホスト

テテマーチ株式会社
エバンジェリスト
出口 潤

音楽エンタメ業界で広告営業として従事。その後、マーケティング支援会社にて営業、事業、マーケティング部門の責任者を歴任し、2022年8月にテテマーチへジョイン。
社長室 室長、マーケテイング部 部長を経て、2025年2月より現職。

ヤッホーブルーイングとは

松原氏:弊社は1997年創業で、本社は長野県の軽井沢にあります。ミッションとして「ビールに味を!人生に幸せを!」を掲げており、日本のビール業界は大手のラガーが強い中、世界にはもっと多様な味わいのビールがあることを広めていきたいと考えています。ビジョンは「クラフトビールの革命的リーダーになる」ことです。

出口:素晴らしいミッションとビジョンですね。

松原氏:また、我々はクラフトビールを作って販売するだけでなく、エンタメ事業にも力を入れています。ユニークなプロモーションをしたり、ファンイベントを非常に重視しており、来月(5月)には軽井沢で1,000人規模のファンイベントを企画しています。また、直営店のよなよなビアワークスや、プロ野球スタジアム内のクラフトビール醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」も展開しています。

大事なことは「好意を持った想起」

松原氏:我々のSNS運用で非常に大事にしていることが、とにかく好意を持った想起で、フォロワー数は追っていません。今日はその設計に至ったここ5年ほどの歩みをお話しします。

出口:さっそく核心ですね。とても参考になります!

松原氏:2022年頃までは、特に決まった方針なく、新製品情報や会社からのお知らせなど情報発信がメインでした。当時のInstagram投稿を見ると、テロップやクリエイティブにはあまり力をかけていませんでした。

出口:そこから大きく変わっていったわけですね。

松原氏:2023年には、クラフトビールの理解促進を目指した企画投稿を開始しました。飲み方やお店の紹介、おつまみレシピなどを紹介し、フォーマットや文字入れなどもテストし始めました。この時期はインプレッションなども伸びて数値は良かったのですが、クラフトビールの情報を発信するメディアやSNSはすでに多く、コンテンツの個性が薄れてしまい、他社との差別化が課題になりました。

出口:数値が良いのに差別化できないのは悩ましいですね。

松原氏:そして2024年には、社内全体で「認知されても買われていない」という課題が見つかりました。ヤッホーブルーイングの認知率はクラフトビール業界でトップクラスなのですが、「飲んだことがあるか」という質問だとその割合がガクッと下がります。つまり、広告やキャンペーンでフォロワーを増やしても、すぐに購入に繋がるわけではないことが分かったので、お客さんの中に「ヤッホーブルーイングのビールを買う理由」を作る必要がある、という仮説を立てました。これが好意的な想起に繋がる考え方です。

出口:なるほど、ただ知っているだけでなく、ポジティブなイメージと共に思い出してもらうということですね。

松原氏:特にコンビニやスーパーで、競合が多い中で手に取ってもらうためには、「なんかいいかも」「なんか好きかも」「なんか気になるな」といった好意を持った状態で思い出してもらうことが重要だと考えました。「買われる理由」は、買い求めやすさと想起のされやすさでできている、という考え方で、買い求めやすさという点では大手さんのネットワークには勝てないので、我々がSNSで力を入れるべきは好意を持った想起である、と再認識しました。

出口:SNS単体で直接売上を上げるのは難しいが、想起を高めることで売上に貢献する、ということですね。

らしさの要素を明確に定義する

松原氏:競合と差別化し、好意を持ってもらうためには、ヤッホーらしさを本気で表現することが不可欠だと考えました。そこで、お客様に支持されている弊社の強みである、自由な発想のある革新的行動、顔が見える親しみやすさ、個性的な味やパッケージを感じられるコンテンツを投稿することにしました。

出口:自社のブランドらしさをどうコンテンツに落とし込むか、という点が重要ですね。

松原氏:2024年を通して見えてきたヤッホーらしさを分析し、2025年はさらにブラッシュアップしたヤッホーらしさに沿って企画を考えています。前提として自社ビール愛があり、その上に着眼点の上手さ、ファンとのコミュニケーションなど親近感、そして誠実とユーモアが同居している状態がベストなヤッホーらしさだと考えています。

出口:この要素を明確に定義しているのが素晴らしいですね。投稿を考える際には、この要素を満たしているか確認するということですね。

松原氏:月に1回の企画会議で、この要素に当てはまる企画を検討し、要素を満たせないものは残念ながらボツになります。その後は毎週進捗報告会議も設けています。

出口:自社のブランドらしさを定義し、投稿企画に組み込むというのは、他の企業さんにも参考になりますね。

松原氏:投稿する内容は大きく4つに分類しています。1つ目はクラフトビールの機能的価値(香り、味わい方など)、2つ目はモーメント系(アウトドア、映画鑑賞時など、日常生活で思い出してもらいたいシーン)。これはカテゴリーエントリーポイントとも言えます。3つ目は自由企画(会社の魅力、スタッフ、製造現場など、ヤッホーらしさが一番出るもの)、そして4つ目が全社施策、新製品情報、イベント、コラボなどです。

