【開催報告】「第15回 SNS中の人交流会」を開催ーTikTokShopの展望と中の人の役割ー
22025年7月24日(木)に企業のSNS担当者・通称「中の人」を対象に親交を深めるイベント「第15回 SNS中の人交流会」を開催しました。
「SNS中の人交流会」とは
「SNS中の人交流会」とは、企業のSNS運用担当者が運用に関する知識を学び、運用担当者同士で親交を深められるオフラインイベントです。
14回目の開催である今回は、SBI FXトレード株式会社、株式会社サンゲツ、株式会社大創産業、株式会社TVer、株式会社富士薬品、株式会社吉野家、株式会社リクルートなど様々な業界のSNS運用担当者が40名程参加しました。
・イベント名 :第15回SNS中の人交流会@目黒|TikTok Shopの展望と中の人の役割
・開催日時 :2025年7月24日(木)18時~
・プログラム :オープニング
トークセッション
【参加型】グループディスカッション
交流会
・会場 :テテマーチ株式会社 7Fオフィス
■セッション内容
TikTok Shopの展望と中の人の役割
・ゲスト

Firework Japan株式会社
Director, Client Leadership & Alliance & Business Development
水野友里絵
新卒で広告代理店に入社しメディア営業・運用を経験後、ライフスタイルメディア「TRILL」で広告営FFireworkのアライアンス・事業開発責任者として、日本市場における戦略的パートナーシップ、システム・データ連携と、お客様の顧客体験構築支援を推進。デジタル広告のプランナーからキャリアをスタートし、エンタープライズ営業、広告運用、データソリューションのPM、事業開発を経験。2024年よりFireworkに参画し、アライアンス事業を推進しつつ、事業開発を通じて培った知識を元に、お客様の支援を手掛ける。
・スピーカー

テテマーチ株式会社
サキダチラボ 所長
上市愛
1994年生まれ。新卒で株式会社カカクコムに入社し、アクセス解析業務やWebディレクターとして従事。その後、PdMとしてノイン株式会社、株式会社MIXIを経て、2023年10月にテテマーチ株式会社に入社。現在は「サキダチラボ」の所長として、SNSの実利貢献調査や消費行動調査、サービス開発を行う。
・ホスト

テテマーチ株式会社
エヴァンジェリスト
出口 潤
音楽エンタメ業界で広告営業として従事。その後、マーケティング支援会社にて営業、事業、マーケティング部門の責任者を歴任し、2022年8月にテテマーチへジョイン。社長室 室長、マーケティング部 部長を経て、2025年2月より現職。

