【開催報告】 第11回 「SNS中の人交流会」を開催ー漢字検定協会に学ぶ、SNSのKPIと考え方と運用戦略ー
2025年3月27日(木)に企業のSNS担当者・通称「中の人」を対象に親交を深めるイベント「第11回 SNS中の人交流会」を開催しました。
■「SNS中の人交流会」とは
「SNS中の人交流会」とは、企業のSNS運用担当者が運用に関する知識を学び、運用担当者同士で親交を深められるオフラインイベントです。
11回目の開催である今回は、株式会社タカラトミー、株式会社BAKE、株式会社ヤッホーブルーイングなどの様々な業界のSNS運用担当者が30名参加しました。
〇開催概要
・イベント名 :第11回SNS中の人交流会@目黒|SNSのKPIの考え方と運用戦略
・開催日時 :2025年3月27日(木)18時~
・プログラム :オープニング
【セッション】漢検に聞く SNSのKPIの考え方と運用戦略
【参加型】グループディスカッション
交流会
・会場 :テテマーチ株式会社 7Fオフィス
■セッション内容
『漢検に聞く SNSのKPIの考え方と運用戦略』
・ゲスト

公益財団法人日本漢字能力検定協会
普及企画部 普及企画課 SNS・オウンドメディア担当
西村柚之介
「漢検、中の人」Xアカウント
1999年生まれ、神奈川県出身。
3歳から漢字に興味を持ち、2010年に当時最年少タイ記録で漢検1級に合格。大学卒業後、日本漢字能力検定協会に入職。現在はSNSやオウンドメディアの担当者として漢字・日本語の面白さを普及している。
・ホスト

テテマーチ株式会社
エバンジェリスト
出口潤
音楽エンタメ業界で広告営業として従事。その後、マーケティング支援会社にて営業、事業、マーケティング部門の責任者を歴任し、2022年8月にテテマーチへジョイン。
社長室 室長、マーケテイング部 部長を経て、2025年2月より現職。

公益財団法人日本漢字能力検定協会とは
『日本語・漢字を学ぶ楽しさを提供し、豊かな社会の実現に貢献します』という使命のもと、“すべての人の学びを支える”存在になることを目指しています。1975年の設立以来、「漢検」の実施運営を主な事業とし、「今年の漢字」をはじめとした啓発イベントの開催、京都市・祇園にて「漢字ミュージアム」の運営等を行っています。これからも日本語・漢字を学ぶ楽しさを発信し、皆様の“学びたい”を応援する存在であり続けます。
Xをどのように活用しているのか?
出口:これまで漢字に興味が薄かった層に漢字の面白さを知ってもらい、最終的には協会のコンテンツである漢字検定に繋げることが大目的とのことでしたが、意識している点をお伺いさせてください。
西村氏:SNS運用で最も意識しているのは、潜在的な顧客層、つまり漢字にあまり興味を持っていない層へのアプローチです。学生時代に漢検を受けた経験はあるものの、それ以降は意識していないという方が多いのではないかと思います。そうした方々に、改めて漢字の魅力に気づいてもらうためのきっかけ作り、機会提供が重要なので、アカウント名も「漢検」という硬いイメージではなく、「漢検、中の人」という親しみやすいイメージで、日常的な共感を呼ぶような投稿を心がけています。
出口: プロフィールにユーモアを交えたり、投稿内容も工夫を凝らしていらっしゃるとのことでしたが、どのような反響がありましたか?
西村氏: 例えば、プロフィールに「上司に監視されています」と記載することで、親近感を持っていただけるようです。投稿内容としては、漢字の成り立ちや漢字の意外な意味を紹介することで、「へぇ、そうなんだ!」という驚きや発見を提供することを意識しています。
また、私の個人的な漢字への愛情をストレートに表現することも、共感を呼ぶ要因になっているかもしれません。実際、ユーザーの方から「漢字って面白い!」といったコメントをいただけると、非常に励みになります。
コンテンツ事例と気づき
出口: 犬猫が嘔吐するという意味を持つ珍しい漢字「シン」*1を紹介したエピソードは非常に印象的でした。通常の漢字マニアだけでなく、犬猫好きの層にまで情報が届き、大きな反響があったとのことですが、この事例からどのような学びがありましたか?