らしさを表現するにはインハウス制作が一番

松原氏:以前はSNSに関するミーティングはあまり頻繁ではなかったのですが、今は週に1回しっかりと行うようになりました。我々の部署は5,6人ですが、最初は2,3人で戦略を立て、部署全体で共有しながら丁寧に進めていきました。

出口:成果を出すためには、やはりリソースの投入は重要ですよね。

松原氏:また、ヤッホーらしさを本気で表現するため、企画、撮影、編集はほぼ全てインハウスでやっています。撮影や編集を外注することもあったのですが、会社のポリシーやらしさを色濃く出すには、社内の人間が作るのが一番だと判断しました。

出口:全て自社でやられているのはすごいですね。

松原氏:その結果、2024年のデータですがヤッホーらしさのある企画は年間65件、動画は87本制作しました(昨年比4倍)。数値も2023年を上回り、非常に良かった年になりました。

コンテンツ制作はユーザーの声に耳を傾ける

松原氏:運用を通して気づきもありました。クラフトビール製品との接着が良いコンテンツは反応が良い一方、接着が弱いコンテンツは反応が良くありませんでした。また、すでにお客様がUGCで楽しんでいることに沿った投稿はやはり反応が良かったです。

出口:ユーザーの声に耳を傾けることが重要、ということですよね。

松原氏:また、外部要因として、XやInstagramのアルゴリズム変化により、フォロワー外からの反応を集めないとリーチが伸びにくい、という点も大きな気づきでした。今後は、ヤッホーらしさをさらにブラッシュアップすることと、フォロー外にも刺さるようなニーズのあるコンテンツ作りをしていきたいと考えています。

らしさが伝わった投稿事例

松原氏:1つ目は、エスビー食品さんとのコラボキャンペーンです。スパイスカレーと「インドの青鬼」が合う、というUGCを拾い上げ、スパイスカレーを食べたい時は「インドの青鬼」を合わせたい、という想起を取りに行くためのキャンペーンとして企画しました。エスビーさんと一緒にインドの青鬼にあうカレーを開発する真剣さもあって反響を呼び、キャンペーン後にはそのカレーを再現する熱いUGCも生まれました。

出口:ユーザーの声から企画が生まれるのは面白いですね。

松原氏:2つ目は、Minecraftの制作です。弊社のスタッフが、内定した喜びでMinecraft内でヤッホーブルーイングの醸造所を再現したコンテンツです。これは会社のビール愛に溢れたスタッフがいる、という社風が伝わるコンテンツとして手応えを感じました。

出口:これはすごい、愛が伝わりますね。

松原氏:3つ目は、「昼休みにオフィスでサンマを焼く男」というコンテンツです。オフィスでサンマを焼くというインパクト、サンマと「インドの青鬼」のペアリング、そしてくだらないことに本気で取り組むスタッフの姿やモーメントに合わせた投稿などの要素が重なり、過去最大の伸びを見せました。

出口:オフィスでサンマはインパクトありますね。

松原氏:最後4つ目は、「極寒のビールづくり」です。長野県の冬の寒い現場で、ストーブでビールが凍らないようにするなど、寒い中でも懸命に働くスタッフの様子を映したコンテンツです。なかなか見られない光景で、好評でした。

出口:これらの事例を見ると、本当にこの1~2年でアカウントの印象が大きく変わりましたね。写真も綺麗になった上に、コンテンツとして作り込まれています。

松原氏:はい、表紙やテロップにもこだわり、フックになるかどうかを皆で検討しています。

差別化するにはらしさを本気で表現すること

松原氏:今日のお話をまとめると、まず弊社はSNSの目的を、好意を持った想起と明確にして、フォロワー数ではなく、想起に関する指標を重視しています。競合との差別化のために、企業文化やお客様に支持されている点を基にヤッホーらしさを定義し、それに沿った投稿企画を立てています。また、ヤッホーらしさを本気で表現するため、企画、撮影、編集を全てインハウスで行っている点が大きなポイントです。

出口:SNS運用において、好意を持った想起をどれだけ作れるかが大事であり、差別化の観点では自社のブランドらしさにこだわるのが重要だ、という点がよく分かりました。ありがとうございました。

質疑応答

Q1:SNS周りの運用は、専門チームでされているのでしょうか?

松原氏:専門チームではありますが、オウンドメディアの運営やイベント企画など、他の業務も兼任しています。SNS運用に割く時間は比較的多く、業務比率としてはSNSが7〜8割を占めている実感です。

Q2:他の業務と兼任している企業が多い中で、SNSに特化したチームを作る、あるいはリソースを増やすために、社内や経営層にどのように働きかけるのが良いでしょうか?