TikTok Shopによるユーザーの消費行動
ユーザーはよりシームレスな購買体験ができるようになるものの、TikTok Shopはモールとして活用し、出す商品は選ぶべき
出口:まずTikTokの概要からお話させていただきますね。利用者の平均年齢は36歳とされますが、10代・20代が約半数を占めています。エンタメ領域では購買行動がリードされるデータがあり、TikTokでは興味を持った商品に直接接触し、衝動的に購入に至るケースが多いと指摘されました。
2024年のZ世代ヒットトレンドランキングでは、トップ5を含む半数近くがTikTokから流行したと言われており、TikTokが世の中のトレンド形成に大きな影響力を持つことが強調されています。TikTok Shopは、ショート動画やライブ配信から直接購入画面へ進み決済まで完結するため、簡単なステップで購買を促すことが可能になります。
上市:TikTok Shopの日本上陸に関して、各社が「日本の購買体験を変える」と期待する一方で、私自身としては懐疑的な部分もありました。実際に企業の担当者176名への事前調査(TikTok Shopの認知・導⼊意向調査レポート)では、TikTok Shopが提供する新しい販路や購買体験に期待が寄せられる一方で、主に以下の4つの懸念がありました。
• 日本でライブコマースが定着していないこと。
• SNSで見た商品をすぐに購入する行動が起こるか疑問であること。
• トラブル時の対応(カスタマーサポートや消費者とのトラブル窓口)への不安。
• 高額商品との相性や、日本独自の決済手段の安全性への疑問
実際に私自身もTikTokShopで購入してみたんですけど、購入後は、FAQやチャットボットで疑問を解消できる上、ライブエージェントと会話もできるんですよ。配送状況もアプリ内でプッシュ通知と共に詳細に確認でき、高い安心感が提供されていました。
出口:懸念を持ちつつも、自身の体験から具体的な安心材料を見つけたんですね。
上市:また、驚いたのは決済手段の多様さ(クレジット、PayPay、コンビニ払い)ですね。若年層に多いコンビニ払いも初期段階から利用可能で、購入のハードルを下げている点が「うまい」戦略だと感じました。
一方で日本市場におけるTikTok Shopの消費行動の変化には、比較検討文化の壁、セラーの品質・安全性の壁、利便性の壁、広告疲れの壁など、乗り越えるべき課題があるかと考えてます。
それらを踏まえてTikTok Shopは、楽天やAmazonのような「一つのモール」として活用し、商材を選ぶ戦略が重要になるのではないかと思います。
出口:楽天やAmazonのような「一つのモール」として活用する観点は面白いですね。水野さんは米国や中国の市場との比較で、何か興味深い話はありましたか?
水野氏:はい、米国ではTikTok Shopが2023年に大きく広がったものの、2024年に入って低価格帯の衝動買いに特化する傾向があり、高額商品や家電ではワークしきっていないため、ブランド側がROIを重視し始め下火になりつつある傾向にあります。米国版TikTok ShopのUIはTemu、 SHEIN、 AliExpressのような低価格帯ECサイトに近い印象を受けます。
一方で、中国ではTikTok Shopが盛り上がっており、これは中国企業が自社ECサイトをあまり持たず、モール主体で売上を伸ばす傾向が強いためかと考えます。
また、インフルエンサーの活用も上手ですね。
日本市場は自社ECサイトを重視するブランドが多いことから、上市さんの考えと同様にTikTok Shopはモールとして活用し、出す商品は選んでやってみることが良いかと思います。
企業側のマーケティング活動はどう変化するのか
TikTokと自社のECサイトを組み合わせた『掛け算』の戦略が重要
出口:まず日本におけるライブコマースの変遷を知った上で議論していきたいのですが、水野さんご説明お願いできますか?
水野氏:はい。実は日本のライブコマースは過去2回のブームがありましたがいずれも定着しなかったんです。
理由は大きく3つありまして、1つ目は「モールがライブコマース基盤を担うも、セルフサービス型で企業側に知見がなく活用されなかったこと」、2つ目は「ライブ配信システム、データトラッキングなどのインフラも不足していたこと」、3つ目は「インフルエンサーに依存してしまうことによる「コスト高」と「広告臭」かと思います。
そこからコロナ禍により、再びライブコマースを実施する企業が増加します。企業がなんとかしてECで売上をたてなければならなくなったため、2回目の波がきました。
インフルエンサーに依存していたライブコマースの時代と比べて、現在はブランド自身が積極的にライブコマースを行うケースが増えてきています。
結論としては、企業側のマーケティング活動としてはTikTokと自社サイトのどちらでもライブコマースをやってみると良いかと思います。
スライドに記載されている通り、どちらにもメリットがあり、どちらにもできない部分があるんですよね。
それこそTikTok Shopのメリットは、クリエイターの力を借りた拡散力や瞬間的な売上増加が期待できる点ですが、外部プラットフォームゆえにコントロールが難しく、データ取得やアルゴリズムの変化に対応しにくいですよね。
アルゴリズムもブラックボックスで変わってしまうので、どういう施策をしたらどうやって露出が増えるんだろう、というところがずっと試し続けても、同じTipsが半年後には変わってしまうことがあって、なかなかコントロールできないっていうのはあると思います。ただやっぱり瞬間風則的な売上はUSや中国でもあるので、そういったところはぜひ活用するべきだと思います。
出口:なるほど、自社ECサイトでの動画活用のメリットはなんですか?
水野氏:自社ECサイトで動画やライブコマースを行うメリットとしては、コントロールが可能であり、ユーザーデータの取得・管理、マーケティング活動への活用、アーカイブ動画の見せ方などが自由に行えるところですね。
実際に米国では、TikTokでリーチを獲得しつつ、高額商品は自社ECサイトへ誘導する戦略がとられてまして、日本でも同様にTikTokの強みを活かしつつ、ブランドの信頼性やデータを重視するハイブリッドな運用が求めらるんじゃないかなと思います。
上市:企業側のマーケティング活動は、TikTok Shopのような外部プラットフォームと自社のECサイトを組み合わせた『掛け算』の戦略が重要、ということですね。自社サイトでコントロール可能なリッチな購買体験や顧客データ管理を行い、継続的な基盤を築きながら、TikTok Shopで瞬間的な売上やリーチを狙うことで、相乗効果を生み出すことができるという考えですね。
今後の中の人はどういったスキル・役割が求められるのか
コンテンツとコマースを掛け合わせたハイブリッド型の発信、横断的なディレクション能力が求められる
出口:このテーマも今後のキャリアを考える上で非常に興味深い内容ですよね。
TikTokにおけるコンテンツマーケティングでは、認知・集客のためのコンテンツと、商品理解・販売促進のためのコマース要素を組み合わせた「ハイブリッド型」の発信が求められます。
SNS担当者には、従来のエンゲージメントやコミュニケーション中心の活動から、売上が求められるようになるんじゃないかと思います。
これは単なるSNS担当者やEC担当者ではなく「唯一無二の新しい職業」が生まれる可能性があり、キャリアを広げるチャンスにもなるんじゃないかなと。
ユーザーと日頃から直接接しているSNS担当者の強みを活かし、購買へと繋げることで、これまで難しかったSNSの売上貢献を証明できますよね。
水野氏:TikTok Shopがモールとしての機能を持つため、SNS担当者がこれを運用するのは難易度が高い可能性があるとは思うのですが、TikTok ShopがSNS運営から始まった経緯を考えると、SNS担当者が旗振り役となり、EC部門など他部署と連携して売上目標を追うべきなんじゃないかと思います。
まずはインフルエンサーやクリエイターを活用したアフィリエイトがスタートになるとは思うのですが、ブランドのメッセージを正しく伝えるためには、ブランドのマーケターや店頭スタッフが演者として直接発信する能力も今後求められてくるのではないかなと。実際にFireworkが支援している企業では、店頭スタッフが演者としてライブ配信をしているんです。
具体的にはライブ運営能力なども身につけるべきスキルだと思います。
SNSとEC、両方の運用知識を横断的に理解し、ディレクションできるスキルが求められると考えています。
ユーザーと直接接しているSNS担当者は、その経験からユーザーの行動心理や深い顧客理解を持っており、これが強みとなると思います。
Fireworkが支援している企業の中には、新卒の社員がライブコマース部門を立ち上げて本社マーケティングで活躍するなど、新しい役割や部署が生まれています。
上市:インフルエンサーやクリエイターを活用しつつ、自社アカウントも着実に育てていく必要がありますよね。自社アカウントがないとアフィリエイトだけでは天井が来るんじゃないかなと。
TikTokのアルゴリズムは日々変化しており、今が勝負どころであるため、まずアカウントの開設から始めるべきですよね。
TikTok Shopは楽天やAmazonと同じように「モール」であると認識し、商品を登録してショップを開設することが第一歩です。
実際に専門家の予測とは異なり、TikTok Shopではショート動画経由よりもライブコマース経由での購入が多いという初期傾向が見られるため、配信者としての戦略が重要となると思います。
出口:SNS担当者は視野を広げ、EC担当者と他部署との連携を模索することで、より大きな成果に繋がる可能性がありますよね。
■グループディスカッション
「販促力を高めたコンテンツを作るために、現在中の人として足りないスキル・伸ばしたいスキルはどこか」というディスカッションテーマで、グループワークを実施しました。
各テーブルの参加者同士、積極的に意見交換し盛り上がりました。
■懇親会
グループディスカッション終了後は、参加者同士が自由に交流できる懇親会を実施しました。