西村氏: この事例や2024年上期に行った事例から学んだことは、一つの漢字だけを見るのではなく、その背景にある文化や文脈と結びつけることで、より多くの人に興味を持ってもらえる可能性があるということです。この漢字の場合、犬猫の飼い主にとっては日常的な行為である「嘔吐」と結びついたことで、共感が生まれ、拡散に繋がりました。興味関心の幅を広げることの重要性を改めて認識しました。

出口: 「今、あなたに送りたい漢字コンテスト」も、ターゲット層の拡大に大きく貢献した企画だと伺いました。「推し」というテーマ設定が、これまで漢検と接点のなかった層にも響いたのですね。

西村氏: 「推し」という普遍的なテーマ設定にしたことで、年齢や興味関心を問わず、多くの方に参加いただけました。自分の好きなアイドルやキャラクター、家族、ペットなど、対象は自由としたことで、幅広い層からの共感と参加を呼び起こせたのだと思います。
この企画を通じて、協会の個性を露出し、これまで振り向いてもらえなかった層にも興味を持ってもらえるという大きな気づきを得ました。また、目標としていたリポスト数も達成し、イベント自体の認知度向上にも繋がりました。

出口:これらの上期コンテンツから、下期は「掛け合わせ」企画を強化する方針になったのですね。
西村氏:下期のコラボレーションの例でこの交流会がなければ実現できなかったのが、「企業・グループde今年の漢字」です。「今年の漢字」30回目特別記念企画として、実際にこのSNS中の人交流会で知り合った企業さんにお声掛けして2024年の1年を一文字で表していただき、「今年の漢字」の発表がある12月12日に合わせてSNSで発表させていただきました。その後特設サイトを公開し、なぜこの漢字を選んだのか背景をお伝えする企画にしました。
出口:弊社もありがたいことに参加させていただき、企画を企てるの「企」を表現させていただきましたね。
西村氏:また、「今年の漢字」関連で裏情報局として「今年の漢字」のWEB応募で実際に届いた珍しい漢字や単独票や変換ミスなど、面白い一字を年末に紹介しました。その結果、運用史上最大の総インプレッション数が180万を超えました。実際今年の漢字は毎年12月に発表すると、そこで盛り上がりがもう収束していたのですが、時間差で紹介したことによって、発表後も継続して興味を持っていただくことができました。これまでXでもこういう情報欲しいという声があったのでようやく叶いました。
出口:他の「掛け合わせ」の事例はありますか?
西村氏:「掛け合わせ」事例はもう一つあります。私が漢字の次に趣味で時間を費やしたのがポケモンなんですが、ポケモンの漢字クイズも展開しました。これもやはりポケモン好きな人には刺さる企画になっています。インプレッションとしては、「今年の漢字」に比べると劣るのですが、Yahoo!ニュースやライブドアニュースなどに掲載いただくことが叶いました。
出口: ウェブメディアも取り組みのユニーク性に着目されてたんじゃないかなと思います。漢字とポケモンは普通紐づかないので、この意外な「掛け合わせ」のサプライズ性がすごく大事なのかなと思います。
KPIはどのように設定しているのか?
出口: 以前、KPIはインプレッション数、エンゲージメント数、フォロワー数だと伺いました。これらのKPI設定の根拠や、目標数値についてもう少し詳しく教えていただけますか?
西村氏: SNSは広報活動の一環と位置づけられており、漢字を“学びたい”というきっかけづくりのために、認知拡大、興味喚起、行動促進の各段階で貢献する必要があります。KPIであるインプレッション数やエンゲージメント数、フォロワー数は、過去のデータやSNSの特性を考慮し、各段階での目標達成に必要な数値を逆算して設定しています。例えば、フォロワー数の目標は、より多くの方に情報を届け、興味を持ってもらうための規模を示す指標となります。また、エンゲージメント数は、投稿内容への興味関心の高さを測る上で重要です。