松原氏:正直、SNSからの直接的な売上貢献のデータは取れておらず、金額的な手応えとしてはあまり変わっていません。ただし弊社の熱量の高いファンは購買額が高いというデータがあり、SNSで熱量を高めることで間接的に売上には貢献できていると思います。SNSの貢献度の測定としてはエンゲージメント(&インプレッション)を測っています。
また、金額的な手ごたえは大きく変わっていないとお話ししましたが、ヤッホーらしさをうまく出せた事例では「飲みたい」「大好きです」「今日買って帰ります」などのコメントがついており、少なからず購入に寄与していると考えています。

Q4:Instagramのクリエイティブを大きく変えたことで、フォロワーの属性に変化はありましたか?

松原氏:フォロワー属性を完璧には把握できていないため、断言は難しいですが、クラフトビール市場はまだ小さく動きも緩やかですし、属性が大きく変わっているとは考えにくいです。ただ近年動画に力を入れたことでフォロワー外からのリーチが増え、既存フォロワーの属性に加え、今までいなかった新しいフォロワーも少しずつ増えてきていると思います。

出口:おそらく、属性自体は大きく変わらなくても、フォロワーが投稿に接触する時間が長くなり、エンゲージメントが高まっているのではないかと思います。それがアルゴリズムに良い影響を与え、フォロワー外へのリーチに繋がっている可能性がありますね。

Q5:ヤッホーブルーイングさんはファンマーケティングが非常に上手だと思いますが、今回のSNS施策はそれにどれくらい貢献していますか?売上への具体的な影響や手応えはありますか?

松原氏:ファンマーケティングへの貢献度は高いと考えています。特に既存ファンの熱量を高めるという点では、私たちのコンテンツが役に立っていると思います。売上への直接的な影響はデータで取れていないため、手応えとしては正直「変わっていない」というのが個人的な見解ですが、熱量の高いファンほど購買額が高いという弊社のデータもあるため、間接的には貢献している可能性はあります。

■グループディスカッション

「自社ブランドの好意向上にあたっての課題を深掘り!」
 SNSのエンゲージメント向上にあたっての現状課題は何ですか?

というディスカッションテーマで、グループワークを実施しました。
各テーブルの参加者同士、積極的に意見交換し盛り上がりました。

■懇親会

グループディスカッション終了後は、参加者同士が自由に交流できる懇親会を実施しました。

■参加者の声

以前ご参加経験のある方も多く、今回も大盛況でした。
「テーマがとてもおもしろく、学びになりました。ぜひ自社の施策にも活かしたいです。」
「交流会が非常に楽しく、また近しい部署の方ともっとお話ししてみたいです。」
「色んな他社の成功事例をもっと知っていきたいです。」
など、たくさんの熱い感想や次回への期待の声が寄せられました。

皆さまの期待に応えられるよう、これからもさらに楽しいイベントを企画していきます!

■総括

今回のイベントでは、「〇〇らしさ」や「好意を持ってもらう」をキーワードに掲げ、参加者の皆さまとともに、ブランドに対する好意=「好き」を生み出すために、SNS担当者が果たすべき役割を深く考える時間となりました。

弊社が提唱するSNS時代の新たな消費行動モデル「PERCARS(パーカーズ)」では、SNS運用がすべてのフェーズにおいて重要な役割を担うことを前提としつつ、キャンペーン施策やオフラインイベントとの掛け合わせによって、ファンの獲得・育成がより効果的に実現できることを解説しました。

具体的には、キャンペーン施策においては、ファンの熱量を高めることができるエンゲージメントポイント機能を備えた「SINIS for X Campain」を用いて、長期的なキャンペーンを実施します。これにより、アカウント全体のエンゲージメント向上、ユーザーの定期的な接触を促進し、新たなファンの獲得・育成につなげることができます。

また、オフラインイベントにおいては弊社の「ブランド没入型体験プロモーション」を活用することで、ファンを起点にしたクローズドなリアル空間で、ブランドの世界観を深く体感いただける機会を創出することが可能です。これにより、質の高いエンゲージメントと、SNS上でのUGC創出が期待できます。

日々のアカウント運用に加え、キャンペーンやイベント施策を戦略的に組み合わせることで、自社ブランドらしさの表現力がさらに高まり、SNS施策全体の効果を一層引き出すことが可能となります。

なお、弊社ではSNS運用に関する個別相談も随時受け付けております。ブランドらしさの言語化や投稿企画にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

■次回開催について

ご好評につき第13回の開催が決定しました。

・イベント名   :第13回SNS中の人交流会@目黒|BeReal.と考える「盛らない時代のSNS運用」
・開催日時    :2025年5月22日(木)18時~
・参加費     :無料
・会場      :テテマーチ株式会社
          東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル 7F フリースペース
・お申込みフォーム:https://tetemarche.co.jp/seminar/250522

■イベントに関するお問い合わせ先

イベントについてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
 〇担当:福島(ふくしま)
  連絡先:info@tetemarche.co.jp

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