■参加者の声
以前ご参加経験のある方も多く、今回も大盛況でした。
「参加者のみなさんが熱量高く運用に向き合われていたので刺激になりました。」
「各企業様の課題を話せる時間があるととても参考になります。」
「今回をきっかけに色んな企業と会話ができコラボ企画などができそうです!」
など、たくさんの熱い感想や次回への期待の声が寄せられました。
皆さまの期待に応えられるよう、これからもさらに楽しいイベントを企画していきます!
■総括
今回のテーマについて、中の人として商材の理解やアカウントの方針、プラットフォームの特性の理解に加え、コマース・動画への知識やスキル、SNS運用にとどまらず売り上げ貢献まで加味した横断的にディレクションする力が必要であると考えています。
TikTokにおいて、「集客・認知拡大」と「商品理解・販売販促」掛け合わせたハイブリッド型の運用が求められます
そこで、再度KPIの見直し・確認、横断的なディレクションをしていくためにも他部署との連携が必要です。
SNS運用では、KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を明確に設定し、PDCAサイクルを継続的に回すことが不可欠です。テテマーチでは「TikTok Shopコマース総合支援サービス」を提供しており、TikTok Shopの開設・戦略設計から運用伴走・コンテンツ制作、分析・改善まで、総合的にご支援いたします。
また感覚に頼らない運用を実現するため、TikTok版の分析ツール「SINIS for TikTok」をリリースしております。
これにより、アカウント、コンテンツ、フォロワーの分析をダッシュボードで可視化でき、データに基づいた改善が可能になります。
分析ツールと運用戦略はセットで取り組むことがおすすめです。
テテマーチではTikTokに限らず、SNS戦略のコンサルティング、分析ツールなど、様々な支援を提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。
■次回開催について
ご好評につき第15回の開催が決定しました。
| イベント名 | 第16回SNS中の人交流会@目黒|アットコスメに聞く「TikTokの接客体験とは?」 |
| 開催日時 | 2025年8月28日(木)18時~ |
| 参加費 | 無料 |
| 会場 | テテマーチ株式会社 東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル 7F フリースペース |
| お申込みフォーム | https://tetemarche.co.jp/seminar/250828 |
■イベントに関するお問い合わせ先
イベントについてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
〇担当:福島(ふくしま)
連絡先:info@tetemarche.co.jp