出口: KGIに関して「協会全体の目標から逆算して、SNSが担うべき役割を数値化した」との事ですが、これは、SNS運用が単独で動いているのではなく、協会全体の戦略と連動していることを示す重要なポイントですね。
西村氏: SNSはあくまで広報活動全体の一部であり、他の広報手段との連携も重要だと考えています。例えば、オウンドメディアでより深い情報を提供したり、イベントで実際に触れ合う機会を設けたりすることで、SNSで興味を持った層をさらにエンゲージメントしていくことを目指しています。
出口: KPI達成状況はいかがですか?
西村氏: KPIは達成していますが、KGIはまだ目標に届いていません。SNSだけでなく、遷移先のコンテンツの魅力向上も課題と認識しています。フォロワー数は順調に増加しており、緊急企画も成功しました。
運用する中で注意していることは?
西村氏:ユニークな切り口で興味を引くことは非常に重要ですが、漢字検定という信頼性が求められる事業を行っている以上、誤った情報の発信は絶対に避けなければなりません。そのため、投稿前には必ず複数人で内容を確認するようにしています。それでも、漢字は奥深く、時には認識の違いや誤りが発生することもあります。そのような際には、フォロワーの方からのご指摘を真摯に受け止め、迅速に修正するように心がけています。
今後の展望について
西村氏:より積極的に他の企業や団体とのコラボレーションを推進していきたいと考えています。特に、共通点のある企業との連携を通じて、新たな価値創造や情報発信に繋げていきたいです。
以前のSNS中の人交流会で知り合った企業様とのコラボレーション企画も既に実現しており、今後もこのような機会を増やしていきたいです。また、ポケモンとのコラボレーションのように、意外な組み合わせから生まれるシナジーにも期待しています。
出口: 企業とのコラボレーションでは、具体的な展開イメージはありますか?
西村氏: まだ具体的なアイデアは模索中ですが、例えば、各企業の特色を漢字で表現する企画や、共通のターゲット層に向けた共同キャンペーンなどが考えられます。業種や業態にとらわれず、漢字という共通の切り口で、様々な企業と連携していければ面白いと考えています。
出口: 今後の目標について改めてお聞かせいただけますでしょうか?以前、フォロワー数を5,000人まで増やしたいという目標を掲げていらっしゃいましたね。
西村氏:おかげさまで、3月には緊急企画を実施したところ、フォロワー数が目標の5,000人を突破することができました。今後は、単にフォロワー数を増やすだけでなく、エンゲージメントの高いコミュニティを形成していくことを目指しています。そして、SNSでの活動を通じて、より多くの方に漢字の面白さ、奥深さを知っていただき、漢字学習への興味関心を高めていきたいと考えています。
出口: 本日は、SNS運用におけるKPI設定、運用戦略、そして西村さんの熱意溢れるお話、誠にありがとうございました。漢検協会様のユニークなSNS戦略は、多くの企業にとって大変参考になるものであったと思います。
西村氏: こちらこそ、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。今後も、漢字の魅力を発信していけるよう努めてまいりますので、ぜひ「漢検、中の人」アカウントをフォローしていただけると嬉しいです。
質疑応答
Q1: KPI設定について、投稿数やインプレッション数などの目標値はどのように設定されたのでしょうか?
西村氏:広報活動の目標に対して、SNSの貢献度を割り出します。SNSは広報活動の一部と位置づけており、その中でXがどの程度の数値目標を達成すべきかを算出しています。
Q2: 目標設定の軸として、売上と認知のどちらを重視されていますか?また、SNSからの実際の効果測定はどのようにされていますか?
西村氏: 最終的な目標は協会コンテンツを通じて学ぶ方々を増やすこと、つまり売上になりますが、SNS、特にXにおいては認知向上を主な役割としています。各媒体がどの程度貢献できたかは測定しており、Xの目標も認知に関する指標です。Xから他の媒体、例えばオウンドメディアやホームページへの遷移を促し、そこでの効果を高めることを重視しています。
Q3 : SNSの運用体制についてお伺いします。SNSを専任で担当されているのでしょうか、それとも他の業務と並行して行っているのでしょうか?
西村氏: 現在は、SNSだけでなく、オウンドメディアの運営やイベントの企画・運営など、複数の業務を兼任しています。しかし、SNS運用に割く時間は比較的多く、投稿ネタの企画や作成に多くの時間を費やしています。他の業務で得た知識や情報をSNSに活かしたり、SNSでの反響を他の業務にフィードバックしたりと、相互に連携を取りながら業務を進めています。
まとめ
【KGI・KPIの考え方】
・アカウントの目的・役割を明確にする
→ターゲットに「漢字って面白い」と感じてもらい、協会コンテンツへ運ぶ
・その目的が達成しているのか分かるように、KGI・KPIを設定する
→毎月進捗の振り返りを行い、反応が良いものは継続し、悪いものはすぐにやめた
【運用戦略】
・拡散力のある層(漢字好き)の力を借りて、アカウントを大きくした
・漢字と他ジャンルの掛け合わせを行って、漢字ネタをより外部へ押し出した
・協会の個性を露出して、Xユーザーへ興味喚起を図った
■後日テテマーチの漢字も作成いただきました!

■グループディスカッション
・みなさんはどんなKPI設計をしていますか?
・SNSの投資対効果・費用対効果を何と説明していますか?
という問いをディスカッションテーマに、グループワークを実施しました。
■懇親会
グループディスカッション終了後は、参加者同士が自由に交流できる懇親会を実施しました。

■参加者の声
前回に引き続きご参加いただいた方も多く、今回も大盛況でした。
「定期的にこのイベントに参加していきたい!」
「沢山相談したいことがあり話したりなかった!」
「ぜひ参加企業とコラボしていきたい」
など、たくさんの熱い感想や次回への期待の声が寄せられました。
皆さまの期待に応えられるよう、これからもさらに楽しいイベントを企画していきます!
■次回開催について
ご好評につき第12回の開催が決定しました。
・イベント名 :第12回SNS中の人交流会@目黒|ヤッホーブルーイングに聞くSNSのアカウント設計・投稿企画の考え方
・開催日時 :2025年4月24日(木)18時~
・参加費 :無料
・会場 :テテマーチ株式会社
東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル 7F フリースペース
・お申込みフォーム :https://tetemarche.co.jp/seminar/250424
■イベントに関するお問い合わせ先
イベントについてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
〇担当:福島(ふくしま)
連絡先:info@tetemarche.co.jp